2022年に視聴した映画短評(その7)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・女子高生に殺されたい 3.7
原作は「帝一の國」等で知られる古屋兎丸の同名コミック、監督は最近「愛なのに」を観て良かったと思った城定秀夫なので期待が大きかったが十分満足。原作未読なので原作がどうかは知らないが、本作はサスペンスと言うよりはミステリーだと思う

東山がオートアサシノフィリアを患ったきっかけについては映画オリジナル要素らしいが、ストーリー上あった方がいいと思うし、このエピソードが伏線になっているので良い改変だと思う。ただ、…

本作の構成は完全にミステリー。東山の妄想が確実に実現に迫っている一方、どうやって殺されるのかが分からない。シナリオが少しずつ明らかになり"ヒロイン"候補が絞られても、信頼できない語り手を用いてミスリードを誘い誰か"ヒロイン"か引っ張る脚本

ストーリーが進むのは大島優子が演じるカウンセラー深川五月が赴任してきてから。ストーリー上の役回りは探偵で、深川探偵の活躍で事実が明らかになっていく。果たして東山の凶行を止めることはできるのか…

弱いと思う点は人物の掘り下げ。映画なので尺の都合でしょうがないとは思うが、あおい(河合優実)は原作ではアスペルガー症候群らしいが本作では言及無し。良く分からない超能力設定はストーリー上意味あるのって思ってしまう。深川が元カレとは言え東山に拘る理由も弱いしね

最大の問題点は東山が何故女子高生に拘るかが良く分からないこと。大人と子供の間なのがいい的なのはあったと思うが、だったら深川は元カノでSEXする仲だったのは何なのかって感じ

次にドロドロ感が足りない。病んでいる人物が多い割に爽やかなんだよなあ。ミステリーとしてはストーリーに入れるし多分それが狙いなんだろうが、サスペンスとしてはかなり物足りない

それとミステリーとしては良く出来ていると思うが、深川に喋らせすぎ。もう少しストーリーの中で分かるようにならなかったかなと思う

最後にオチは微妙。このオチだったらもっと手前で切っても良かったと思う

色々書いてきたが、なんだかんだで最近のミステリー作品の中ではかなり面白いと思う。ただ、サスペンス作品としては弱い所があるのでその点をどう捉えるかだろう

 

・アンビュランス 2.0
良くも悪くもマイケル・ベイ作品って感じ。最近の映像技術の進歩は目覚ましく迫力あるアクションシーンが多いが、本作のは一歩上を行くクオリティ。ドローンを駆使してと思われる撮影は距離が近くて迫力が桁違いだ

この映像美ならストーリーが並レベルでも傑作なのだが、こちらもマイケル・ベイクオリティ。内容がないのは勿論のこと、設定に意味がない、ツッコミ所満載、マッチポンプ、無駄に長い、オチが寒い、…

本作は2005年のデンマーク映画「25ミニッツ」のリメイクらしいが、原作は77分。本作もせめて100分以内に収めていれば破綻も少なくなって良かったと思うのだが

マイケル・ベイのファン、映像さえ良ければストーリーには目を瞑れる人にならお勧めできるが、そうでないなら他の作品にした方がいい

 

・バブル 0.5
本作を一言で言えば"バブル崩壊"。流石のネトフリクオリティ、船頭多くして船山に上るを体現している。新海誠っぽい映像、ボーイミーツガール、(若者受けする)Xスポーツっぽい競技、人魚姫等幾つかの要素を雑に繋いだだけなのでストーリーに核が無く全く印象に残らない

新海誠を意識しているであろう映像は美しいしパルクールのシーンもそれなりの迫力でクールではあるが、今時映像が美しい作品は多いしストーリー上パルクールが重要と思えないので対決に一喜一憂している登場人物たちをどこか冷めた目で見てしまう

それに世界観が不明。世界観を示すにはシナリオだけでなく映像も重要だと思うが、「天気の子」みたいに明るい世界ではないものの「甲鉄城のカバネリ」のようなポストアポカリプスの世界という訳でもないし中途半端

キャラデザは確かに今風ではないと思うが個人的には気にならない。ただ、音楽とXスポーツ系で少し古いキャラデザだと「交響詩篇エウレカセブン」かよって思ってしまうが

演技に関しては全体的に抑えた演技になっていて似非声優達の演技の拙さが露呈しないようにしたつもりだろうが、それでも下手なものは下手。ヒビキ役の志尊淳とウタ役のりりあ。は滑舌が悪くて台詞が聞き取りにくい。特にウタはキャラに声が合っていないので余計に下手に感じられる

ストーリーに関しては寄せ集めで筋が通っていないのは既に述べたが、肝心な所をナレーションで済ますのも相当酷い。このような世界になった背景もそうだが、人魚姫の音読には苦笑。人魚姫をモチーフにしていることは大半の人が気付くと思うので仄めかすだけで十分だと思うが

著名人を集めて、著名な作品の要素を集めて、パンダ声優を使えば成功するんじゃね?と言う清々しい程志の低い作品。その結果、正に「内容が無いよう」の極致のような作品に。バブルというタイトル通り、数か月後にはストーリーは勿論、存在さえ忘れ去られているだろう

 

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム 1.2
異常な高評価に映画館で観るのは見送ったが正解だった。お金を使っているだけに特撮は素晴らしいが、ストーリーは褒めようがない

MCU作品に緻密なシナリオを求めるなと言われそうだが、あまりのマッチポンプに閉口。その頭の悪さではMITとか裏口入学以外あり得ないだろう。雑なシナリオな割に設定には拘るから、過去の作品を観ていないと「は?」って感じで話についていけない

それに約2時間半の作品とは言え話を詰め込み過ぎ。まあ、ダラダラ2時間半が過ぎて行くよりはマシだが

結局、豪華な「同窓会」に感涙できるスパイダーマンと言うかMCUヲタ向けの作品なのだろう。今後のMCU作品もこんな感じなのかね。次、外れだったらMCU作品はもう観ることはないだろう

 

・生きててよかった 3.6
ロッキーに憧れてプロボクサーになった男と役者になった男、及びその家族を描いた作品。随所にロッキーのオマージュが入っているので、ロッキー1位は観ておいた方がいいかも。まあ、ロッキーを知らない若い人は観ないだろうけど

ストーリーだが、プロットはベタだが味付けは面白い。主人公の創太夫妻と友人の健児夫妻は対照的に描かれているし、何より激しいセックスシーン。本作はPG12だが、R指定でもおかしくない。格闘技をセックスに擬えるのはベタと言えばベタだが、それを映像で表現するのは大変なこと

ただ、全体的に見るとシーン過多に思える。もう少し厳選できなかったかね。それとコミカルシーンはもう少し笑いを誘導しても良かったかも。やり過ぎは良くないが、本作ははっきりコメディ要素があると分からせた方がラストシーンが活きた筈。ラストは笑わせたいんだと思うので

本作の魅力は何と言っても格闘シーン。創太役の木幡竜の仕上がった肉体はまるで彫刻の様で美しい。その身体から繰り出されるパンチを喰らったらあの世行きかなと思わせる

役者陣は木幡竜は勿論、健児夫妻も良かったが、幸子役の鎌滝恵利が印象に残った。セックスシーンも良かったけど、ちょっと陰のある表情が良かった。他の作品でも見てみたい