2022年に視聴した映画短評(その8)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・マイスモールランド 3.5
クルド人難民問題を扱った作品。本作は飽くまでフィクションであるが、そもそも難民認定自体が極めて曖昧なので突然梯子を外される展開にはリアリティがある。今の日本の役所に「シンドラーのリスト」は期待できない

意識高い系作品と思われるだろうが、そうでもないと思う。ベースとなっているのはサーリャと聡太の淡い恋物語で、難民問題だけでなく普通の高校生が直面するような話もあるし、中々日本に馴染もうとしないクルド人達への批判もあったりするので日本政府がけしからんとイキるような内容ではない

全体的に丁寧な作りで女性監督らしいと思うが、ラストも何となく希望を持たせる感じでシビアさが足りない気も。本作は飽くまで問題提起であり特定の人達を詰るような作品にしたくないのは理解できるが、モヤっとした感じなのも確か

キャストについては聡太役の奥平大兼も悪くないが、サーリャ役の嵐莉菜の存在感が光った。5カ国にルーツを持つと言うことで、本作で扱われているような内容を実感したこともあるのだろう。それと池脇千鶴を久々に見た。中山美穂に比べるとだいぶ若く見える

映画自体の出来は3.0点位と思うが、このタイミングでの公開を考慮してこの点数で。そもそもウクライナ人を受け入れるべきなのか。ウクライナ人にも本作のような展開はあり得るがウクライナ人は特別なのか?それとも他の外国人と同じなのか。なあなあで彼らを振り回すようなことはあってはならない

 

・死刑にいたる病 3.7
阿部サダヲがシリアスな役を務めるのはどうかと思っていたが、冷静さの中に狂気を内包しているシリアルキラー役を抑えた演技で好演していたと思う。岡田健史の少しずつ何かに取り憑かれていく感じも良かったし、岩田剛典も今まで演じてきた役からすると意外な感じだった

個人的には宮崎優を推したい。目立たない感じだがラストはこうなるとはね。出来ればすっぽんぽんでおっぱじめながらあの台詞を吐くとよりヤバさが際立ったと思うが、流石にそこまでは無理か。華奢で童顔だけど胸は大きい吉岡里帆タイプ。今後の活躍に期待したいが、女性には好かれないかも

ストーリーは及第点を付けられる出来。癖のある人物が多いが、その「癖」が伏線になっている。雅也の懸命の調査で伏線回収が進み、事実が少しずつ明らかになっていく感じはサスペンスとして良く出来ている

ただ、榛村vs雅也の心理戦としてはイマイチ。榛村が雅也に単に助けを求めている訳じゃなく狙いがあるのは明らか。雅也もそれに気づくが、気づいて次に会う時にはもう終わりだしねえ

後、中途半端にリアルを持ち出すのもどうかと。確かに余りにリアリティに欠けるのも何だが、シリアルキラー自体リアリティに欠ける訳で。Fラン大学の悲哀とかそういうエピソードって必要かって思ってしまう

ラストも賛否分かれるだろうし、グロシーンは当然のようにあるので人を選ぶのは確かだろう。十分面白いんだけど、4点以上付けるには足りないって感じの作品

P.S. エンドロールの阿曽山大噴火に笑った。裁判ウォッチャーとして知られる大川興業の芸人だが、裁判傍聴席にいたんだねえ。ただ、本作は小ネタで笑えるような作品じゃないからなあ

 

2022年に視聴した映画短評(その7)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・女子高生に殺されたい 3.7
原作は「帝一の國」等で知られる古屋兎丸の同名コミック、監督は最近「愛なのに」を観て良かったと思った城定秀夫なので期待が大きかったが十分満足。原作未読なので原作がどうかは知らないが、本作はサスペンスと言うよりはミステリーだと思う

東山がオートアサシノフィリアを患ったきっかけについては映画オリジナル要素らしいが、ストーリー上あった方がいいと思うし、このエピソードが伏線になっているので良い改変だと思う。ただ、…

本作の構成は完全にミステリー。東山の妄想が確実に実現に迫っている一方、どうやって殺されるのかが分からない。シナリオが少しずつ明らかになり"ヒロイン"候補が絞られても、信頼できない語り手を用いてミスリードを誘い誰か"ヒロイン"か引っ張る脚本

ストーリーが進むのは大島優子が演じるカウンセラー深川五月が赴任してきてから。ストーリー上の役回りは探偵で、深川探偵の活躍で事実が明らかになっていく。果たして東山の凶行を止めることはできるのか…

弱いと思う点は人物の掘り下げ。映画なので尺の都合でしょうがないとは思うが、あおい(河合優実)は原作ではアスペルガー症候群らしいが本作では言及無し。良く分からない超能力設定はストーリー上意味あるのって思ってしまう。深川が元カレとは言え東山に拘る理由も弱いしね

最大の問題点は東山が何故女子高生に拘るかが良く分からないこと。大人と子供の間なのがいい的なのはあったと思うが、だったら深川は元カノでSEXする仲だったのは何なのかって感じ

次にドロドロ感が足りない。病んでいる人物が多い割に爽やかなんだよなあ。ミステリーとしてはストーリーに入れるし多分それが狙いなんだろうが、サスペンスとしてはかなり物足りない

それとミステリーとしては良く出来ていると思うが、深川に喋らせすぎ。もう少しストーリーの中で分かるようにならなかったかなと思う

最後にオチは微妙。このオチだったらもっと手前で切っても良かったと思う

色々書いてきたが、なんだかんだで最近のミステリー作品の中ではかなり面白いと思う。ただ、サスペンス作品としては弱い所があるのでその点をどう捉えるかだろう

 

・アンビュランス 2.0
良くも悪くもマイケル・ベイ作品って感じ。最近の映像技術の進歩は目覚ましく迫力あるアクションシーンが多いが、本作のは一歩上を行くクオリティ。ドローンを駆使してと思われる撮影は距離が近くて迫力が桁違いだ

この映像美ならストーリーが並レベルでも傑作なのだが、こちらもマイケル・ベイクオリティ。内容がないのは勿論のこと、設定に意味がない、ツッコミ所満載、マッチポンプ、無駄に長い、オチが寒い、…

本作は2005年のデンマーク映画「25ミニッツ」のリメイクらしいが、原作は77分。本作もせめて100分以内に収めていれば破綻も少なくなって良かったと思うのだが

マイケル・ベイのファン、映像さえ良ければストーリーには目を瞑れる人にならお勧めできるが、そうでないなら他の作品にした方がいい

 

