2024年に視聴した映画短評(その3)

*今年観た映画なので、今年公開の作品とは限らない。5点満点で最低点は0

 

・キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン 0.3
原作はデビッド・グランのノンフィクション作品『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』。マーティン・スコセッシ監督作品と言えば上映時間が長いことで有名だが、本作も例外にあらず

本作の感想を一言で言えば”如何にも賞狙いの凡庸で退屈な作品”。実際、アカデミー賞では作品賞をはじめ10部門でノミネートされたが、受賞は0。上映時間がクソ長い以外に際立ったところがないから受賞0は当然の結果だろう

ぶっちゃけありきたりな西部劇。2時間あれば十分な内容。『オッペンハイマー』といいアメリカの過去に疑問符を投げかける作品がノミネートされているのは2025年から適用されるであろう”多様性ルール”を先取りした結果なのだろう

映像的には特に見どころなし。西部劇だしね。ちゃんとお金をかけているのは分かるけど。日中のシーンもあるが、夜のシーンもそれなりにあるし室内は暗いので、ダラダラして盛り上がりのない展開と合わせて眠りへと誘われる

キャストでは”キング”役のロバート・デ・ニーロは流石の演技。追求されるとキレて恫喝する爺さんの姿は◯生や◯階を彷彿とさせる。アーネストの妻モリーを演じたリリー・グラッドストーンも良かったと思う。レオナルド・ディカプリオは微妙。小物感は出ていたと思うけど、やっぱりスターオーラを消しきれないと言うか。適役ではないと思う

しかし、レビューがヤバいことになってるな。まあ、3時間20分の映画を見る人なんて映画関係者とスコセッシのファンが殆どだろうからこうなるんだろうけど、客観的に見て称賛で溢れるような作品とは思えないんだが。信者が必死なのは◯◯の◯◯映画に似た気持ち悪さを感じる

P.S. あまりに長い本作。上映途中に休憩を挟む映画館が続出したら、パラマウントAppleは「変更や休憩なしで上映する」という契約に違反するとして厳しく取り締まったらしい。バカじゃないの。インド映画は逆にインターミッション前提で作られている作品が多いが、無しで上映してクレームがついたなんて聞いたことないけどね。アメリカを支配する多様性が商業主義によって歪められた紛い物であることを示すエピソードの一つだろう

 

・マエストロ:その音楽と愛と 1.0
エストロ=レナード・バーンスタインのこと。邦題は『マエストロ:その音楽と愛と』だが『レニー:煙草と両刀使いの人生』の方が良かったかもね。音楽家バーンスタインの曲作りとか音楽に対する姿勢を掘り下げる内容を期待するなら見ない方がいい

バーンスタインの偉大なところは作曲家としても指揮者としても成功したと言えること。演奏家兼指揮者はそれなりにいる(アシュケナージとか宮本文昭とか)が現実的には演奏家から指揮者にシフトしたが正しいと思う。化学者兼作曲家のボロディンって変わり種もいるが

大谷翔平の”二刀流”が話題になったが、どの世界でも”二刀流”は大変なこと。ニューヨーク・フィルの常任指揮者を辞任したのは作曲の時間を取るためだし、弟子が多いのも(作曲の時間を取るために)自身の代理を務められる指揮者の育成が必要だったのがきっかけ。弟子には小澤征爾佐渡裕アバドなど有名な指揮者も多い。去年のアカデミー作品賞にノミネートされた『TAR/ター』のリディア・ター(架空の人物)もバーンスタインの弟子という設定だった筈

本作の感想を一言で言えば「賞狙いが鼻につく」。”搦手”で来たのは、普通の伝記作品ではアカデミー賞は狙えない(ドキュメンタリー賞はあるが)からでしょ。アカデミー賞では作品賞など7部門でノミネートされたが、受賞は0。まあ、『ボヘミアン・ラプソディ』にはしたくない矜持もあるだろうが、『ボヘミアン~』は既にクイーンの伝記作品があったから捻らざるを得ないのは当然だし、『オッペンハイマー』は(量子)物理学者の研究内容(論文)を掘り下げてもついてこれる人は殆どいないだろうからねえ

ゆりかごから墓場までではないもののデビューしたての頃から晩年までを網羅している上に妻のフェリシアや家族と過ごすシーンが多く、それ故各シーンが唐突で細切れなので話に入っていけない。撮影を無駄に凝っているのも細切れ感が増すばかりで逆効果。山場がない訳じゃないが、伝記映画ではないので唐突にそのシーンが来て映画的な盛り上がりには欠ける。作品は白黒とカラーで構成されていて、内容的な章立てと大まかな時代を示唆しているのだろうが、何年とか一切出ないのでいつだか分からない

映画マニアや信者、映画関係者は置いておくとして、本作は非常に不親切なのでクラシックとバーンスタインについての知識があることが大前提。その上で(音楽家じゃない)人間バーンスタインに興味がある人向けだろう。それ以外の人、特にクラシックなんて全く知らんって人が観てもヘビースモーカーな上に(妻がいるのに)バイセクシャルでお盛んなおっさんに不快度MAXだろうし、フェリシアもそこまで好感度は高くないし、勿論曲も知らないだろうから不満しか溜まらないと思う

ぶっちゃけ映画としては0点だが、指揮者バーンスタインと作曲家バーンスタインを味わえるシーンは用意されているのでそれぞれ+0.5点で1点にする

 

・雪山の絆 3.3
『インポッシブル』『ジュラシック・ワールド 炎の王国』等で知られるJ・A・バヨナ監督の作品。『インポッシブル』は2004年のスマトラ島沖地震で離れ離れになった家族の実話を元にしているが、本作は1972年のウルグアイ空軍機571便遭難事故が題材で、事故機に乗っていたラグビー選手達と同じ学校に通っていた作家のパブロ・ビエルチが生存者16人全員の証言を記録し、事故から36年後に発表した同名の著書が原作になっている。アカデミー賞で国際長編映画賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞の2部門でノミネートされたが受賞はならず

同事故を題材にした映画は多数作られていて、有名どころでは1974年にピアズ・ポール・リードによって書かれた『生存者―アンデス山中の70日』を原作にした1993年にイーサン・ホーク主演で映画化された『生きてこそ』。『生きてこそ』は実在しない人物が登場したり、過激なシーンにはエンタメ上の配慮があったようだが、本作ではキャストはウルグアイとアルゼンチンの俳優だし、痩せ細った様子やカニバリズム(食人)をもろに想起させるシーンがあるなどリアル路線

極限下での心理描写も見どころではあるが、人肉食に至るまでの葛藤や論争の描写は控えめ。人肉食を描くのが目的ではないだろうし、72日間にも及んだサバイバル生活の一部に過ぎないし、原作が生存者全員の証言を元にしている以上死者を含めて誰かを悪者にするつもりもないだろう。食人行為の是非について当時激しい論争になったことは想像に難くないし、それによって心に傷を負った生存者もいることだろう

難点はやはり現実の事故を題材にしているだけに予想外の展開にはならない上に前述のようにこの事故を題材にした映画が多いだけでなく、この事故に触発されて作られた話もあるので新鮮味に欠ける。とは言え、クソ長いエンドロールが示すように多くの人が関わった超大作。一度は視聴して損はない作品だろう

P.S. トンチンカンなことを書いている人がいたので補足しておくと、まず南半球なので季節が北半球とは逆。事故が10月で生還したのが12月だと日本の感覚では秋から冬になるので秋のうちに何とかしておけばになるが、南半球では春から夏になる。冬山登山の装備がないのに登山なんて死にに行くようなもの。富士山だって入山できるのは夏の僅かな期間だけだしね。夏を待っての勝負は賢明な判断でしょ

 

・PERFECT DAYS 2.5
ヴィム・ヴェンダース監督作品。ドイツ人の監督だが、本作の舞台は東京

本作を観たら誰もが気になるであろう”The Tokyo Toilet”の文字。TTTプロジェクトとも呼ばれ、誰もが快適に使える公衆便所を目指して2020-2023にかけて渋谷区内の17箇所に内外のクリエイター16人がデザインした”デザイナーズトイレ”が設置された。プロジェクトを実施したのは日本財団だが、2023年に渋谷区に譲渡され今後の管理は渋谷区が行う予定になっている

日本財団と言われてもピンとこない人が多いだろうが、2011年3月までの名称は日本船舶振興会。若い人は知らないだろうが、高見山(東関親方)やCMソングの作曲を担当した山本直純が出演した「♪戸締まり用心 火の用心」で始まるCM(火の用心のうた)は有名。このCMは月曜日から日曜日までの各曜日バージョンがある位かなりの頻度で流された。1962年に笹川良一(CM内で子供たちと一緒に一日一善と言っている爺さん)によって創立された同団体だが、現在の総資産額は3,000億円と言われる日本最大級の財団である

製作の柳井康治はユニクロジーユーで有名なファーストリテイリングのドンである柳井正の息子でファーストリテイリング取締役。(共同)脚本の高崎卓馬はdentsu Japanのグロース・オフィサー。色々手掛けているようだが、映画の脚本は過去に『ホノカアボーイ』で担当したことがあるものの実績には乏しい

