2022年に視聴した映画短評(その14)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

犯罪都市 THE ROUNDUP 4.0
マ・ドンソクは韓国の梅宮辰夫って感じの貫禄で悪役が多い印象だが、本作では破天荒な刑事役。2017年の映画、犯罪都市の続編だが、筆者は未視聴。ただ、ストーリーの繋がりは薄いので、前作を見ていなくても楽しめると思う

ぶっちゃけストーリー的には普通。とは言え、刑事ものとして全く見どころがない訳では無いし、本作の見所はアクション。シンプルなストーリーで十分だと思う

アクションシーンに関してはカーチェイスも迫力があるが、やはり格闘シーン。ドンソク兄貴は当に最終兵器って感じで、相手が武器を持っていようが素手でボッコボコ。しかし、オーバーキルが過ぎるので、現実の警察官だと大問題になりそうだ。まあ、映画内でも問題になっているのだが

とにかく頭を空っぽにして見て、見終わったらスカッとする作品。マ・ドンソクは基本無表情だが、どこかコミカルなのが味があるよなあ。邦画でもこういう作品を見たいが、色々と難しいのかねえ

 

・サイレント・ナイト 0.3
今年はボロッカスに扱き下ろす作品が少なくて良いことだと思いきや、年末にかけてヤバイ作品が。それなりの量を見たら一定数ハズレを引くのは仕方がないと思うけどねえ…。上映時間は90分で短い方だが、前半はダラダラしているだけなのでかなり長く感じる

正直、何を描いて何を伝えたいのか全く分からん。それぞれの家庭の親同士は学生時代の知り合いであり、故に子供同士も面識があることは分かるのだが、子供同士は勿論、親同士もお世辞にも仲が良さそうには見えず、このメンバーで最後の晩餐を過ごしたいとはとても思えない

更に毒ガス云々についても最後まで詳細不明。映画の尺で全てを説明するのは無理にしても、家族の背景にしても全てスルーでは話に説得力がない

政府批判とか陰謀論的な話も出てくるが、掘り下げることもなくそれが本作のテーマではないだろう。最後のオチ(?)を見る限りキリスト教的終末思想を皮肉りたいのかなと思ったが、だったら毒ガス騒動の背景に触れないとアホさ加減が伝わらない

こういう話って運命に対して抗おうとするのが普通なので、運命を受け入れるのは面白いと思う。もっとブラッシュアップすれば面白さが伝わっただろうが、何も考えずに撮影・編集するとこうなるってことだろう。キーラ・ナイトレイは相変わらず美人で、ジョジョ・ラビットの子が出てる位しか印象がない

 

・ザリガニの鳴くところ 1.0
原作はディーリア・オーエンズの同名ミステリー小説で全世界で1500万部も売れたらしいのだが、原作のせいなのか映画化に失敗したのかは分からないが小生には全く刺さらなかった

時代背景が1950-60年代なこともあり、古き良きアメリカを感じさせる作り。画も美しく上品な感じで、ラブシーンも最近のアメリカ映画のように胸をあらわにして抜根抜根ってことはなく品がある。ただ、それがストーリーのリアリティを削いでいるのも事実

脚本は率直に言ってイマイチ。すぐに本題に入るのはいいが、内容は無いよう。特にミステリーとしては全く見どころがない。法廷劇は杜撰の一言だし。まあ、本作はそれがメインではないってことなんだろうけど

じゃあ一人の女性の数奇な半生として盛り上がるかと言えば…。厳しかったであろう幼少期の話は殆どカットだし、所謂世捨て人の割には身なりは整っているし、それなのに何故か裸足だしとツッコミどころ満載

原作ファン、上品な恋愛モノが好きな人なら世界観に浸れるのかも知れないが、小生はこの映画を見るくらいならアメリカザリガニのザリガニの鳴きマネを見る方が遥かにマシだろうと思った

 

・ある男 4.0
原作は平野啓一郎の同名小説。ヒューマンミステリーの触れ込み通り、個人的にはヒューマンドラマの方を描きたいのかなと思ったが、ミステリーとしても見どころは十分。豪華キャストは作品に対する期待の大きさの表れだろう

本作では在日韓国・朝鮮人に対するヘイトスピーチとか娯楽作品では際どい話題もあるが、別に差別反対とイキるような内容ではない。多くの人は在日云々を気にしないと思うが、少なからずそういう人たちはいるし、それを過度に受け取ってしまう人たちがいるのも確か

全体的な構成は悪くないし、オチも秀逸。台詞に頼らずストーリーを紡ごうとする姿勢が見える。本題に入るまでが少し長く感じるが、ここにもしっかり伏線がある

ただ、原作では全ての"イベント"にエピソードがあるらしいが、映画では特定のイベントにしか深入りしない。その為、話が飛ばされた感があるし、そのエピソードが長めでミステリーとしてはややテンポが悪く感じる

ミステリーなら全てのイベントに触れるべきだと思うが、そうしないのはヒューマンドラマとしてはその方がいいという判断だろう。その辺、やや中途半端に思える

キャストは本当に豪華で演技だけでも価値がある。安藤サクラも良かったけど、窪田正孝が印象に残った。かなり多くの作品に出演している人に失礼かもしれないが、最近になって役者として開眼したように思える

まあ、演技勝負という点では柄本明が全て持っていった感がある。こういう胡散臭い人物がピッタリ過ぎる。しかし、吉本新喜劇出身の小籔千豊は勿論、きたろうやでんでんも元お笑いだしなあ。ずっとお笑い芸人でいるのは難しいのもあるけど、お笑いも演じているという点では同じなのだろう

エンタメとして面白いかはともかく、演技の良さもあって余韻や含蓄を感じる作品。差別とまではいかなくても他人からの評価を気にする人は少なからずいるだろうし、自分とオーバーラップさせて見る人が多いのでは

P.S. 河合優実、本作にも出てるのか。JK役が多いせいか、スタイルはいいけど色気には欠けるな。しばらくはJKもいけそうだけど、JK役を卒業する頃にどんな立ち位置でいるか。このペースで出演していけば、引き出しはどんどん増えていくと思うけど

 

・奈落のマイホーム 2.3
映画の解説には韓国初のサバイバルスリラーと書いてあるが、スリラー?って感じ。日本でも地下鉄工事によるシンクホールがあったが、韓国では珍しい話ではないらしい。ただ、本作は社会問題を風刺するような内容ではない

前半は古典的なコメディ。どこに行っても顔を出すマンスとか、ドリフのコントを見ているような感じ。韓国っぽさはあまりないが、逆に日本人でも笑える内容

後半はサバイバル劇となるが、マンションが沈んでいくシーンは結構な迫力があるし、脱出までの道のりはかなりハード。ただ、前半のコメディを引きずっていてイマイチ緊迫感に欠ける。韓国映画あるあるのヒューマンドラマがわざとらしさに拍車をかける

きちんとメリハリがついていれば、後半の脱出劇がより緊張感を持って見られたと思う。まあ、今年公開されたアニメ映画みたいにサバイバル中でも喧嘩しまくらないだけマシだが

途中で切り替えるのが難しいなら、全編コメディかシリアスかどちらかにして欲しかった。話自体は分かりやすくてエンタメ向きなんだけど、中途半端な印象は否めない。ぶっちゃけ韓国映画としてはハズレだろう