・バブル 0.5
本作を一言で言えば"バブル崩壊"。流石のネトフリクオリティ、船頭多くして船山に上るを体現している。新海誠っぽい映像、ボーイミーツガール、(若者受けする)Xスポーツっぽい競技、人魚姫等幾つかの要素を雑に繋いだだけなのでストーリーに核が無く全く印象に残らない

新海誠を意識しているであろう映像は美しいしパルクールのシーンもそれなりの迫力でクールではあるが、今時映像が美しい作品は多いしストーリー上パルクールが重要と思えないので対決に一喜一憂している登場人物たちをどこか冷めた目で見てしまう

それに世界観が不明。世界観を示すにはシナリオだけでなく映像も重要だと思うが、「天気の子」みたいに明るい世界ではないものの「甲鉄城のカバネリ」のようなポストアポカリプスの世界という訳でもないし中途半端

キャラデザは確かに今風ではないと思うが個人的には気にならない。ただ、音楽とXスポーツ系で少し古いキャラデザだと「交響詩篇エウレカセブン」かよって思ってしまうが

演技に関しては全体的に抑えた演技になっていて似非声優達の演技の拙さが露呈しないようにしたつもりだろうが、それでも下手なものは下手。ヒビキ役の志尊淳とウタ役のりりあ。は滑舌が悪くて台詞が聞き取りにくい。特にウタはキャラに声が合っていないので余計に下手に感じられる

ストーリーに関しては寄せ集めで筋が通っていないのは既に述べたが、肝心な所をナレーションで済ますのも相当酷い。このような世界になった背景もそうだが、人魚姫の音読には苦笑。人魚姫をモチーフにしていることは大半の人が気付くと思うので仄めかすだけで十分だと思うが

著名人を集めて、著名な作品の要素を集めて、パンダ声優を使えば成功するんじゃね?と言う清々しい程志の低い作品。その結果、正に「内容が無いよう」の極致のような作品に。バブルというタイトル通り、数か月後にはストーリーは勿論、存在さえ忘れ去られているだろう

 

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム 1.2
異常な高評価に映画館で観るのは見送ったが正解だった。お金を使っているだけに特撮は素晴らしいが、ストーリーは褒めようがない

MCU作品に緻密なシナリオを求めるなと言われそうだが、あまりのマッチポンプに閉口。その頭の悪さではMITとか裏口入学以外あり得ないだろう。雑なシナリオな割に設定には拘るから、過去の作品を観ていないと「は?」って感じで話についていけない

それに約2時間半の作品とは言え話を詰め込み過ぎ。まあ、ダラダラ2時間半が過ぎて行くよりはマシだが

結局、豪華な「同窓会」に感涙できるスパイダーマンと言うかMCUヲタ向けの作品なのだろう。今後のMCU作品もこんな感じなのかね。次、外れだったらMCU作品はもう観ることはないだろう

 

・生きててよかった 3.6
ロッキーに憧れてプロボクサーになった男と役者になった男、及びその家族を描いた作品。随所にロッキーのオマージュが入っているので、ロッキー1位は観ておいた方がいいかも。まあ、ロッキーを知らない若い人は観ないだろうけど

ストーリーだが、プロットはベタだが味付けは面白い。主人公の創太夫妻と友人の健児夫妻は対照的に描かれているし、何より激しいセックスシーン。本作はPG12だが、R指定でもおかしくない。格闘技をセックスに擬えるのはベタと言えばベタだが、それを映像で表現するのは大変なこと

ただ、全体的に見るとシーン過多に思える。もう少し厳選できなかったかね。それとコミカルシーンはもう少し笑いを誘導しても良かったかも。やり過ぎは良くないが、本作ははっきりコメディ要素があると分からせた方がラストシーンが活きた筈。ラストは笑わせたいんだと思うので

本作の魅力は何と言っても格闘シーン。創太役の木幡竜の仕上がった肉体はまるで彫刻の様で美しい。その身体から繰り出されるパンチを喰らったらあの世行きかなと思わせる

役者陣は木幡竜は勿論、健児夫妻も良かったが、幸子役の鎌滝恵利が印象に残った。セックスシーンも良かったけど、ちょっと陰のある表情が良かった。他の作品でも見てみたい

2022年に視聴した映画短評(その6)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・ナイトメア・アリー 1.2
アカデミー賞作品賞にノミネートされているが、率直に言って駄作。「シェイプ・オブ・ウォーター」で受賞したんだから、もういいんじゃないの。その「シェイプ・オブ・ウォーター」も…

2時間半かけて結局因果応報。暗い話なのはいいとして、テンポが悪い上に雑。人物に感情移入できるかどうかが名作の基準ではないと思うが、主人公含めあまりに行き当たりばったりでもう少し心理描写があれば少しは印象が違ったかも

1940年頃のアメリカを再現したセットは素晴らしく、暗い感じなのも作品の世界観に合っている。後は、無駄に豪華なキャスティング。特にケイト・ブランシェット演じる心理学者のリリスは妖艶で悪女の魅力たっぷり

ストーリーに見所は皆無なので雰囲気を味わう作品。アカデミー賞作品賞ノミネート作を観たいなら他の作品にすることをお勧めする

 

ベルファスト 2.4
アカデミー賞作品賞ノミネート作品。TENETやダンケルク等のノーラン作品に出演したケネス・ブラナーが監督で制作された本人の幼少期の経験を基にした自叙伝的な作品で、タイトルのベルファスト北アイルランドの首都である

イギリスの主な領土はグレートブリテン島だが、アイルランド島にも領土を持つことは社会の授業でも習った筈。イギリスとアイルランドは長い紛争の歴史があるが、1960年後半から始まった領有権争いを北アイルランド紛争(The Troubles)と呼ぶ

ただ、本作は北アイルランド紛争を描いた作品ではないので紛争への深い理解は必要ない。カトリック陣営がアイルランドプロテスタント陣営がイギリスの構図ではあるが、ベルファストの中でカトリック陣営とプロテスタント陣営が反目していると言う理解で十分だと思う

本作は上映時間が短い上に曲がかかっている時間も長いので、正直内容はあまりない。ただ、ストーリー展開に乏しい分、家族の一人一人を追えているとも言える。老夫婦役のジュディ・デンチキアラン・ハインズの台詞には重みがあって印象に残る