別に誰が関わろうが素晴らしい映画ならそれでいいじゃないかと言われそうだが、日本財団xファーストリテイリングx電通の勝ち組コラボから弱者を慮る作品が生まれるわけがないことは知っておくべき。本作の主人公である平山は古そうなアパート暮らしで質素な生活ではあるものの、結構な頻度で飲みに行っている訳だし生活に困窮している訳ではないと思う

平山の職業は”デザイナーズトイレ”の清掃員。平日だけでなく休日もルーティーンに基づく行動が多いが、無趣味な訳ではなく一人暮らしをエンジョイしている昭和気質な自由人の印象。そんな平山の生活を”定点観測”することで毎日同じように見えても違う所もあること、ちょっとした出来事によって平山の嗜好や過去が明らかになっていくのは面白い。上映時間が2時間程度なので、テンポも悪くはない

とは言え、平山の過去が全て明らかになる訳ではないし、便所掃除が取り持つ縁が平山を含め人それぞれの生き方があることを浮き彫りにするだけで大きな展開がある訳ではない

それに色々雑なところが目に付く。流石にゴミを素手で拾いはしないと思うし、いくら自転車でも飲酒運転はなあ。普通にアウトだし。昭和気質の平山がハグするのも違和感があるし、外国人が少ないのも違和感が。渋谷も(平山が住む)浅草も外国人だらけでしょ。外国人は観光名所だけでなく、裏通りにも普通にいるしね

ぶっちゃけ役所広司だから成り立っている作品。寡黙な人物の設定で、後半はともかく、前半は殆ど喋らないからなあ。冒頭から全然喋らないから、まさかこのまま一言も発しないのかと思ってしまった。台詞はなくとも存在感を示せる役所広司は本当に素晴らしい

本作はアカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされたが受賞はならず。審査員が好きそうな作品ではあるけど。ただ、今年は『オッペンハイマー』や『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』等、過去の国の政策の過ちに目を向ける作品が多く選ばれていて、国際長編映画賞を受賞した『関心領域』もアウシュビッツを題材にした作品。平山も過去に家族と一悶着あってそれを悔いている様子ではあるが、何があったのかは描かれないし、アウシュビッツに比べたら些細なことだ

 

・パスト ライブス/再会 2.8
韓国映画はそれなりに観るが、殆どがアクションやドキュメンタリーでヒューマンドラマは退屈な作品が多い印象。ラブストーリーは邦画であっても殆ど観ないが、A24ならば尖った作品に期待できるかなと思ったが…

悪くはない。上映時間が示すようにコンパクトにそつなく纏めた印象。劇伴や映像はおしゃれで静かな大人の恋愛って感じ。ただ、初恋の人に会いに行くのも異なる文化の対比についても珍しい話ではないし、本作はシンプルなユニバーサルデザインのような作品でゴージャスなステンドグラスのような作品の多いアカデミー賞とは対極にあると思われるのに何故ノミネートされたのか謎だ。まあ、本作も”多様性”に触れた作品であるし、勢いのあるA24作品だからかね

韓国って儒教文化と欧米文化が対立する形で共存しているところがある。女性が男性より下に見られがちだし、作中でもあるように長男だから云々も未だに残っている。日本でもとうの昔に廃止された筈の家制度の影響で同じような考えの人はいるだろうが、少なくとも大都市圏では長男だからは通用しないでしょ。家督制度がないのに義務だけは果たせとか時代錯誤も甚だしいわな

反面、韓国人は上昇志向が強い。変われない国だからなのか海外移住に抵抗がないし、ビジネスの為なら外国語の学習も厭わない。韓国に限らず台湾も欧米風のビジネスネームを使う人が多いし、転職は当たり前、キャリアアップを実現するためには”踏み台”にしたところでどうこう言われない筈。一方、日本では外国人選手はともかく日本人選手が入団会見で「日本のプロ野球MLB移籍の通過点だと考えている」などと発言しようものなら大炎上でしょ

本作を観る人の大半は恋愛映画が好きな人だと思うが、恋愛映画が好きな人は人物への好感度が作品の善し悪しに直結する人が多い印象。韓国に残ったヘソンについてはともかく、海外に移住したノラについては反感を持つ人が殆どだろうから、作品の評価は上がらないし大ヒットは望み薄だろう。最近は浮世離れした作品は少ないとは言え、あまりにドライでサバサバしているのも恋愛映画好きには不満だろうし。役者の演技は悪くないし、あまり恋愛作品を観ない人がたまに観る作品としてはいいかも。ただ、2,000円の価値はないので、せいぜいサービスデー、レンタルや配信待ちでも十分だろう

2024年に視聴した映画短評(その2)

*今年観た映画なので、今年公開の作品とは限らない。5点満点で最低点は0

 

・アリスとテレスのまぼろし工場 2.5
岡田麿里監督による劇場アニメ映画二作目。個人的にはイマイチだったが、前作(『さよならの朝に約束の花をかざろう』)は大衆受けする作品だったのに対し、本作は癖の強さを感じさせる作風で当然のように評価もかなり割れている

アニメ制作は「呪術廻戦」などで知られるMAPPA。呪術廻戦を観ればわかるように同社の技術力は高く、本作でも素晴らしい映像美を堪能できる

劇場アニメと言えば似非声優起用問題だが、本作にも芸能人が起用されている。但し、主要役はプロパー声優が務めているし、芸能人声優が超絶棒演技を披露することはない

岡田作品と言えば肉食系女子だが、本作の女子もかなり積極的。女としての武器を最大限に活かして、他の女(と言うよりメスと言うべきか)とのオスの奪い合いを制する生々しさが描かれているが、本作はそれに加えてフェティシズム的な描写もあってより性的な意味での男と女を意識させる

ただ、正直ストーリーはかなり薄い。そのせいもあってかなりテンポが悪く感じる。伏線回収と言うよりはちまちまと情報を小出しにしていると言うのが正しい。タイトルもぶっちゃけ何の意味もない。察しの良い人なら分かるだろうが、アリスとテレスの二人が主人公という訳ではない。一応それらしい言葉は出てくるが、それがストーリーや主人公たちの行動原理に結びついているようには感じられない

本作はかなりメッセージ性を意識していると思われる。主人公たちがいる世界が今の日本(特に地方)、まぼろしがバブルで工場の爆発はバブル崩壊。工場の爆発(バブル崩壊)を契機に権力を手にする佐上は宛ら竹中平蔵ってところか。まあ、本作では現実のバブル崩壊の寸前で時計が止まった設定になっているが、いつまでもバブルを引きずっていていいのかというメッセージに変わりはないだろう

本作の主人公たちは中学生なので若者たちの手でバブルに終止符を打って新しい未来を築いて行こうって感じなんだろうが、その肝心の未来を築くつまり元の世界に戻るために何をすべきかには殆ど触れていないので何となく戻っちゃった感じ。岡田が脚本が務めた『泣きたい私は猫をかぶる』でも終盤の冒険譚はイマイチ(多分、本人の脚本じゃない)なように冒険譚は苦手なんだろうな。だからストーリーに引き込まれない

前作でも岡田らしい”女”の描写はあったのだが、ストーリーを詰め込みすぎたこともあって場面場面はそんなに長くなかったので”生臭さ”が抑えられて家族愛というテーマが感じられたのだが、本作では内容が薄いぶん一場面がかなり長くて”生臭さ”が口一杯に広がる感じ。そのせいもあって家族愛はどこかに行ったように思える。足して2で割ったら良いバランスになりそうだが

もっと宣伝をしていればって声もあるが、とてもではないが万人にオススメできる作品ではないので低評価が増えるだけになっただろう。最近はキャラへの好感度が作品の評価に直結する人が多いが、そういう人たちにも本作は向いていないと思うし。(岡田信者が集う)ディナーショーで出されるブルーチーズのような作品だろう

 

金の国 水の国 2.7
岩本ナオの同名コミックをアニメ映画化。2017年の「このマンガがすごい!」オンナ版で1位になった作品らしいが、果たして如何なものか

アニメ制作は日テレ系列のマッドハウス鬼滅の刃や呪術廻戦のような圧倒的な作画ではないが、本作の世界観に合った作画で及第点だろう。アクションシーンが売りの作品ではないしね

本作の最大の特徴はヒロインの容姿だろう。男の方もパッとしないが、アルハミドの王女サーラはぽっちゃりと言うよりは(100kg級の)肥満体型。男のデブキャラは珍しくないが、女はあまり多くない印象。ポリコレ的な考えではないだろうが、別にヒーローやヒロインは容姿端麗でなければいけない訳じゃない

正直、ストーリー的にはさほど見どころがない。ご都合主義が目立つし。ただ、作画を含めてお伽噺的な世界観なので、お伽噺と考えればこんなものでしょって感じ。もう少し掘り下げてもって思うが、原作も全1巻だから深く言及されていないのだろうし、ダラダラしてテンポが悪いよりはこの位のテンポの方がアニメ映画としてもお伽噺としても良いのだろう

