2023年に視聴した映画短評(その2)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女 3.0
タイトルからするとドクターXのようなやり手が次々と案件をクリアしていく話を想像するだろうが、さにあらず。ただ、主人公のウナを演じたパク・ソダムはスタイルが良くて恰好良く、その点では大門未知子役の米倉涼子とイメージが重なる

勿論、迫力あるカー・チェイスのシーンはあるが、本作はどちらかと言えば人情物。ただ、カー・チェイス以外のアクションシーンも多く、韓国ノワール的なのにコメディ色もある等、韓国映画のごった煮って感じ

脚本は如何にも韓国らしい話ではあるが、要素を詰めすぎた感は否めない。追われている立場なのに緊張感のない行動をしたり、マッチポンプ感もある。もっと緊張感のある、ガチの仕事人って感じの作品にして欲しかった

厳し目の評価だが、これが邦画だったら多分目も当てられない作品になってたであろう。期待値が高い分、どうしても辛口になる。普段から韓国作品をよく見る人にとっては既視感の塊みたいな作品に思えるだろうが、あまり見ない人にとっては楽しめる作品だと思う

 

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター 1.0
2009年に公開されたアバターの続編。某映画評論家が(外国では軒並み1位なのに)日本では1位じゃないのはおかしいと発狂する程の作品らしいが、日本の消費者の目は正しかった。まあ、バスケも戸締まりも鬼狩りも見てないが

映像は素晴らしいの一言。流石、ディズニー。看板映画にはきちんと金と時間をかけるってことだろう。高給取りばかりなのに看板ドラマに安っぽいCGを使って失笑を買うどこぞの放送ヤクザは爪の垢を煎じて飲んだ方がいいんじゃないの。ただ、キャラデザはもっと見分けがつきやすくして欲しかった

これでストーリーが並以上なら高評価も納得だが、残念ながら三流以下。前作に比べて内容的にはスッカスカにも関わらず上映時間は長く、ダラダラ感は否めない。前半2時間を1時間に短縮すればまだ良かったかも

更に内容が薄いのに加えて寒い。欧米人の典型的な価値観って感じ。異国の文化を尊重する気がなく、自分たちの価値観を押し付けるだけ。鯨の話はそういう浅薄さが滲み出ていて、見ていて非常に不快だった

今後、「5」まで制作が決まっているが、まず見ることはないだろう。映像さえ良ければストーリーは二の次な人にはいいかもしれないが、やっぱりストーリーは重要だと思う人は見ない方がいいだろう

P.S. 前作未視聴でも見れないことはないが、前作のあらすじや用語については予習しておいた方がいい

 

・グッドバイ、バッドマガジンズ 2.0
男性向け成人雑誌、平たく言えばエロ本編集部の話。群像劇だが、主に新人編集者の森詩織目線で話が進んでいく

エロ本を題材にしたのは面白いと思うが、本作で褒められるのはこれ位だろう。題材はエロ本だが、エロシーンは皆無。編集部が主体なのでそれでも話は進められるし、エロに抵抗がある人にも受け入れやすい作品ではあるが、個人的には裏目に出たと思う

本作には編集部以外の話も出てくるが、これを蛇足と思うか否かで本作の評価が変わるだろう。「人はなぜセックスをするのか」でこういう結論を出しておきながら、エロシーン皆無は説得力0だと思うけどねえ…

素直にエロ本編集部に絞って話を展開すればよかったと思う。それと本作にも笑えるシーンはあるが、もっとコメディ仕立てで更に内幕に迫る内容に出来なかったかね。出版業界は闇が深そうだし。まあ、そうしたくなかったから、こういう作品になったのかも知れないが

拘りを強調している所はジャンルが違うが「ハケンアニメ!」に通じるものがある。「ハケンアニメ!」が刺さった人には本作も刺さるかも。話題になっていたので期待していたが、個人的には残念な作品だった

 

・バンバン! 3.7
2010年のアメリカ映画「ナイト&デイ」のリメイク。本作も2014年の作品で何故今頃公開って思うが、原作の興行成績が振るわなかったのと「RRR」のヒットを受けてこれもイケるってことなのだろう

原作は109分なのに対して、本作は156分。長くなっている主な要因は二人が出会ってストーリーが進むまでに時間がかかるから。脚本的にも引っ張っているが、インド映画と言えば唐突に始まる歌と踊り。最近はここまで前面に押し出す作品は少ない印象だが、原作との違いを明確化する目的もあるか

ストーリーは「ナイト&デイ」の要素を受け継いでいるだけで違う所が多い。原作に比べてラブコメ色が強く、ストーリーも練られていると思う。ただ、そこまで緻密ではないし、ラージャマウリの作品と比較するとアッサリし過ぎに思える

リティク・ローシャン演じるラージヴィールは体も凄くてカッコいい。ハルリーン役のカトリーナ・カイフは無茶苦茶美人とは思わないが愛嬌があって本作のラブコメテイストに一役買っている。日本版を作るなら、鈴木亮平綾瀬はるかってところかねえ

序盤、冗長なのは事実なので、それさえ乗り越えられればインドの実写版シティーハンターな感じで楽しめるだろう。原作も見たが、原作よりは遥かに面白いし良いリメイク作品だと思う

 

・少女は卒業しない 2.8
朝井リョウの連作短編小説(筆者は未読)を映画化した作品。正直、あまり見ないジャンル(群像劇&恋愛モノ)だが、監督が「カランコエの花」の中川駿、河合優実が主演なので鑑賞した

朝井リョウの作品はごくありふれた青春って感じで、本作もキラキラした青春や恋愛を描いたものではない。演技も素って感じで、それを監督がカメラワーク等を工夫して印象付けている。特に、まなみの息遣いはセリフはなくても訴えかけるものがある

ただ、皆、平等なのはどうなのか。原作は連作短編集で、その内4つのエピソードを抜き出したのだと思うが、最後まで交互に話が進行していくのはどうなのかね。それぞれのエピソードを大切にしているのだろうが、もっと強弱をつけるべきだったと思う

構成からしてまなみの話をメインにすべきだっただろう。まなみの話はカットされすぎて、原作未読だと経緯が良く分からないし。それと最後は陳腐過ぎる。ここまで表現に気を遣ってきて、これはねえ

キャストだが、河合優実は主演とは言え出番は他の3人とそれほど変わらないので、彼女のファンにとっては不満かも。まなみ以外の中心人物役の小野莉奈、小宮山莉渚、中井友望も悪くないが、惜しいのが森崎役の佐藤緋美。もっと歌が上手ければねえ。まあ、普通なのは本作の世界観には合っているけど

でも、MVPは藤原季節かな。本作は清い青春映画だが、実は生徒を食べちゃってそうな怪しげな雰囲気が何とも言えず良い。こういう構成だと、主役級よりインパクトのある脇役が目立ちがち

原作の映画化としては上手くやった方だとは思うが、本作を面白いと思うかは別問題。朝井リョウのファンや青春群像劇をよく見る人には刺さるかも知れないが、そうでない人を唸らせるまでの作品ではないと思う