ただ、小生には刺さらなかった。その原因はカトリックvsプロテスタントと言う構図に実感が沸かないからだと思う。日本は八百万の神の国でいい意味で懐が深いからねえ。本作は割とレビュー評価が高いが、この構図を受け入れられない人には並の作品という評価だろう

それとモノクロもどうか。確かにノスタルジックな雰囲気はあっているが、1940年とか1950年の情景をカラーで再現している作品がある中だとインパクトに欠けると言うか。まあ、この作品に浸れていないから、こういう所が気になるのかも知れない

 

・スピリットウォーカー 3.5
SFアクションと紹介されているが、率直に言ってSFではない。ノーランのメメントに影響を受けていると思うが、タイトル通りの内容でオカルト寄り。但し、ホラー要素はないし、純粋なアクション映画だと思う

アクションシーンは安定のクオリティで見応え十分。韓国映画はアクション当たり前だしね。某主演女優賞のアクションごっことは大差があると言わざるを得ない

脚本はスピリットウォーカーと言う着想は面白いし、観客にストーリーを追わせるように出来てはいるが完成度はイマイチ。もっと捻るのもアリだが、(少しずつ全体像が見えて来るうちに)何が何でも記憶を手に入れて復讐すると言う方向性が明白な方がもっと引き込まれたと思う

本作はハリウッドでリメイクされるらしいが、どんなテイストになるかねえ

最後にお小言だが、日本人役は日本人にできなかったかねえ。如何にも片言の日本語って感じで、せめてもっと日本語の上手い人にやって欲しかった。チョイ役とは言え興醒めする

 

・TITANE/チタン 2.0
カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールを受賞した作品だが、うーん…。色々な意味でぶっ飛んだ作品な上に分かりにくいので激しく人を選ぶ作品だろう

ストーリーは前半と後半で大きく変わる。序盤のぶっ飛んだシーン以降はホラーっぽい展開になるのでこれはホラーかと思いきや。後半は風変わりな家族愛を描く作品に。全体的に壊れているのでいい意味で先は読めないが、最後は割とまともなのは残念

〇とセックスして〇の子を宿すなど随所に常軌を逸しているが、それらについての説明は無し。正に「考えるな感じろ」な作品。タイトルのチタンは金属のチタンであるが、その語源となったギリシャ神話の神のメタファーでもあるらしい。同様に主要人物のアレクシアやヴィンセントも神のメタファーらしい

本作はR15+だがグロシーンが多いので耐性が無い人には厳しいかも。それとアレクシアは服を着ていないシーンが多いので裸ばかりなのはどうもと言う人も止めた方がいい。まあ、裸はいやらしいって感じではないので、逆にそれ目当てで観るのもどうかと思うが

 

ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード 3.5
ヒットマンズ・ボディガードの続編だが、序盤に前作を簡単に振り返るので前作未視聴でも楽しめる。脳天気でお下劣、正にアメリカの娯楽映画って感じ

派手な銃撃戦とカーチェイスは見応え十分。そこにコメディもきっちり絡んでアクションコメディとしてのポテンシャルは高い

タイトルにワイフズとあるように本作の主役はソニア。豪快&お下劣キャラは関西のおばちゃんって感じでインパクトがある。ただ、バディ物としての面白さとは違うかな

ストーリーは無駄に凝ってて分かりにくい。アクションコメディなのでもっとシンプルで良かった。その方が終盤にかけて盛り上がったと思うし、アクションシーンにも緊迫感が出たと思う。まあ、オチは面白かったけど

配給が大手じゃないせいか全然話題にならないが、とにかく頭を空っぽにして娯楽作品を観たい人にお勧め

2022年に視聴した映画短評(その5)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・ウエスト・サイド・ストーリー 0.8
アカデミー賞作品賞ノミネート作品。元はミュージカルで1961年にワイズ監督により映画化(ウエスト・サイド物語)されたが、スピルバーグ監督でリメイク。小生はミュージカルもワイズ版も未視聴で曲もTONIGHT位しか知らない

映像はかなり頑張っていると思う。これが1950年代と言われて違和感がないが、クリアで迫力ある画作りは明らかに現代の物。プエルトリコ系はラテン系と分かるキャスティングでどちらの陣営か見分け易い。歌と踊りは高い映像技術によってより素晴らしく見える

但しストーリーは…。ミュージカルは歌と踊りと言うまどろっこしい表現で伝える点からストーリーは薄くなりがちで、ストーリーより歌や踊りの迫力、臨場感等により登場人物に感情移入できるかだと思うが、本作に感情移入できるような人物はいない

その理由の一つが時代錯誤。移民問題は現在のアメリカでも大きな問題だが、本作で描かれているのは単なるチーマーのいざこざ。ロミオとジュリエット風の恋愛も今の時代にはねえ。今、ロミオとジュリエットを作りたいなら〇室-〇子夫妻を題材にした方が遥かに面白いと思う

じゃあどうすればいいんだと言われそうだが、率直に言ってリメイクに向いていない。例えるなら、ぼくらの七日間戦争のような感じ。現在の価値観とあまりにかけ離れていると原作に近い感じでも今風に寄せても違和感の塊になってしまう

本作は原作に近い感じと思われるので旧作の思い出補正に浸れる人にはいいのかも。ロミオとジュリエット風の恋愛、東京リベンジャーズのような世界観なので女性向きの作品だと思う

 

・ポゼッサー 1.5
SFノワールとあるが、ノワールと言うよりはグリ(灰色)って感じ。何をしたいのか分からんと言うか、中途半端と言うか

SFとして斬新な所はない。やってることは攻殻機動隊のゴーストハックをまどろっこしいやり方で実現しているだけだし。2つの人格が対立する様もその葛藤を描けているとは言えず、単に話が分かりにくくなっているだけに過ぎないし

映像的にはSF的要素は今時のVFXだが、グロシーンは昔ながらの特撮なのは単にお金の問題かも知れないが面白い。画作りのセンスはお父さん譲りなのかな

この映画をノーランが撮ったらエンタメ色の強いSFになりそうで、散々手垢のついたテーマをどう調理するかを含めて興味深い

 

・永遠の831 0.3
まずアニヲタとネトウヨは回れ右。特にアニヲタはネトウヨ率高いと思うし酷評確実だろう。じゃあ神山健治監督のファンにお勧めできるかと言えば…。ひるね姫に比べて社会風刺色は強いが、攻殻機動隊東のエデンには遠く及ばないお粗末な作品。一体誰に向けて作ったんだろうか