他に気になったのはコメディ要素が過多なこと。原作もこうなのかね。政治的な話もあるが、全体的にあっさりとした描写でそこまで生々しさを感じるようなことはないし、稚拙な演技もあって話の腰を折っているように思う

本作には例によって似非声優が起用されているが、ナランバヤル役の賀来賢人については序盤こそややぎこちない感もあるが、すぐに掴んだのか全体的には適度にメリハリの効いたいい演技だったと思うので特に言うことはない

問題はサーラ役の浜辺美波で、『HELLO WORLD』では只管ローテンションで押し切った感じだったが本作ではそうはいかず。普通のテンションでの台詞はいいとして、コメディやラブシーンになると思わず「あちゃー」と言いたくなる。本作は少女漫画的なテイストも強いが、肝心のラブシーンでこの演技ではねえ…

お伽噺的な世界観なので子供と観るにはいい作品かも知れないが、容姿イジリが厳しいのは気になる。キレるのではなくウィットに富んだ切り返しをするのは欧米では受けそうだが、日本ではね。某声優が某牛丼屋の発言を茶化したら炎上するような”文化”だからねえ

原作ではA国、B国だったのをアルハミドとバイカリに変えたのは良かったと思うが、安っぽい煽りの予告編は勿論、キャスティングや内容をもっと精査すべきだっただろう。『グッバイ、ドン・グリーズ!』といい最近のマッドハウス作品はブラッシュアップ不足が目立つ

 

・大雪海のカイナ ほしのけんじゃ 0.3
2023年の冬アニメとして放送された大雪海のカイナの続編。フジテレビ得意の”劇場版商法”だが、TVシリーズの出来が悪ければヒットは見込めないこと位分からんのかね

アニメ制作はTV版と同じポリゴン・ピクチュアズ。この会社は竪穴とか要塞みたいな階層構造や(荒涼とした)大地を描くのは得意みたいだが、雪とか水の描写は明らかに見劣りがする。本作はタイトル通り大雪海が舞台だけに作画の良さが伝わらない

ストーリーは本作のみならこんなものかなとも思うが、TVシリーズからだとあまりに薄いと言うかカタルシスがない。プラナトでの話がメインになるのは分かるが、TVシリーズのペースなら大海溝を越えて大軌道樹に辿り着くまでに6話位使ってもおかしくないからなあ。あっさりし過ぎだと思う

それと”天空の城ナウシカ”は何とかならんかったのかね。本作のポストアポカリプスっぽい世界観が感じられるのはTVシリーズの序盤のみなので、それがなくなるとジェネリックジブリ感が半端ない。今は作品の数が多いので少々似ている程度なら仕方がないが、本作の場合変える気がないとしか思えない

だって中盤で「こりゃバルス待ったなし」って思ったらその通りだし。選民思想で選ばれる側がビョウザンとリリハじゃねえ…。ビョウザンがムスカ、リリハがシータ、カイナがパズーにしか見えない。せめて三者の立ち位置を本家とは変える位はすべきでしょ

あとSF的見地がゼロなのもねえ。選民思想を抜きにすればビョウザンのしようとしていたことは間違いではない訳で、それを科学的根拠で裏付けてビョウザンを説得して選民抜きの方法で実現できれば、ラピュタもどきなストーリーにはならなかったと思うのだが

弐瓶勉が劣化したのかフジテレビの横槍が入ったからなのかは分からないが、正直あまりの駄作に失望を禁じ得ない。「BLAME!」は面白かったんだけどね。今作だけで見限るようなことはしないが、次回作がハズレなら完全に見限るだろう

 

・ウィッシュ 1.3
ディズニーの創立100周年記念作品。ディズニーに限らず、何周年記念作品ってハズレの予感しかしないのは気のせいか。アメリカではかなり不評だったようだが、実際のところどうなのか観てみることにした。ただ、世間の評価が高くても個人的にはハズレなのは良くあることだが、逆は殆どないんだよなあ…

本作の感想を一言で言えば”パッとしない”。画は地味だし、ストーリーは良く分からないし、ヴィランであるマグニフィコ王も国王が国のためになる願いを優先して叶えること自体は当然とも思えるし、一体どういう作品を作りたいんですかって感じ。最近のディズニー作品は良くも悪くもメッセージ性が強いが、本作では何を伝えたいのかも良く分からない

個人的な解釈はマグニフィコ王は現在のディズニーの幹部、スターは文字通りのスター。マグニフィコ王が国のためになる願い(ポリコレ)を優先することに不満を持つ輩が増えると、王は禁断の書(Woke)を開き人々を洗脳しようとし(従来の)スターを封印する。しかし、人々の声(歌声)が封印を解き、ロサス王国(ディズニー)はあるべき姿へ向かおうとする

そう考えるとCGによる手書き風の画や作品の最後に流れる往年の名曲は原点回帰ってことだろうか。昔に拘り過ぎるのも問題ではあるが、今のディズニーはメッセージ性(ポリコレ)に囚われ過ぎて肝心の作品自体の出来に関しては二の次なのが現実。メッセージなんて添え物。作品の出来が良ければ人々の心を打つ訳で、そういった点では原点回帰は必要なのかも知れない

 

・THE FIRST SLAM DUNK 2.0
そもそも期待していなかったので映画館では観なかったが、想像以上につまらなかった。おじさんなので流石にSLAM DUNKを知らないことはないが、漫画もTVアニメも見ていないし思い入れは全く無い

本作で唯一褒められるところは作画の素晴らしさ。モーションキャプチャを駆使してヌルヌル動くCG自体は珍しくないし、最近は手描きっぽいCG作品も出てきているが、両者が高い次元で融合している。漫画もTVアニメも平成初期の作品だしね。もろCGでは作品の世界観を損ねると思うので、作画にはかなり拘ったのだろう

公開直前の声優交代発表は物議を醸したが、TVアニメ版を知らないこともありあまり違和感はなかった。ただ安西先生はねえ…。某ドラマの山下真司のような”熱血漢”ではないにせよ、何年か前までは鬼コーチと恐れられた人物なんでしょ。あまりに去勢されすぎて隠居老人って感じ

あとバスケットボールのルールが今と違うので違和感があったけど、これは仕方ないかな。今のルールに合わせて改変するのは地味に大変そうだし、原作ファンが怒り出しそうだしでやる価値はないだろう

で問題の中身だが、誰に向けて作った作品なんだろうと思った。基本的にはSLAM DUNKのファン向けだろうが、SLAM DUNK知名度はかなり高く、筆者のように漫画もアニメも見ていない人、できれば若い人たちにも観て欲しいと思っていただろう

TVアニメ化されていないらしい”あの試合”を映画化したのは予想通りだが、おまけがねえ。チマチマ挟まる回想が試合の流れをぶった切る上に内容が陳腐。ぶっちゃけこいつらDQN集団じゃん。DQNの泣かせる話とか全く興味がない

それに何故宮城(リョータ)。せめて桜木(花道)じゃないの。まあ、桜木の”紙芝居”もあるけどw。ガチ勢の分析によれば宮城をフィーチャーしたのは原作での宮城の扱いが小さいからだろうとのことだが、これでガチ勢は満足なのかね。試合もエピソードもどちらも中途半端。映画の尺では全員は扱えないし試合は予定調和に決まっているから、少しでも宮城に感情移入することでファン以外の人も感動できるようにってことなのか。この程度のエピソードで感情移入できるとはとても思えないけど

誰かをフィーチャーは必要なかったと思う。ファン以外向けにメインメンバー5人の簡単なエピソード集を試合の合間に挟んで、顔と名前とキャラ(と背番号)が一致するように配慮すべきだったのでは。試合終盤の紙芝居で桜木が晴子目当てで(高校から)バスケを始めたことが示唆されているが、「桜木は初心者」っていきなり言われたって分からないでしょ

正直(映画基準で)並の作画なら1点だが、作画に免じて2点にする

2024年に視聴した映画短評(その1)

*今年観た映画なので、今年公開の作品とは限らない。5点満点で最低点は0

 

・VESPER ヴェスパー 1.0
フランス・リトアニア・ベルギー合作のSFダークファンタジーらしいが、本作にSFを期待するだけ無駄。一応それっぽい世界観だが、SF要素の掘り下げは皆無

冒頭にこの世界についての説明があるが、この程度の説明では理解できないし、意味不明な設定も。上映時間は2時間弱なので長くはないが、ダラダラした感じな上に唐突な展開が多いので作品の世界に入り込むのは難しい。ラストもは?って感じだし。終盤慌ただしいのは如何にも次回作の伏線に思えるが、本作の続編を希望する人はいるのかね

B級映画だと思うが、映像はヨーロッパ映画って雰囲気に溢れていて悪くない。望み通りの映像作りだけを考えていてシナリオはお留守だったんだろう。酷評レビューが目立つが、シナリオをもっと吟味していれば(B級映画の)SF作品としてそれなりに評価されそうなポテンシャルはありそうなので残念だ

 