作画に関してだが風景に関しては悪くない。今時のくっきりはっきりこそ至上だと思っている人には物足りないだろうが。問題なのは人物で、表情に乏しい上動きが不自然。止まっている筈なのにゆらゆらしていて画面酔いする人もいるのでは。アニメファンにはエクスアームの様だと言えば分かるか

脚本についてだが色んな要素を混ぜすぎで何が本題なのか分からない。テロが題材なら残響のテロルの方が数段マシ。明らかに尺不足でアニメで説明しなければいけないことを軒並みナレーションで済まそうとするからストーリーがより薄く感じるし登場人物に感情移入などしようがない

更にエンディングは安っぽい〇〇シーン。某青春映画がギガヒットして以降その方向に寄せるように圧力がかかるようなので本作もそうなんだろうか。ただ、ここまでのストーリーがあんまりな上にヒロインも画だけの問題でなく感情に乏しいのでこれっぽっちも盛り上がらない

本作は珍しく似非声優を使っていないが、ヒロインがここまで無感情なら〇〇〇〇でも起用して壮絶な棒演技を披露して貰った方が少しは話題になって良かったかもね。演技以前に脚本が終わっているので、演技で台無しとは言われないだろう

やっぱり一人で監督と脚本は無理があると思う。本作の評価をどうしようかと迷ったが、これを0点にしたら〇〇や〇〇は永遠の0になるからなあ。限りなく0に近い0.3と言うことで

 

SING/シングネクストステージ 3.5
前作は登場人物が多すぎてフォーカスが甘く発散していた感じであまりいい印象がないが、本作は良く出来ていると思う。ただ、レビューサイトでは前作の方が良かったと言う人も多くて何を求めるかなんだろう

前作は潰れかけの劇場を再建する話だったが、本作はエンタメのメッカで新しいショーを披露する夢を実現する話。コメディ要素で話の腰を折るようなこともなく、話はテンポ良く進む。終盤はショーをがっつり見せてくれるし、前作よりミュージカル方向に振った作品になっている

正直ストーリーは薄いが、本作にストーリーを求めるのは違うと思う。ただ、前作と比べて人間ドラマが無くなった分物足りなく感じる人はいるかも。個人的には見た目が動物なので人間だとやりにくいようなブラックなネタを仕込んで欲しかったが、このご時世ジミーがプーチンに見えて仕方がない

本作は前作を観ていなくても楽しめると思うが、キャラの背景については本作では触れられていないので前作を観ていた方が楽しめるのは確か。映像は美しく、歌も素晴らしいので是非映画館でどうぞ

と褒めて終わりたいが、本作は吹替版ばかりで字幕版の上映がかなり少ない。本作の配給が東宝東和な時点でお察しだが、豪華芸能人を使っている都合上吹替版に誘導したいのが見え見え。どちらを選ぶかは観客の自由。東宝はそんなに消費者庁コラボがしたいのかね。これは大幅減点せざるを得ない

 

・愛なのに 3.7
「アルプススタンドのはしの方」の城定秀夫と「愛がなんだ」の今泉力哉が互いに脚本を提供してR15+のラブストーリー映画を制作する企画「L/R15」の作品で本作は監督城定、脚本今泉。逆の組み合わせの「猫は逃げた」も上映されているが、こちらの方が好みに合いそうなので鑑賞

今泉の脚本をVシネマも手掛ける城定が手掛けるとこうなるのかって感じ。濡れ場が多いのをどう捉えるかだが、大人の恋愛だしSEXも愛の形。ただ、今泉が監督ならこうはならないだろうから、今泉監督のファンにとっては不満かも

今泉の脚本なので答えの出ない禅問答の様だったり、片思いの筈がベクトルが逆になりつつある様子も描いているが、本作は恋愛の機微を描いて考えさせるよりは「細かいことはいいんだよ」とばかりに笑い飛ばす作品だと思う。ただ、人によっては身につまされる話だとは思うが

脚本はダラダラ感は無いし、愛なのにと言うタイトルを意識させられるシーンが度々あって悪くないが、一体どう終わらせるんだろうと不安にはなった。御心で終わっても面白かったと思うが、愛=SEXがテーマじゃないからね。まあ、本作のラストシーンは秀逸で不満はないけど

いただけないなと思ったのは両親が出てくるシーン。テーマには沿っているし無意味ではないが、ベタオブベタな展開はちょっとね。せめて両親も〇〇のお世話になるとか捻って欲しかった。いくら娘とは言え、手紙を勝手に読むのは法律的にアウトだしねえ

本作は濡れ場がない方がヒットしたのではと言う意見があったが、それは疑問。監督・脚本は映画好きには響くだろうが、一般層には?だと思うので恋愛映画好きが観るとも思えないが。寧ろ、小生の様に恋愛映画は苦手勢が見に来ると思うので結局行って来いだと思う

P.S. さとうほなみ=ほな・いこか=ゲス極のドラム、知らん人が多いんだな。まあ、映画やドラマ、音楽の双方に興味がないと分からんか。あと濡れ場に驚いた人も多かったみたいだが、「彼女」を見た人は少ないんだろうなあ。ネトフリ配信だし作品の出来もイマイチで話題にならなかったしね

2022年に視聴した映画短評(その4)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

東洋の魔女 4.1
若い人は知らないだろうが、東洋の魔女東京五輪(1964)で金メダルを獲得した女子バレーボールチームの愛称。ほぼニチボー貝塚の選手で構成されていて、監督もニチボー貝塚大松博文ソ連との優勝決定戦は66.8%(ビデオリサーチ)という驚異の視聴率を記録した

ニチボー貝塚は大日本紡績貝塚工場に1954年に作られた女子バレーボールチーム(日紡貝塚)が1958年に9人制→6人制を経て1964年に社名変更に伴い改称、以下1969年にユニチカ貝塚、1977年にユニチカVリーグ発足に伴い1991年にユニチカ・フェニックスとなった

しかし、業績不振から1997年に貝塚工場は操業停止、2000年にはチームも活動停止。選手は東レ(・アローズ)に完全移籍した。工場跡地の大半は売却されショッピングセンターや住宅になったが、一部は貝塚市に寄贈されて貝塚市歴史展示館として公開されている

チームの歴史はこれ位にしてルールの確認を。現在はラリーポイント制を採用しているが、当時はサーブ権制でサーブ権を持っている方にしか得点が入らない(持たない方が決めた場合、持っている方のミスはサーブ権移動)、リベロ(守備専門選手)が存在しないのが大きな違いか

本作は勿論、日本を題材としているが監督はフランス人である。外国人による日本を題材にしたドキュメンタリー(風)映画は去年MINAMATA、ONODA等が公開されて本作も去年公開された

正直、東洋の魔女を追ったドキュメンタリーとしては物足りない面が多い。ただ、東京五輪(1964)の記録映像は勿論、東洋の魔女に迫るドキュメンタリーはこれまでもあった訳で、"普通の"ドキュメンタリーを今作る理由は乏しいと思う

勿論、元選手へのインタビューや当時の練習風景、試合の映像など東洋の魔女の足跡を追ってはいるが、それよりも東洋の魔女を通じて外国人から見た当時の日本人のメンタリティ(の強さ)に迫る方がメインなのだろう。ただ、イメージで語る感じで伝わりにくい所もあるが

本作は映像の見せ方が独特でドキュメンタリー映画のイメージをいい意味で打ち破っている。往年の人気アニメ"アタックNo.1"と記録映像のクロスオーバーが多いが違和感はない。まるでアニメの様とよく言われるが、寧ろアタックNo.1東洋の魔女の様なのだ

当方は東京五輪(1964)は生まれる前なので、バレーと言えばユニチカよりも中田久美三屋裕子、大林素子らが所属していた日立(・ベルフィーユ)の方が印象に残っているが、本作は十分楽しめた。ただ、若い人には厳しいかもね

 

・テレビで会えない芸人 3.5
かつて社会風刺ネタで人気だった「ザ・ニュースペーパー」のメンバーだった松元ヒロを追ったドキュメンタリー。休日+サービスデーとは言え満席+αになるとはね。松元ヒロのファンが多く観に来たのだろう

上映時間が短めな分ダラダラ感は皆無で、松元の略歴は勿論、松元と親交の深かった人物とのエピソード、練習風景やライブの様子等そつなく纏めた印象。風刺と言っても昨今のネットのようにメタメタに扱き下ろすのではなくチクリと刺す感じなのはあくまでお笑いであると同時に松元の人柄なのだろう

ただ、松元がTVから舞台に活躍の場を求めたのは事実だろうが、昨今TVに出ない芸能人なんて珍しくない。かつてはバラエティ番組の常連であった稲川淳二は今は怪談ライブがメインだし、オリエンタルラジオ中田敦彦等YouTuberとして活躍する芸能人は数多い

松元がTVに必要とされない理由は尖ったネタのせいなのだろうか。今時社会風刺ネタは難しいのかも知れないが、そもそもお笑いは尖った所があるものだし、ワイドショーのコメンテーターの尖った発言は炎上することもあるものの賞賛も珍しくなく、尖ったネタが全く受け入れられないことはない筈だ

そもそも今はお笑い番組が皆無で芸人のネタをTVで観る機会は少ない。雛壇に芸能人を並べての当たり障りのないバラエティ番組ばかりになったTVでは、何かの間違いで日本人は自省すべきだという世相になったとしても松元の出番はないのではなかろうか

松元がメインなのは分かるのだが、タイトルからしてTVと芸人(の関係)に関する考察は必要。それがないから良く纏まった作品だけど何か足りない印象になっているように思う

MXで「小池にはまってさあ大変」が放送されることに期待したい

 

・グッバイ、ドン・グリーズ! 2.5
ノーゲーム・ノーライフ」「宇宙よりも遠い場所」で知られるいしづかあつこ監督の作品。制作会社等、よりもいのスタッフが多く参加している作品で期待が大きかったが、映画評価サイトでは上から下までかなり評価が割れている様子

本作のいい所はまずは作画。超絶作画って程ではないが、ひと夏のアドベンチャーに浸るには十分なクオリティ。それと[Alexandros]の主題歌も作品にあっている

本作の上映時間は95分。これはアニメ映画としては標準だが、同時にスタンド・バイ・ミー(スティーヴン・キング原作、ベン・E・キングの主題歌はかなり有名)を強く意識した結果だろう。監督が好きな映画なのだろうし、スタンド・バイ・ミーみたいな作品にしたい意思が伝わってくる

本作のプロット、細かい所の拘りは悪くないし、タイトルも良く考えられている。但し、エピソードの繋ぎ、登場人物の設定や関係等雑な部分が多く、これが評価を下げている要因だろう

ロウマ、トト、ドロップは高1(相当の設定)だが、高校生にしては子供っぽい。まあ、久々に会って童心に帰るはアリだが、童心に帰るにしても全てが小学生のノリではない訳で。幼稚な部分と人生を語る部分のミスマッチが半端ない

それとドロップとの関係の描写が不足している。ロウマとドロップが知り合ってからの経緯をもう少し入れるべきだった。ヘアドネーションに繋がるドロップの身の上話も人生語りに掻き消されて印象に残らないし。特にトトがドロップとの関係を如何に深めるかはストーリーの説得力に関わってくる

人物以外では市原編とアイスランド編のバランスが悪い。アイスランド編がおまけに感じる。脚本修正が必要だが、思い切ってアイスランドは切っても良かったかも。出来ればチボリをもっと話に絡めてアイスランド編を膨らませれば、スタンド・バイ・ミーのパクリとも言われず監督の個性が出せただろう

何で一人で監督と脚本を担当したのかねえ。細田にせよ新海にせよ一人で監督と脚本だと脚本の完成度が低くなりがち。監督と脚本の相性はあると思うが、よりもいで監督のアニオリ脚本の経験のある花田十輝に頼めば問題なさそうで依頼しなかったのは何か理由があったのだろうか

本作にもお約束の似非声優が出演しているが、田村淳はいいとして指原莉乃はねえ…。声優の仕事はこれが初めてじゃないだろ。まあ、出番は序盤だけでそれほど多くないし棒演技でぶち壊しって程ではないが

評価が割れているように万人受けする作品ではないのは確か。基本的にはスタンド・バイ・ミーを知っていて少年時代の思い出に浸れるおじさん向けで、あとは花江夏樹梶裕貴村瀬歩の熱血演技が観たい人向けだろう

 

Ribbon 3.1
のん(能年玲奈)の長編映画初監督作品。監督のみならず主演・脚本も務めると言うことで、果たしてどうなるかと思ったが。結論から言うと悪くない、寧ろ長編初監督であることを鑑みれば上出来だろう