・哀れなるものたち 3.8
原作は1992年に発表されたスコットランドの作家アラスター・グレイの同名小説。何故今更映画化って思ってしまうし、しかも最近何かと問題の多いディズニー映画。その上アカデミー作品賞ノミネート。去年、作品賞にノミネートされた作品は個人的には全てハズレだっただけに嫌な予感しかしないが…

粗筋は自害したもののマッドサイエンティストの気まぐれによって自らの胎児の脳を移植されて蘇生したベラ。胎児の脳だけに体は大人だが行動は幼児そのもの。ただ脳の成長と共に自我が生まれ、ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。旅の途中で色々な場所に行き人と触れ合う中で教養や立ち居振る舞いを身につけていく

とにかくディズニー映画らしからぬエログロでR18+は伊達じゃない。手術シーンはそれなりにグロいが、R18+たる要因はセックスシーンだろう。”熱烈ジャンプ”だけでなく様々な体位でやりまくりで、エマ・ストーンの日本人サイズのバストとヘアをバッチリ拝める

とは言え流石に多すぎる。セックスだけでなくオナニーシーンもあるからねえ。精神的に子供でも体が大人であれば性欲が生じるのは当然だが、相手がいなければ”熱烈ジャンプ”に興じることはできないし。最初は猿のように”熱烈ジャンプ”を欲していたベラも徐々にセックスに感情が伴うようになり、それ故にダンカンと反りが合わなくなっていく等セックスシーンの持つ意味は大きいのだけど

それと男性目線だと男性が悪者にされるのはちょっとね。まあ、全ての男性が悪く描かれている訳では無いし、立場の強い人間が立場の弱い人間を物のように所有したがるのを皮肉っているのだと思うので、原作を考えれば立場が上の人間=男性でも仕方がないのかなとも思うが

最後に上映時間が長すぎる。セックスシーンもだが旅に出るまでも長いので、この辺を切り詰めるなどして2時間以内に収めて欲しかった

お小言はこれ位にして、本作が評価される大きな要因が映像美だろう。モノクロとカラーのコントラストもさることながら、撮影方法やライティング、衣装や小道具も素晴らしくて幻想の世界にいるよう。このリアリティの無さが本作の過激さを上手く中和しているように思える

あとはエマ・ストーンの演技。幼児(というより獣か)から大人の女性までかなり振れ幅が大きい役だが見事に演じきった。納得の主演女優賞だろう。ダンカン役のマーク・ラファロも如何にもクズ男って感じで嵌っていた

ヨーロッパ映画というと難解でストーリーが良くわからないものが多い印象を持つ人が多いだろうが、本作は解釈は人次第とは言え、ストーリー自体は明快だし、オチを含めて皮肉が効いたヨーロッパ映画らしいコメディ作品だと思う。ただ、エログロ(特にエロ)が苦手な人、ベラもそこまで共感を集めるキャラではないと思うのでキャラへの好感度が作品の評価に直結する人にはオススメできない

 

犯罪都市 NO WAY OUT 3.5
マ・ドンソク演じる刑事マ・ソクトが刑事らしからぬ大暴れを見せる犯罪都市シリーズの三作目。前作から7年経ち、衿川警察の強力班からソウル広域捜査隊に異動した設定になっている

前作よりストーリーは刑事モノっぽい。青木崇高國村隼が出演していることもあり日本刀を用いたアクションもあってアクションシーンが増えている。兄貴は相変わらず強いのだが、今回は結構やられる。しかし尋常ではない回復力。ハリウッド作品にも出演しているマブリーだが、是非ジェイソン・ステイサムと対戦して欲しいものだw

反面、コメディ要素が減ってメリハリがやや足りない感じ。前作でいい味を出していた班長や情報屋の出番が少ないのは寂しい。とは言え、お約束の”真実の部屋”は本作でも健在だ

今後もシリーズは続くようなのでお約束だけではマンネリになるのは理解できるし、何だかんだで水準以上の面白さはあるので今後に期待したい

 

・ARGYLLE アーガイル 1.8
キングスマン』シリーズで知られるマシュー・ヴォーン監督作品。本作も『キングスマン』シリーズ同様スパイアクションもの

感想を一言で言うと”くどい”。演出も台詞回しもストーリーも。二転三転どころか何転しているか分からないが、頻繁に敵と味方が入れ替わるからといって面白さに繋がるものではない。取ってつけたような話になって、どうせまだまだ入れ替わるんでしょって思ってしまうので敵でも味方でもどうでもいいって思ってしまう

ではアクションシーンはと言えば正直ショボい。アクションではなく(体を張った)コントだと思うべきだろう。サモ・ハン・キンポーみたいにコメディとアクションを両立して欲しいが、それが無理ならもっとコメディに振るべきだったと思う。まあ、ドリフターズとか吉本新喜劇とか”お約束”な笑いが好きな人なら楽しめるのかも

続編が作られるようだが、正直この出来では期待薄だろう

 

オッペンハイマー 1.5
クリストファー・ノーランと言えば『メメント』『インセプション』『TENET テネット』等SF映画のイメージが強いが、『ダンケルク』等SF以外の作品も作っている。『ダンケルク』が戦争映画だっただけに本作もって思ってしまうが、”原爆の父”と呼ばれた科学者オッペンハイマーの人物像に焦点を当てた作品であって戦争映画に期待するなら見るだけ無駄だろう

極力CGは使わないノーランらしい映像作りは健在。カラーとモノクロの混在、時間軸操作もノーランらしいが、頻度が高すぎて作品に集中できない。態と話を追いにくくして内容の薄さを誤魔化しているようにしか思えない

オッペンハイマーの科学者以外の顔を知ることができるのが本作のウリだろうが、アメリカ人にとっては特別な人でも日本人にとってはそうでもないだろう。名前すら知らない人が多いのでは。それに本作を見た後のオッペンハイマーの印象は”赤い種馬”。本作がR15+なのもヤッてるシーンがあるからだろう

とにかく3時間は長すぎる。前半は本当に退屈で寝不足なら熟睡できること請け合い。後半も日本人目線からすれば原爆が投下され甚大な被害が出たことに変わりはない。まあ、アメリカ人目線からすれば「原爆投下は戦争終結に不可欠だった」という定説に疑いを持つような作品が作られること自体がセンセーショナルかも知れないが

日本での上映がかなり遅れたが、バーベンハイマー騒動に関係なくこの内容では日本人の心には響かないと思う。ノーラン信者と映画関係者は称賛するだろうけど、もう提灯記事じゃ動員は見込めないし無駄な努力は止めとけって。3時間だしTV放映は期待できないが、レンタルや配信で十分だと思う

しかし、「オッペンハイマーは原爆投下を知らなかったからそのシーンは描かなかった」は詭弁だわな。素直に「そんなシーンを描いたらアメリカのネトウヨに目の敵にされて今後ハリウッドで映画を撮ることはできなくなる」って言えばいいんじゃないの。そういう意味ではスピルバーグ監督で見たかった題材。監督引退記念作品ならネトウヨなりパヨクなりに疎まれようが関係ないしね

2023年に視聴した映画短評(その11)

*今年観た映画なので、今年公開の作品とは限らない。5点満点で最低点は0

 

・SAND LAND 3.8
ドラゴンボール』や『Dr.スランプ』で知られる鳥山明の2000年に発表された同名短編漫画をアニメ化

作画は最近のアニメ作品に比べると正直見劣りする。ただ、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』のような作画が本作に合うかと言えば話は別で、世界観を保ちつつ今風になっている感じ

短編ということもあり、そこまで話に広がりがあるわけじゃない。勿論、ツッコミ所も多い。しかし、種族や世代が違う3者が友情を深め目的を達成するのは当に(ジャンプ的)少年漫画って感じだし、ある意味今話題の多様性にも配慮している

別に鳥山明が多様性を考慮して作ったわけじゃないだろうが、マッチポンプなストーリーも今の社会を揶揄していると言える。『マイ・エレメント』が受け入れられているのも、露骨ではなく比喩的なやんわりとした主張だからだろう。昨今のポリコレはストーリー抜きで強引に自分たちの主張をするだけだからねえ

まあ、主張云々はそういう見方をしなければそう思わないだろうし、ベルゼブブのタフさは◯◯◯◯◯◯◯人かよって突っ込みたくなる位、昭和から平成初期にかけての鳥山明ワールド全開って感じなので、おじさんは楽しめるだろうが若い人にはノリが古臭く感じるかも。映画評論家は『バービー』のゴリ押しに必死だが、おじさんにはこっちの方がいいと思うなあ

 

・マイ・エレメント 2.0
ディズニー傘下のピクサーによるアニメ作品。最近のディズニーはポリコレ色が強い作品が殆どだが、実写のみならずアニメもポリコレ汚染が進むのか不安になる

本作を一言で言えば「ディズニー版(えんとつ町の)プペル」。勿論、話は違うが、ファンタジックでキレイな映像とメッセージ性の強さはプペルを彷彿とさせる

ストーリーは正直物足りない。展開に乏しく、謎も残ったままだし、(この展開の遅さなら)ここで終わりだなって分かってしまうし。本作に限らずピクサーはメッセージ性が強い作風で、ダイレクトに黒人万歳ではなくエレメンタル=人種という柔らかい表現で普遍的なメッセージを込めるのは良いと思うが、(プペルもそうだが)メッセージを伝える為だけの作品って印象しか残らないのは残念