主張やタイトルの意味は伝わってくる。リボンの目的は幾つかあるが自分の為でなく他人の為に飾るもの。コロナ禍で一人でいる時間が長くなると塞ぎ込みがちだし、"理不尽"に腹を立てがちだ。そういった感情は良く表現できると思う

ただ、冒頭の制作物の破壊シーンこそインパクトがあるが、ストーリーが進む終盤までは中弛み感もある。家族は皆個性的だし、過剰な新型コロナ対策はツッコミ所満載で笑える所もあるが、メインストーリーとは余り関係ないからねえ。上手く絡めて欲しかった

それと公開時期が遅れたのは残念。もっと世間が新型コロナでピリピリしていた頃の方がインパクトがあっただろう。まあ、コロナ禍で上映延期になる作品もあって激しいスクリーン争奪戦が繰り広げられているから仕方ないのかな

本作は美大生が主人公と言うこともあり、おじさんおばさんよりは現役高校生・大学生の方が共感できるだろう。それとのんと山下リオの2ショットは映えるのでファンはそれだけでも満足かも。個人的には山下リオのセクシーショットが観たかったが、そういう作品ではないよなあ

 

・ドライブ・マイ・カー 2.8
海外の映画賞を多数受賞、アカデミー賞作品賞ノミネートと言うことで多くの映画館が上映しだした。好みに合わなさそうな作品で観るつもりはなかったが、レンタル開始と言うことで視聴。率直な感想は思っていたよりは良かったが、ぶっちゃけ過大評価だと思う

本作の素晴らしい所は春樹ワールドと言うか、文学の香りを表現しつつ映画になっていること。何言っているんだと思われるだろうが、村上春樹の作品って抽象的で展開や感情表現に乏しい印象でこれをこのまま映画にすると内容は無いようで意味不明な駄作になりがちだ

本作はドライブ・マイ・カーだけでなく同じ短編集に収録されている木野とシェエラザードチェーホフの戯曲ワーニャ伯父さん等を合わせた脚本になっていて、それがストーリーの展開や厚みに繋がっていると思う

駄目な所は大きく2つ。まずは上映時間。3時間は長すぎる。中盤のワーニャ伯父さんの稽古に時間を割きすぎ。まあ、ワーニャ伯父さんも本作のメッセージだし、ダラダラした感じは村上春樹っぽいとは言えるが

後は終盤。かなり酷い。序盤の違和感が春樹ワールドに引き込まれるいい違和感だとすれば、終盤の違和感はこんなん村上春樹じゃないって感じ。映画として展開が必要なのは分かるが、中盤までの言動と全然一致しないんだよなあ

ラストシーンに至っては失笑モノ。本作は大半を釜山で撮るつもりだったがコロナ禍で断念したらしい。せめてもの罪滅ぼしなのかね。モヤっとして終わるのが村上春樹の作品だと思うが

本作がノミネートされたのはワーニャ伯父さんの多言語演劇に今のアメリカ社会を重ねて観るからだろう。現実は白人と黒人の対立激化に象徴されるように皆が手を取り合って共生する社会とは真逆の方向に進んでいるからねえ

2022年に視聴した映画短評(その3)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・DUNE デューン 砂の惑星 1.0
レビューを書くつもりはなかったが、アカデミー作品賞にノミネートされた様なので率直な感想を。当方、原作未読、リンチ版未視聴。本作を一言で言えば「人を選ぶ映画の典型」。大作で売り上げが必要だろうにこんな間口の狭い作品にするとはね

本作の魅力は何と言っても圧倒的映像美。世界観を体現している。衣装にしてもケチケチするのではなくお金をかけているし、幻想的な風景は異世界感がある。ただ、遠い未来の話なのに古代っぽいのは原作の世界観なのだろうが、全体的に画面が暗く単調なのはストーリーも相まって眠気を誘う

で、肝心のストーリーだがこれが酷い。DUNE自体がゆったりとしたテンポで進む(らしい)上にビルヌーブの作風と重なってビックリするほど話が進まない。起承転結と言われるが、本作は起起起起と言って差支えない。1シーンが長い上に予知夢シーンが結構な頻度で挟まるのでテンポの悪さに苛ついてくる

ストーリーが難解と言うレビューもあるが、寧ろストーリーは解りやすい。ただ、バックグラウンドに関しての説明が皆無なので、ただでさえ薄いストーリーに説得力がない

ボロッカスに扱き下ろしているが、DUNEヲタにとっては単調な風景も、ストーリー展開が遅いのも、余計な説明がないのもDUNEの重厚な世界観を体現していると考えられるのだろう

要は本作は(多分原作も)世界観を(理解せずに)感じる作品なのだろう。とは言え、理解せずに感じて素晴らしいと思える人はそこまで多くない筈。本作を堪能したいのなら予習は必須なのだろう

日本ではどうか知らんが次作は2023年10月公開らしい。このテンポで展開して次で完結するのかねえ。本作は赤字ではなさそうだが、この作風では本作を観ていない人が観るとは思えず興行収入の低下は確実だろう。次で完結しないと最悪打ち切りもありそうだが…

 

・パワー・オブ・ザ・ドッグ 3.0
Netflixで配信されている作品。劇場公開は期間限定だった筈だが、アカデミー作品賞にノミネートされたからなのか幾つかの映画館で公開されている

脚本は非常に緻密で登場人物の心情の描写は勿論、後々の行動の伏線となるような言動が散りばめられている。ただ、全体的には展開に乏しく、最終盤の展開が無ければ凡庸な作品だっただろう。まあ、映画評論家は好むかも知れないが

時代的なものか映像は全体的に暗いが、ストーリーも明るいものではないし何がテーマなのか伝わってこない作品でもある。タイトルは聖書に因むようだが宗教的要素は皆無だし、西部劇ではあるが古き良きアメリカを礼賛するような作品でもないし

キャストは粗野だが繊細なところもあるフィルを演じたベネディクト・カンバーバッチと弱弱しく見えるが狂気を秘めたピーターを演じたコディ・スミット=マクフィーが印象に残った。各キャラ二面性がしっかりと描かれていて、(女性監督から見た)男性の真の強さの描写なんだろうか