それと邦題の『マイ・エレメント』は如何なものか。エレメント=元素って訳しているけど、この作品で扱っているのは四大元素(火・水・土・風)に由来する四大精霊でしょ。エレメントにも四大元素って意味はあるけど、一般に元素って言えば水素とか酸素とかを想像する筈。原題は『Elemental』なんだし、せめて『マイ・エレメンタル』にして欲しかった。と言うか、普通に『エレメンタル』で良かったと思うけどね

もう一つ、当方は字幕版を視聴したが吹替版はどうなのかね。予告編を見る限り、川口春奈の演技がやばそうな上に声もキャラに合っているとは言い難い感じ。字幕版の声優はハスキーボイスだからねえ

正直、大人が見る映画としては物足りないと思うが、家族向けの作品としては悪くないと思う。ただ、マリオみたいに頭を空っぽにして見る作品ではないので子供に受けるかは疑問だが。本国とはウラハラに日本でもそこそこヒットしているが、映像以外のセールスポイントはないのでメガヒットは望めないだろう

 

バイオハザード:デスアイランド 1.5
カプコンの大ヒットゲーム「バイオハザード」シリーズをモチーフにしたアニメ映画。ゲームのアニメ化や実写版のリメイクではなく、スピンオフ作品。前作(「バイオハザード: ヴェンデッタ」)の1年後のエピソードを描いているらしいが、当方はゲームはプレーしていないし、映画も殆ど観ていないので詳しいことは分からない

まず作画だが、流石の最新技術で実写と見分けがつかないと言いたいところだがそこまでではない。今の技術の限界なのか動きがぎこちない所が見受けられる。最新のゲームエンジンであるUnreal Engine 5(UE5)もかなりの映像レベルに達しているので、この程度では驚嘆には値しない

ストーリーの前に気になったのはキャラ構成。メインキャラ5人の内、男性2人、女性3人なのはいいとして、全員白人なのは大丈夫と思った。スピンオフだから自由にできる筈だし、アメリカで公開したらポリコレで叩かれるんじゃないのって思ったら、本作のウリは歴代の主人公が揃うことなのか

ただストーリーは正直低レベル。歴代キャラ勢ぞろいの”同窓会”映画はアメコミ系など最近の作品に多いが、どれも大味な感じ。全員に活躍の機会を与えることが最優先になって、ストーリーはマッチポンプで雑になりがち。本作も何で単独行動から始まり、ツッコミ所には事欠かない

スピンオフで独立した話ではあるが、前作やゲームとの関連性がある要素が多いと思われるので初見勢が楽しめるかは微妙。この手の作品が好きで映像に何点つけられるかだろう。基本的にはバイオガチ勢かつオールスター映画が好きな人向けの作品だと思う

 

・バービー 0.5
何故か見る機会があったので、率直な感想を。バーベンハイマー騒動を始め、某漫画家のツイートが炎上するなど”場外戦”は盛り上がっているが、肝心の映画の中身は…

本作を語る上でポリコレやフェミニズムの話は切っても切れないと思うが、正直それほどでもないと思った。一部の人が言う反フェミニズム映画とも思わないし。主張は薄めと言うか何が主張なのか良く分からん

本作はブラックジョーク多めのコメディ作品として捉えるべきなのかと思う。去年のアカデミー作品賞にノミネートされた『ドント・ルック・アップ』みたいな感じ

ただ、『ドント・ルック・アップ』は個人的には大変面白かったのだが、本作は…。理由はネタが分からんから。『ドント~』は明らかにトランプやマスコミを揶揄しているのが分かるのだが、本作は何を揶揄しているのか分からんのよね

バービーは長い間販売されているので、数々の”黒歴史”があってそれを揶揄しているであろうことは分かるのだが、その失敗作自体を知らないとだから?って感じ。例えば、「大失敗した」と言われて「どの位」と返したら「ピピンアットマーク位」と返されたようなもの。ゲームに詳しい人なら笑えるネタだと思うが、多くの人はピピンアットマークを知らないだろうから反応しようがないだろう

別の例えをするなら、コ◯◯◯◯や東◯◯◯◯◯の動画を強制的に視聴させられている感じ。別に彼らのファンにどうこう言うつもりはないが、彼らの動画は内輪ノリの極致みたいなものでしょ。ファンにとっては面白くても、ファン以外が観たら全く面白くない訳で

一応、本作はバービーネタ以外も仕込まれていて、冒頭部分は「ツァラトゥストラはかく語りき」が印象的なあの作品のパロディであることは分かるだろうし、他にも映画ネタは仕込まれているが、それで映画ファンが満足できるかといえばそうではないだろう

正直誰におすすめと言い難い作品。フェミニズム映画としては弱いし、バービーに思い入れがあるという点では女性向けではあるのだろうが、女性でも不愉快に感じる人は多そう。日本では「批判しちゃいけない病」が流行しているように、ブラックジョーク=不謹慎と思う人が多いから。強いて言うならブラックジョーク好きでバービーにも詳しい人向けになるが、そんな人日本にどれだけいるのかね

P.S. マスゴミと言うか三流映画ライター共に猛省を促したい。いい加減、提灯記事は止めろ。こんな作品、日本で受けるわけないのは分かっているだろう。最近、アメリカを始め他の国でもセールス好調だった作品が日本でコケるケースが目立つが、その要因の一つが提灯記事だろう。”失敗体験”が刷り込まれているから、煽り=危険って察知してしまうんだよね。万人受けしそうな作品だって受け付けない人はいるが、明らかに賛否が分かれそうな作品(最近だと『エブエブ』とか)をゴリ押しするのはいい加減止めた方がいい。アカデミー賞とか全米興行収入No.1とか見る人には全く関係ない話だ

 

MEG ザ・モンスターズ2 1.0
2018年の映画『MEG ザ・モンスター』の続編。本作を視聴する前に前作を観たのだが、ぶっちゃけ前作の方が良かった

本作で進化したのは映像面。前作から5年経っていることもあり、CGも進化しているので迫力が増している。ただ、CGの進化に対して模型(?)がショボいからバランスが悪く感じる

前作は当に「内容は無いよう」で「そうはならんやろ」と突っ込まずににはいられない位人が海に投げ出され、そこに迫るメガロドン(サメ)。さながら吉本新喜劇のような”お約束”だが、人間vsメガロドン、そしてジェイソン・ステイサムの強さが伝わってきて傑作とは言わないものの、それなりに楽しめる作品だったと思う

それに対して本作は色々詰め込みすぎ。前半の海底探検はとにかく退屈。原題は『Meg 2: The Trench(海溝)』なのでタイトルに偽りなしではあるのだが、画面は暗いは話は良く分からんわで寝不足なら寝るだろうな

サメだけじゃ飽き足らないのかタコとかイグアナ(?)が追加されたり、新たな勢力が登場して話を膨らませようとしているのは分かるのだが、脚本が穴だらけなのは前作同様だし、全てをぶん投げて終わっているからねえ。肝心のサメ狩りも良く言えばスタイリッシュ、悪く言えばあっけなさ過ぎる。しかも、他の話の方がメインでサメ退治はおまけって感じ

恐らく次回作を作る気なのだろうが、正直このクオリティではねえ。ステイサムの熱狂的ファン以外は観る価値はなさそう

2023年に視聴した映画短評(その10)

*今年観た映画なので、今年公開の作品とは限らない。5点満点で最低点は0

 

・65/シックスティ・ファイブ 0.0
ゴミ。以上で片付けたくなる位、清々しいまでの駄作。本作では監督ではないが、サム・ライミも最早駄作請負人って感じだな。当にアメリカの清水崇。2人が共同監督を務めたらどんな特級呪物が生み出されるのか興味深い

本作を一言で言えば「ジュラシック・パークの粗悪なパチもん」。当然、内容は無いよう。本作はSFサバイバルスリラーらしいのだが、当然のように突っ込み所しかない。まあ、本作に本格SFなんて期待してないけど

とは言え、少しは設定を活かせなかったものかね。6500万年前と言えば巨大隕石の衝突によって恐竜が絶滅したとされているが、ストーリー的には恐竜さえいればそれでいいって感じだし

それに言葉が通じない設定もなあ。ご都合主義の塊なのに無駄な所でリアリティに拘るとか。こんな状況でも通信できる高性能デバイスなら翻訳くらいできそうなものだが。(言葉が通じない)ミルズとコアが少しずつ理解を深めていく感動ストーリーにしたいのだろうが、この完成度じゃねえ

本作の唯一の見せ場はエンドロール。CASTのあまりの短さに衝撃を受けること間違いなし。そりゃ偶に妻と娘の回想が挟まる程度で、ミルズとコアしか出てこないんだから当然といえば当然だが

一応SFも絡んだごった煮って感じなので、「エブエブ」が好きな人ならこういう作品も受け入れられるのかも

 