上述のように如何にも映画評論家好みの作品でオスカー最右翼と言いたいところだがネトフリ配信はやはりネック。ネトフリにはやりたくないと言う意識が強いように思えるし。個人的には良くできた作品だが、作品賞まではと思うが果たして

P.S. 余計なお世話だと思うが最後呆気にとられた人へ。〇〇〇完成のシーンがミソで、〇〇を運んできたのは誰?印象に残るシーンがあった筈。でも、どこまでが仕込みなのかね。〇〇〇作りからだったら相当だが、流石にそこまではないかな

 

・ミラクルシティコザ 3.0
沖縄ではかなり評判がいい作品らしいが。タイトルのコザは昔沖縄にあった市で、1974年に美里村と合併して沖縄市になっている

本作の一番の魅力は1970年当時の空気感が伝わってくること。ベトナム戦争景気に沸くコザのメインストリート、アメリカ統治末期で秩序は乱れカオス状態、米兵相手にアメリカの曲をカバーするバンドが多く存在したという

米軍が日本人を舐め切っているのは今も変わらないが、じゃあ米軍出ていけという単純な話ではない。1970年当時だけでなく今でも沖縄経済への影響力は大きい。そういう複雑な感情をコザの過去と現在を通じて映し出す本作は沖縄の人には特に刺さるのだろう

ストーリーに関してだが、もっと脚本をブラッシュアップして欲しかった。タイムスリップx入れ替わりは安直と言えば安直だが、問題はその設定をどう活かすか。何故、タイムスリップしてまでやり直したいのかが伝わってこない

そうなってしまった要因の一つが要素の詰め込み過ぎ。終盤、泣かせる要素が多いが感情移入できないからねえ。もっと絞って深い描写をすれば最後は皆が泣ける作品になったと思う

それからORANGE RANGEの主題歌が作品の世界観に全くマッチしていない。沖縄出身だし主題歌くらいは有名なバンドにってことだろうが、主題歌で映画を観る人は少ないと思うし何より映画の余韻に関わるからねえ

沖縄の人なら問題ないだろうが、沖縄の歴史を多少は知っておいた方がいい。1972年に沖縄が日本に復帰したことは知っているだろうが、1970年のコザ暴動(騒動)についてWikiレベルでいいので調べてから本作を視聴すべきだろう

アカデミー賞Twitter企画をやっているようだが、来年のノミネート作品も同様の企画をしてくれないかね。本作がノミネートされることはないと思うが、ハリウッドのセレブ達にどう映るのか非常に興味がある

 

・ドント・ルック・アップ 4.3
アカデミー作品賞ノミネートNetflix枠の2作目。こちらも一部劇場で上映されている。ネトフリが関わっているからかコメディ映画の割にお金をかけている印象で特にキャストは無駄に豪華

本作の感想を一言で言えば「ドンピシャ」。巨大彗星を新型コロナウィルスに置き換えれば今の社会そのもの。脅威も政治ショーの道具でしかなく、脅威に対応しているように見せかけての利益誘導、失敗したらしれっとスルーする。本作の舞台は勿論アメリカだが日本も変わらない

マスコミにとってもゴシップネタの一つでしかなく深層に迫ろうとせずに漠然とした不安を垂れ流すだけ。ネットには陰謀論を含め不都合な事実は完全無視の極論ばかりが罷り通り、思考停止した連中を巻き込んで分断が顕著になる

タイトルのドント・ルック・アップはダブルミーニングになっているし良く考えられたシナリオではあるが、上映時間は少し長いかも。ダラダラと長い印象はないが、コメディだしテンポよく2時間弱位で纏めて欲しかった

それから露骨にトランプを揶揄するのもどうか。トランプ批判が悪いとは思わないが、社会全体に問いかけるような硬派な内容がぼやける感じ。まあ、(トランプの)政策よりゴシップの方が話題になるという婉曲的な皮肉もあるのだろうが

本作がアカデミー作品賞に選ばれることはないだろうが、ネトフリ作品の上にこの内容、ノミネートされたのが不思議だ。アカデミー賞も変わりつつあるってことだろうか

 

・ドリームプラン 2.0
ビーナスとセリーナのウィリアムズ姉妹を育てたことで知られる父親のリチャードを描いたドラマ。リチャードはテニス未経験で常識に囚われず独自のスタイルを貫く。日本で例えるならプロボクサーの経験無しで興毅、大毅、和毅を育てた亀田史郎ってところだろうか

率直に言って内容は物足りない。2時間20分程の上映時間はダラダラ感はないものの薄い。ドリームプランは娘を世界チャンピオンにする為の計画書の筈だが、世界チャンピオンどころかビーナスがプロデビューした所で終わりは酷すぎる。セリーナはデビューすらしてない訳だし

本作の原題はKing Richard。家族は勿論、周囲に対する態度は横暴そのもの。娘を守っているようで自己実現の手段にしている感はあるし、娘にはタダには手を出すなと言っておいて家族全体で寄生しようとしたり支離滅裂。まあ、実際のリチャードの素行はもっとヤバいんじゃないかな

ただ、教育内容に共感できる部分があるのは事実で、テニスだけでなく学業や躾、普通の女の子がするようなことも大事と言うのは万が一プロとして大成しなかった場合は勿論、黒人選手と言うだけで軋轢があるのが現実でそれに一々ブチ切れていたらプロとしてやっていけないだろう

それとジュニアで試合に出なかったのは、プロになっても試合数を絞るようになり結果的に息の長い選手になった。ジュニアで試合に出まくっていたらカプリアティになったかどうかは分からないが、ウィンブルドンでの伊達公子との名勝負はなかったかも知れない

内容はこれ位にして、最悪なのはタイトル。ドリームプランはないでしょ。ドリームプランの中身なんか殆ど触れてないのに。タイトル詐欺、予告編詐欺はいい加減止めた方がいい

本作はテニスに関する内容は薄いのでテニスファンにはお勧めしかねる。寧ろ、テニスなんて知らない興味ないが家族愛ものが好きな人向けの作品だと思う。勿論、ウィル・スミスのファンにはお勧めできる

2022年に視聴した映画短評(その2)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ 0.5
バイオ愛によって評価が変わりそうな作品だが、当方ゲームは未プレー、ミラ・ジョヴォヴィッチ版は1は見たような気がするがよく覚えていない。有名作品でパチスロになったりしてるし多少の知識はある程度

映画の出来は率直に言ってゴミ。本作は(ゲームの)1と2を合わせたような作品らしいが、これが失敗の最大の要因だろう。登場人物がと言うより主要(と思われる)人物が多すぎて誰が主人公か分からないし人物同士の関係が分からない