・リバー、流れないでよ 2.7
ヨーロッパ企画長編映画第2弾。貴船とあるように舞台は京都。本作は所謂タイムループものだが、普通のタイムループものとは違う点が2つある

1つ目は皆、記憶を保持している点。タイムループが起こった時点でその間の記憶がなくなるのが普通で、それ故にまずタイムループが起こっていることに気づきにくいし、人にどう伝えるかが難しい。それを会社という組織に当てはめたのが、去年公開された「MONDAYS~」だろう

2つ目はインターバルが極端に短いこと。1日とか1週間とかが普通だと思うが、本作はまさかの2分

本作はこの2つの特徴を上手く活かしていて、移動の連続でへとへとになったり、続きをタイムループ後にしたり、2分で元に戻るならと遊んでみたり…。舞台っぽい大袈裟な演技もコメディには合っている

ただ、完成度の高いシナリオかと言われると…。まず、終盤に来ての恋愛要素はなあ。恋愛要素と言うよりは恋愛要素でタイムループを消費することが最悪と言うべきか。タイムループの連続に飽きている所に解決には関係ない要素に時間を割くのはセンスが無さ過ぎる

あと、オチもねえ。オチ自体もさることながら、オチへの伏線が弱い。何だかなあって感想になってしまう

途中までは面白いので、全体を通しては普通ってところか。2,000円だして観る作品とは思えないが、サービスデーにあまり期待せずに気楽に観るならいいかも

 

・断捨離パラダイス 3.9
タイトルから想像がつくだろうが、ゴミ屋敷を掃除する清掃業者の話。原因不明の手の震えによりピアニストを諦めた主人公と同僚や顧客が織りなす人間ドラマをユーモアを交えて描いた作品

構成としてはオムニバスではあるもののそれぞれの話が繋がっていて、当に「縁は異なもの味なもの」と思わせる脚本が秀逸

ただ、もう少し主人公の成長を描いて欲しかった。ピアニストを諦めるかどうかの葛藤もそうだし、最初はお荷物だったのがいつの間にか戦力になっているし。まあ、それをきちんと描くと映画として冗長になる気もするが

あと、最後のサプライズはいいと思うが、その前は…。ああいう無難なシーンじゃなくて、その前の会話のシーンで終わりの方がインパクトがあったと思う

出来れば映画館でと言いたい所だが、元々上映している映画館が少ないので本レビューを公開する頃には0になっているかも。それと続編が作れそうなので期待したい。プライムタイムにゴミ屋敷は厳しいだろうし、本作のユーモアはおこちゃまには受け入れられないだろうからTVなら深夜ドラマかな

 

・憧れを超えた侍たち 世界一への記録 3.0
劇場公開された作品だが、間もなくアマプラでも視聴可能になったように、本作はアマプラ向けに作られた作品だろう。劇場公開メインだとどうしても大衆受けする内容になってしまうのは仕方ないが、配信向けならもっとディープな内容にしてくれと思う

選手選考や宮崎合宿等本戦が始まる以前の話や、ベンチ裏の様子など本作ならではの要素はあるが物足りない。選手も平等に扱われているとは言い難いし。控え選手を手厚くとは言わないが、メジャーリーガー+村上メインだとやっぱりねとしか言いようがない

選手選考は揉めたらしいが、どういう意図でこの選手達を選んだのか。スタメンを含め選手起用の意図は。また控えに回った選手達の本音は。特に源田が骨折したのにも関わらず、結局源田で行くことになった時の中野の気持ちに迫って欲しかった

あと褒めるほどではないが、山川が出てきたのは良かった。控え選手なので出番は殆どないけど。山川の行為自体は許されることではないが、正真正銘侍ジャパンに選ばれた選手なんだし存在自体を抹消するのは明らかにやり過ぎ。だったら坂本はどうなるんだって話にもなるしね

アマプラ会員が本作を観てWBCの思い出に浸るには悪くないと思うが、ディープな野球ファンが本作を視聴する目的でアマプラ会員になる程の作品ではない。某オリンピックの記録映画みたいにSIDE-AとSIDE-Bに分けて、ライト層向けとコアなファン向けにしてくれれば良かったと思う

 

・リトル・マーメイド 1.0
知らない人はいないであろうアンデルセン童話『人魚姫』。これを原題とした作品は沢山あるが、1989年に公開されたアニメ映画『リトル・マーメイド』の実写映画版が本作

本作を視聴する前にアニメ映画版を視聴(IIは未視聴)したが、正直観なければ良かった。アニメ映画版も傑作とは思わなかったが、本作に比べれば雲泥の差。観た直後だと本作のダメな所が目につく

最初に映像面。確かに綺麗ではある。折角実写映画化したんだし、アニメとは違う映像体験を提供したいのは分かる。ただ、これがリアルで迫力のある映像かと言われるとね。実写とCGのコンビネーションによる美しい映像は『ピノキオ』でも味わったし。すごい映像を見せたいならノーランみたいにCGは使わない位はやってくれないと

それに『人魚姫』は『ピノキオ』よりファンタジー色が強いと思うし。リアリティを追求しても嘘くさくなるし、世界観にマッチしていないと思う

あとアースラを倒すシーンはなあ…。これがリアルに拘った結果なのか。ショボすぎる

次に脚本だが、まず上映時間。アニメ版では83分だったのが、実写版では135分に。正直、長すぎる。勿論、本作は原作に対してもアニメ版に対しても改変されているが、ここまで伸ばす必要があるとは思えない

改変点はかなり多くて、アリエルの姉妹たちの名前とか意味不明なものも多い。全てを網羅しきれないし、してもしょうがない

本作の上映時間が伸びた最大の要因は人間vs人魚(海の生物)の図式をより明確にしたこと。アリエルの姉妹たちがそれぞれの海を治めているように変更される等、これに関わる描写が増えたことで30分は伸びた感じ

ただ、人間と人魚が和解するエンドは悪くはないもののストーリー的には説得力に欠けるし、ここまで上映時間を伸ばしてまでとは思わない。アースラを人間と人魚の共闘で苦戦の末に倒したなら説得力が違っただろうが。先にも述べたが、アースラ討伐が映像的にもストーリー的にも呆気ないのはねえ

最後にキャストだが、当然アリエル役には触れることになる。実写化=コスプレショーではないので黒人でも構わないと思うが、黒人にした意味がないと言うか弊害が目立つ

率直に言って”輝いていない”んだよねえ…。地味。しきたりに拘らずに人間界に飛び込んでくるようなキャラなんだし、人間界のマナーなんて知らなくて当然なんだから、もっとお転婆でいいのに。アニメのアリエルはそうだったでしょ

結局、黒人=学がないというステレオタイプに繋がるようなことはしたくないからでしょ。だったら、白人のままでいい。視聴者が求めているのはアリエルらしさであって、白人か黒人かは関係ない

輝いていないのはエリック王子もそうで、なんか影が薄い。実の子ではないという設定のせいなのか。上述のように対アースラ戦もショボいしね

唯一輝いていたのはアースラ。当に悪女って感じで貫禄十分。トリトン王も頼りない感じだったし、アースラの為の映画だった

かなり長くなったが、一言で言って「原作に対する理解が足りない」。ファンタジーにリアリティを追求して面白くなる訳無いでしょ。映画としてのデキが悪いから”ポリコレ汚染”と感じる人が多くなる。レビュー操作をする位なら批判を謙虚に受け止めろって

2023年に視聴した映画短評(その9)

*今年観た映画なので、今年公開の作品とは限らない。5点満点で最低点は0

 

聖闘士星矢 The Beginning 1.2
風魔の小次郎』『リングにかけろ』等の作品で知られる車田正美の人気漫画の実写映画版。人気作品なだけにアニメ、ゲーム、舞台など様々な展開がなされているが、当方は原作を含めいずれも観たりしたことはないので、大まかな話しか知らないし、聖闘士星矢に思い入れもない

原題は「Knights of the Zodiac」。聖闘士星矢は1986年にTVアニメ化されて以降、アニメ映画やOVA化されているが、本作は2019年にNetflixで公開された「聖闘士星矢: Knights of the Zodiac」をベースにしていると思われる

ストーリーだが点数が示すようにはっきり言ってクソ。今季ワースト級ではないが、余裕で寝れる。とにかくテンポが悪い。煮えきらない主人公と夫婦喧嘩を長々と見せられてもねえ…。少年漫画の実写化に求めるのはこれじゃないって。(少年漫画とは関係ないが)『RRR』を見習ってくれ

こういう脚本になってしまうのは商売のことしか考えていないからだろう。希少な知名度のある原作を打ち出の小槌にしたいのだけは伝わってくる。ポリコレもそうだが、商売に目が眩んで駄作を量産するのが今のハリウッド

映像的には安っぽくはないものの普通ってところか。制作費6,000万ドルはそこまで高額ではないが、どこに金をかけてるのって感じ

聖衣のデザインについて批判が多いようだが、個人的にはGood。検索すると1986年版アニメの聖衣がヒットするが、それよりはマシだと思う。まあ、この辺は「思い出補正」の有無で大きく変わるだろう

あと、本作は新田真剣佑が出演しているが、台詞(英語)もアクションもそつなくこなしている。体もしっかり出来上がっていてやる気が感じられるが、残念ながら脚本が出来あがっていないんだよなあ

タイトルにThe Beginningと付くように次回作を作る意気込みは感じられるが、大赤字必至でジョジョるのは確実だろう。算盤を弾く前に内容を吟味しないとな

 

・THE KILLER 暗殺者 4.2
韓国のクライムアクション作品。コンセプトがしっかりしていて、チャン・ヒョクが演じる伝説の暗殺者ウィガンをスタイリッシュに見せて爽快感のある作品に仕上げたいのが伝わってくる

上映時間は95分と短めだが、徹底的に無駄を削ぎ落とした結果。ストーリー自体はありがちだが、標的が徐々に明らかになるように工夫されていて、組織を根絶やしにするのは痛快。コメディ要素も邪魔にならないし、生意気なユンジが徐々にウィガンになつくようになる等、韓国のエンタメらしい仕上がり

その分、本筋の話がやや雑になっているが、アクションとテンポの良さで帳消しか。あとアクション自体は悪くないが、敵の用心棒の頭があまり強そうではなくて、無駄に引っ張っているなって印象を与えるのは残念

区分がPG12とは言え内容的に家族連れで観るような作品ではないが、大人向けのエンタメとしては最高レベル。ウィガンの過去にも興味があるし、続編製作を希望する

 

・M3GAN ミーガン 3.0
恐ろしいほど一途なお友達AI人形<M3GAN(ミーガン)>が引き起こす制御不能なサイコ・スリラーと紹介されているが、ホラー目的での視聴は止めた方がいい。予想通りのシーンはあるが、残虐シーンは大幅カットされているのでフラストレーションが溜まるだけだろう

本作の魅力は何と言ってもM3GAN。人形xホラーは過去にもあるが、今の時代だとリアリティが違う。ただ、見所であるミーガンダンスを予告編でこれでもかと見せているのはどうなのか。TikTok等でバズっているから、ダンスを見て本作を視聴する人の方が多いって計算なのか

AIの暴走と言えば「2001年宇宙の旅」が思い出されるが、当時とは技術が違い過ぎる。最近だとChatGPTが話題になったが、将棋は勿論囲碁でもプロを凌駕するようになるなんてあり得ないと言われていたからねえ。AIと人間の関わり合い方を真剣に考える時期なのだろう

更にミーガンを開発したジェマは両親を亡くした姪のケイディを引き取った設定だし、ジェマの勤める会社はアジア人の社長が白人をこき使っている。こういう今のアメリカを反映している所も評価されている一因だろうが、社会に無関心な人が多い日本ではプラスにはならないだろう

次回作への繋ぎも無理がないし、全体的に手堅く作られた作品という印象だがストーリーにインパクトがないのは残念な所。ミーガンダンス+ライトホラーで満足できるかどうかだろう

しかし、ミーガンの価格設定はなあ…。この価格で出せるのは(日本同様の)ブラック企業だからなのか。個人的にはM3GANよりブルースの無骨さがいいと思うが、「だからオッサンは」と言われてしまうか

 

・放課後アングラーライフ 3.5
井上かえるのライトノベル「女子高生の放課後アングラーライフ」の実写映画化。白木須椎羅、汐見凪、間詰明里と魚や釣り用語に因んだ名前はフィクションらしいが、極めつけは追川めざし。何でめざし…

釣り映画なので釣りシーンは出てくるが、ガチなのを期待すると裏切られることになるだろう。ガシラ(カサゴ)の煮付けは美味しそうだけど。アングラー女子会の活動自体を鮮明に描くよりは、めざしが活動を通して人との距離感を模索している様子の方がメイン

舞台は不明(原作は兵庫県たつの市、但しロケ地は三浦市と思われる)だが、関西弁で田舎で海に面しているとなると和歌山か兵庫かって感じ。田舎に加えて関西人気質もあるから、人と距離を取って無難には通用しない土地柄。人の領域にずけずけと土足で上がり込んでくるような人が多いのは事実

主演の十味とまるぴはグラビアアイドルとして少年誌等の表紙を飾っていて、大先輩である中山忍西村知美との共演は新旧対決ってところか。挿入歌の「渚のはいから人魚」も懐かしくてGood。後はグラドルが出演しているので水着シーンがあれば目の保養になって良かったのだが

上映時間が83分と短く、雑さが目立ち緻密さに欠ける所はあるが、勢いのあるストーリー展開は城定秀夫らしい。最近はお上品な路線にシフトした感があるが、そういうのは期待していない

 

・プー あくまのくまさん 0.5
期待はしていなかったが、ここまで酷いとは…。酷評レビューが多いが、この作品を観ようとする人は「くまのプーさんを汚すなんて許さない」なんて言わない訳で、それなのに酷評の山なのは単に全てにおいて稚拙だから

まずプーとピグレットがあまりに安っぽい。低予算なのは分かるが、そこには力を入れろよ…。あと、特に最初の方は画面が暗すぎて折角のグロシーンも何が起こっているか分からない。更に暗転を多用し過ぎ。話の薄さをカバーする目的なのだろうけど

ストーリーは例によってツッコミ所しかない。ホラーに緻密なストーリーは求めないにせよ、設定は大事。言葉を話さない、人間らしさを放棄したんだったら、こういう殺し方はしないだろうに。続編ありきだから、プーとクリストファー・ロビンは殺したくないのが見え見えなんだよなあ

当に「なろう系ホラー」とでも呼ぶべきテンプレホラーって感じで、くまのプーさんならではの要素は皆無。プーによる惨殺シーンがどうしても観たい人以外はテリファーの続編を見た方がいいだろう

P.S. 邦題を「あくまのプーさん」にしないのは、レビューに圧力をかけるアメリカン邪ニーズことDズニーへの忖度なんだろうなあ。原作小説の著作権は消滅しても、アニメの方はまだ残っているみたいだしね

映画『かがみの孤城』謎解きまとめ

*原作ではなく映画の話。公式見解ではなく個人的な見解なので事実と異なる可能性があります。あしからず

 

需要があるのかと思うが、備忘録も兼ねて。正直、脚本のデキがイマイチなので、原作既読勢はまだしも未読勢が途中で謎解きに気づけば気づくほどつまらなくなるので、映画視聴後の答え合わせにどうぞ。かなりの親切設計とは言え、全ての謎に(劇中での)答え合わせ前に気づくのにはかなりの集中力が必要。あなたはいくつ分かっただろうか

 

1. 君たちはどこから来たのか(難易度1.0/5)
宮崎駿の新作も吉野源三郎の著書も勿論関係ない。皆、学校に行ってなかったり、オナ中(オナ◯◯中毒にあらず)だったりと(リオン以外の)共通点が徐々になっていく中、マサムネの提案で学校で会おうということになるも誰にも会えず。皆、疑心暗鬼になる中で、マサムネは平行世界説を唱えるもオオカミさまに一蹴されるシーンは覚えているだろう

でも、学校に行って確かめること自体が意味のない行為。スバルはマサムネのゲーム機にカルチャーショックを受けているが、これはスバルは1985年から来ている設定でファミコン(1983年発売)世代だから。マサムネは2013年から来ているので、所持しているのはSwitch(2017年発売)では無くPSP(2004年発売)かPS Vita(2011年発売)か。ファミコンでさえ画期的な時代の人がPSPを見たらカルチャーショックも当然だろう

更にアキが制服を着て現れるシーン。制服が雪科第五中のものだったので、皆、同じ中学出身だと分かる重要なシーンだが、足下に注目。アキ(1992年から来ている設定)が穿いているのはルーズソックス。今でもルーズソックスはあるようだが、大流行している様子はないしねえ。一世を風靡した懐かしのアイテムという認識だろう

これらの事実は平行世界説を否定するものではないが、平行世界かどうかは重要ではない。話がどことなく噛み合わないのは、皆、異なる年から来ているからで説明がつく。特にスバルとマサムネはかなり離れていそうだし。中学校は3年で卒業するのが普通だから、10年とか離れていたら分かる訳がない

まあ、この時点で分からなくても、マサムネの演説(?)にもヒントの山が。マサムネが語るゲームを知らないのはゲームが発売されたのがこころとリオンの時代(2006年)より後だからと思われ、ウレシノ(2027年から来ている設定)が「映画化されたやつだよね」とリプライしたのにマサムネが否定するのは2013年時点では映画化されていないからだろう。フウカ(2020年から来ている設定)が無反応なのは映画化が2020年より後かピアノ一筋で世間には疎いからだろう

更に某アニメの決め台詞(正直寒すぎる)を披露するが、名探偵コナンは1994年連載開始、1996年TVアニメ放送開始なので、スバルとアキは知っている訳もなく。つれない反応も当然だろう

流石に7年間隔で離れているのは答え合わせまで分からないが、異なる年から来ていることには気付ける筈。一番易しい謎だと思うし、これに気付いて「さっさと話を進めろ」とイライラした人は多いのではないだろうか