バックグラウンドの掘り下げもままならずストーリーの理解ができないし没入感に欠ける。特に終盤はかなりごちゃごちゃしているにも関わらず幼少期の回想とか入れて要素の取捨選択が下手過ぎる

原作ファンでない方が楽しめると言う意見もあるが逆だと思う。ゲーム版のシナリオを知っていて補完しながらでないとまともにストーリーを追えないし、ゲームは知らないがミラ版のファンと言う人にはアクションシーンの少ない本作は不満が残るだろう

それにバイオは抜きにしてホラー作品としてもなあ。A級ホラーでないのは勿論だが、クリーチャーの出来がいいのも災いしてB級ホラーのチープさや笑える要素もないからねえ。ホラーならとりあえず見る人以外にはお勧めしかねる

本作は間違いなく原作ファン向けの作品だが、ガチ勢には不満な要素が多いようで。「かゆい うま」とか月光を弾く所とか印象に残るシーンも入っているが、これも原作通りではないのでガチ勢には不満だろう。ライトな原作ファンがゲームをプレイしていた時の思い出に浸る作品なのだと思う

 

・さがす 4.2
レビューでの評判と佐藤二朗がシリアスな役をやると言うことで観たが、佐藤二朗は悪くはないがシリアスだと輝かない感じ。娘役の伊東蒼を筆頭に清水尋也や森田望智の方が印象に残った

極力ネタバレを避けたいのでレビューが難しいが、脚本は良く練られていると思う。上手くミスリードを誘って終盤の展開に繋げている。前半と後半でがらりと変わる点、ラストシーン等韓国映画っぽいテイスト

本作も社会問題を取り上げているが、「岬の兄妹」に比べるとインパクトに欠けるのは事実。ただ、「岬の兄妹」は娯楽作品とは言い難いし、本作も(日本の)娯楽作品としては攻めた脚本だと思う

所謂モラル厨には毛嫌いされるだろうが、重苦しい話でもないし割と一般向けの作品だと思う。当方はチネチッタで視聴したが、大手シネコンでは殆ど上映されていないから映画ファン以外が見る機会は少なそうで残念

おまけ)自転車での捕物シーンは意外に迫力がある。伊東蒼は蒔田彩珠と同じ事務所なのか。蒔田彩珠と共に今後の活躍を期待したいが、蒔田彩珠は微妙な作品に出演しているようで。今月は観たい作品が多いし、この作品は見送りかな

 

・ライダーズ・オブ・ジャスティス 4.0
風が吹けば桶屋が儲かる」の北欧バージョンと言った感じか。粗暴な軍人が妻を失ったリベンジに燃えるアクション映画の筈が癖のある人達との絡みで斜め上の展開に…と言う話。アクションシーンもあるが、本作のアクションはおまけだろう

色々な要素が詰まった作品だが、とっ散らかった感じはしない。メインに据えているのはヒューマンドラマで人は人に頼って生きると言うことで哲学的な雰囲気もあるが、それと現在進行形のリベンジ劇のギャップが何とも言えない味がある

タイトルのライダーズ・オブ・ジャスティスは劇中のギャングの名称だが、(見せかけの)正義に(安易に)乗る奴らと言うのは主人公達だけでなく世間一般への皮肉にもなっている

ブラックユーモアを含む独特のノリがある作品で人を選ぶのは間違いないが、偶には一味変わった作品を楽しむのもいいだろう

しかし、マッツ・ミケルセンはアナザーラウンドの時とは別人だな。まあ、癖のある人物と言う点では共通しているが。それと冒頭のシーンはボーっとせずにしっかり見ておくべし

 

ゴーストバスターズ アフターライフ 2.9
レイ・パーカーJr.が歌っている主題歌はある程度以上の年齢層なら聞いたことがある筈。ゴーストバスターズ(1)が1984年、2が1989年、リブート版が2016年に公開されての本作(2021年公開)。まあ、当方は1しか観ていないが

感想を一言で言えば「まあまあ面白いが、これでいいの?」。流石にオマージュが過ぎると思う。有名タイトルの続編はノスタルジーを感じる世代を引き込むのが目的なのは分かるが、幅広い世代に観て貰うつもりはないのかね。これで若い世代を引き込めるとは思えないのだが

本作は子供達の冒険譚だが、グループの構成は昨今のポリコレを意識しているのに中身はオールドファッションなんだよなあ。まるで(同世代の作品である)グーニーズを観ているかのような感覚。オマージュ全否定ではないが、今時の要素と上手くミックスして欲しかった

それと序盤のテンポの悪さが気になった。これはガチヲタ勢にとっては徐々に期待感が高まる感じだと思うが、シリーズ初見勢にはどうなんだろう

オマージュの嵐はガチヲタには感動ものだろうから試写会勢の評価が高いのは納得だが、当方はゴーストバスターズに思い入れはないからなあ。初見でも楽しめるかも知れないが、今ならGYAOで無料で1が観られるので観てから本作を視聴した方がオマージュも回収できて楽しめると思う

 

・355 1.8
うーん。一言で言えば「並の駄作」。いくらおばちゃん(失礼)とは言え、素直にチャーリーズ・エンジェル(昔の方)で良かったと思うんだが。それだと今時の価値観に反するのかも知れないが、ガチのスパイアクションとしてはあまりに物足らない

ジェシカ・チャステインは今後はアクションを売りにするのかね。本気でアクションを頑張るつもりならサイズもないしもっと筋力をつけないと。アクションシーンに迫力がないのは撮影技術の問題でもあるが、還暦過ぎの馬場の試合みたいに相手がジェシカに合わせている感じ

それとやたら家族の話でお涙頂戴なのも×。スパイ物にリアリティは不要。シビアなシーンの応酬での浪花節ならいいと思うが、シビアさより甘さが目立つシナリオだしねえ。シビアな一面が見られるのが「二か月後」だが、これはいらんでしょ。素人に言われたくないだろうがセンス無いわ

スパイ物として魅せるならもっとアクションを頑張ってシナリオを練らないと。華やかさを売りにするのは拒否しているし、見所はペネロペ・クルスの変わらぬ美貌位

タイトルの355はアメリカ独立戦争当時に実在した女性スパイに因むらしいが、この映画を観るくらいなら551の豚まんを10個買った方が満足できるだろう