 

2. 鍵の在り処(難易度2.0/5)
筆者は20分頃には鍵の在り処が分かったのでこれもわりと易しいと思ったのだが、他の人のレビューを見ると「これは分からなかった」とか「必然性がない」とか。必然性は大アリだと思うが、モチーフになっている童話の内容を知らなければ分からないだろうし、ミスリードが利いているか。鍵を探し出す期限は来年の3月30日までで1年近くあるのだから、すぐ見つかるようなド直球なヒントな訳がない

「オオカミ」「7」「赤ずきん」からどう話を組み立てるかだが、オオカミさまなのでオオカミは当然話に関わってくるだろうし、こころが逃げようとした時「7人じゃなきゃダメ」と言っているので7(人)にも重要な意味がある。赤ずきんに関してはこの話が(赤ずきんのような)童話をモチーフにしているというヒント及びこころ達は人間であって山羊ではないが、赤ずきんのように狼に食べられる存在であると暗喩していると解釈した

実際、こころの2度目の来城の際に自室の本棚の前で童話の本を見ているシーンがあるが、そこにあった(と確認できる)のは「シンデレラ」、「赤ずきん」と「狼と七匹の子山羊」。シンデレラは分かるだろうが、残りの2つは注意深く見ていないと見逃すだろう

しかし、いくら狼と七匹の子山羊をモチーフにしているとは言え、何故時計の中に特定できるのかと言われそうだが、子山羊たちが隠れた場所のうち唯一生き残った子山羊が隠れていたのが(柱)時計の中。この城の時計は高い場所にある上に(日本時間の)午前9時から午後5時までが活動時間という縛りがあるので、時計は頻繁に映るであろうから演出的にもいい感じ

まあ、ここで分からなくても✘マークが6箇所しか確認できないのが重要なヒントで、マークが食べられた子山羊たちが隠れていた場所を示していると考えれば、マークのついていない場所に鍵があるのは自明だろう

これに関しても「さっさと鍵を見つけろ」と思わなくはないが、比較的早い段階で「鍵を見つけても願い事を叶えてもらうのは最終日」というコンセンサスが出来ているので直ぐに見つからないであろうことは想像できた。それより気になったのは、6つしかないとマークの数が重要なのを示唆したのも、こころに「鍵の場所は恐らく…」と託したのもリオン。リオンは明らかに分かっているのに自ら鍵を探さないのは何故なのか。それは…

それとこころが(七匹目の子山羊として)城に戻ってきた時にトロイメライが流れて見るとオルゴールが破壊されているが、この演出はいらん。確かにオルゴールの中にも隠せそうだが、「狼と七匹の子山羊」がモチーフならここじゃないし。オルゴールは一応ヒントにはなっているが、上手く使えずこんな形で消費するとね。本作の脚本の拙さの一端が表れている

 

3. オオカミさまの正体は(難易度2.5/5)
他にいないだろという理由で特定はできるが、そういう話ではなくリオンの答え合わせ以前に特定する要素はあったかという話

まず、オオカミさまの容姿。こころ達よりかなり小さく、赤いドレスを着ていることから幼稚園~小学校低学年の女の子って所か。一方、「オオカミさまと呼べ」とかなり尊大な態度でこころ達に接するし、声や喋り方は女児というよりはこころ達より年上の女性のイメージ。これってオオカミさま役の芦田愛菜のイメージと重なる。芦田愛菜=子役のイメージを持っている人は多いだろうが、今は子役ではないからねえ。絶妙なキャスティングだと思う

容姿と中身にギャップが有ることから、既に死んでいて容姿は生きていた時のままで止まっていると推測できるかが鍵。ファンタジーなんで何でもアリなんで、理由はいくらでも後付けできそうだし

マサムネの提案が空振りに終わった後の城内でこころとリオンが出会うシーン。ここでキスから押し倒しての◯◯◯ってことにはならないが、こころもリオンに気がありそうだしキス位すると思った人は多いのでは

このシーンではリオンのカミングアウトが重要で、リオンが小学校に入る頃に姉が亡くなったという話は勿論、他にも重要な話が。前は一所懸命探していたけど今は探していないというのはオオカミさまの正体(と鍵の在り処)が分かったから。ただ、「オオカミさまは俺たちを(子山羊ではなく)赤ずきんと呼ぶ」と言っているので、確証はないってことだろう

その後、こころが皆の思い出を辿るシーンでリオンの話も出てくるが、これもなあ。ここでは姉の病室に病室にかがみの孤城に似ているおもちゃの城があること、姉が「狼と七匹の子山羊」を読み聞かせ、「もし私がいなくなったら、神様に頼んで何か一つ願い事を叶えて貰う?」とリオンにいう決定的過ぎるヒントが提示される(この後「リオンが小学校に入る時には私は中学生」と年齢差を示唆する話も)。回想シーンはもう一回あり、そこではリオンが手動式のオルゴールのハンドルを回すとトロイメライが流れそれをおもちゃの城の前に置くが、メインディッシュの後の前菜って感じで順序を逆にすべきだっただろう

リオンが結論にたどり着いたのは、城内にあるオルゴールの仕組みに気付いてオルゴールを動かしたらトロイメライがかかったのも一因なのは明らかで、姉との思い出を思い返している内に他のエピソードも思い出したか。クリスマスケーキを食べる時にはひょっとしたらと思っていて、オオカミさまの反応を見たのだろう

結局、リオンが諦めたのは死んだ姉に「姉ちゃんを(生き返らして)家に帰してくれ」と頼んだところで姉は困るだけで何も出来ないと悟ったからだろう。オオカミさまにお願いをした後に「私が死んだら~」の台詞を聞いた方が泣けると思うけどねえ

それと言うまでもないが、オオカミさまは永遠のMAN WITH A MISSIONでいて欲しかった。お面を取るシーンなんて必要ないでしょ。この後、姉の病室のシーンになるんだし。本当、演出が酷いよなあ

 

4. 喜多嶋先生の正体は(難易度3.0/5)
これと次の謎は「この城での出来事や願い事で人生(歴史)は変わるのか」という話に関わるが、当然否だろう。誰かの願い事が叶えられれば皆の記憶が消え、誰も鍵を見つけられず誰の願い事も叶えられなければ皆記憶を保持したままだが、どちらに転んでも結果は変わらない。つまりリオンの願いのような結果が明らかに変わるような願いは叶えられないし、見つけないつもりでも見えない力が働いて誰かが鍵を見つけ記憶を消される(可能性が高い)のだろう

ただ、スバルやアキの将来は明らかにこの城での出来事に左右されているように思えるが、それはこの城やオオカミさまの力ではなく自らの経験に基づいて自らの意志で決定した結果に過ぎないってことだろう

無駄話が長くなったが、要はこの要素はオマケ(謎解きにとっては。作品のメッセージとしては別)だと思うし明確な謎解きは不要と言うこと。それなのに脚本が…

まず、容姿は何とかならなかったかね。せめて髪型をロングにするとか。ただ、アニメの場合使い回しも多く、某国民的アニメでも波平さんと(カツオ達の)おじさんの差は髪の毛の数(1本と3本)だけだったりするし、これだけで同一人物とは決定できないが

アキが城でこころ達女性陣でお茶している時に飲んでいる飲み物、喜多嶋先生がこころの家を訪れた時にこころに渡したのは共にストロベリーティーフレーバーティーと言えばレモンティーとかアップルティーが相場でストロベリーティーはわりと珍しいし、それをアキにクリソツの喜多嶋先生が持ってくると赤の他人とはとても思えない

しかも、これって全体の半分にも満たない段階だしねえ。更にこころは全く気付いていない(最後には気づくが)。この時点でのこころにとって喜多嶋先生は心にも無いだろうから当然ではあるけど、視聴者は分かっているのにこころをはじめ誰も気がついていないのが1時間も続くと流石にイライラする

折角、ギリギリまで名字の公表を引っ張っているんだし、井上→喜多嶋だけで十分分かるからねえ。それと、「大人になって、こころ」はダメ。喜多嶋先生に(城での)アキとしての記憶はない筈だし。どうしてもアキとオーバーラップさせたいなら、ここでこころに紅茶(ストロベリーティー)を振る舞えば視聴者には伝わると思うのだが

 

5. マサムネにとってスバルは(難易度3.5/5)
アキの話は喜多嶋先生がフリースクールの先生なのでこころ達にも大きく関わる話だが、これに関しては物語の大筋とは全く関係ないんだし、もっと見つけにくい隠し要素で十分だったと思う。こういう謎を隠しておいた方が本作の謎解きの評価も上がったと思うのだが

マサムネが演説(?)中に長久六連(漢字表記なのかは知らん)の話を出すが、これに(名字が同じ)スバルが食いつく。スバルが「もっとコンピュータを勉強したいから工業高校に行く」。スバルはゲーマーとしてのセンスもあるようだし、昴は別名「六連星」。ここまででも十分過ぎるヒントなのだが、更に…

総じて余韻0って感じなんだよなあ。子供向けならこんなものなのかね。本当に残念だ