2022年に視聴した映画短評(その10)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・メタモルフォーゼの縁側 3.5
本屋で偶然BL漫画を知った老婆・雪とその本屋でバイトしている高校生・うららとの交流を描いた作品。メタモルフォーゼは変化、変身と言った意味だが、雪の家の縁側でBLの話で盛り上がることで日常生活にもいい変化をもたらした的なニュアンスか

とにかく宮本信子の演技が印象に残った。人の好さそうなお婆さんって感じだが、BLを知って心に張りが出て人生を楽しんでいる様子、芦田愛菜を自分の孫のように受け入れる様子が人生の先輩としての懐の深さを感じる

全体的に凄く丁寧に作られた作品。うららの走り方、挿入されたBL漫画、書道の字等、台詞以外の表現が多い。反面、内容の割にテンポが悪いのも事実。雪目線ならこのテンポが合うかも知れないが、本作は雪だけを描いた作品ではないからなあ

傑作とまでは思わないが、PLAN 75を観て荒んだ心を癒すには最適な映画。日本が本作のような老後を送れる国でいられるのか、それとも…。今が瀬戸際だろう

 

・神は見返りを求める 4.0
吉田恵輔監督らしい社会派作品。前作の「空白」ではモンスターペアレントが題材だったが、本作ではYouTuber。ムロツヨシ演じる田母神のみならず、岸井ゆきの演じるゆりちゃん以下主要人物が軒並み胸糞なのは吉田監督らしい

シナリオの完成度は前作以上だと思う。前作はこういうモンスターペアレントもいるかもって感じだが、本作ではこういうYouTuberいるよねってリアリティがある。成功したらしたで色々悩みは尽きず、少ないフォロワー数で模索していた頃が楽しかったはYouTuberあるあるなのだろう

ゆりちゃんのパンモロから始まりボディペイントとか際どいシーンもあるがエロさは皆無。実際、女性YouTuberで体を張る系で色っぽい人はいないイメージだし。エロを武器にすると女性フォロワーはつかないだろうし、BANの危険性もあるからね

そういう意味ではムロツヨシ岸井ゆきののキャスティングは良かった。YouTuberの揉め事として痴話話はお約束だが、この二人なら痴話話には発展し無さそうだし絡むとテーマがぼやける。脇を固めた男性陣のチャラ男っぷりも不快感Maxで良かった

それだけにラストが非常に残念。ここまでリアリティのある脚本なら既に警察沙汰になっていそうで流石にこれはないって感じ。「ありがとう」の薄っぺらさは本作を象徴しているので、このシーンで終わっても良かったと思う。ラストを抜きにしてもいい映画だと思うが、いい作品だからこそ余計に残念だ

 

リコリス・ピザ 0.3
今年のアカデミー作品賞ノミネート作品の中で最後に日本で公開された作品だが、率直に言って今年ワースト級の駄作。三流コメディアンを重用する団体の選ぶ作品なんてこんなもの。単なる監督のオナニー、何が面白いのか全く分からん

雑にシーンを繋ぎ合わせただけでストーリーが時間軸通り進んでいるのか、作中でどれだけ経過したかも分からない。それ以前に何がしたいのかも分からないが。二時間以上かけてファーストキス→エンドロールって、どこぞのフットサルアニメも真っ青の内容の薄さ

この監督のファンならこういう作風だと納得なのだろうし、楽屋ネタ的な笑いについていけるのだろうが。この作品がリコリスだと思えるのはファンだけ、一般人にとってはマーマイトやサルミアッキだろう

 

モガディシュ 脱出までの14日間 3.7
1991年、ソマリア内戦下での韓国と北朝鮮の大使館員達の命がけの国外脱出劇を描いた作品。実話をベースにエンタメ化されている。韓国映画ってこういうの多いよなあ

エンタメ作品らしく笑える所もあるが基本はシリアス路線。見所は"大名行列"。あれだけ撃たれると全滅じゃないのと突っ込みたくもなるがド迫力なのは確か。ラストも印象的でエンタメ作品らしいがストーリーの完成度はあまり高くない。韓国寄りなのは韓国映画だから当然としてもマッチポンプ感が強い

それまでバチバチやってきたからなのか、この切羽詰まった時でもマウントを取ることを考えるのは外交官魂なのか。日本だと批判されそうだが、韓国に限らず外国では"貸し借り"を考えるのが普通なのかも

韓国のこの手のジャンルは安心して見られる感じ。題材もアクションも邦画では絶対に無理だろうな。上映スクリーンは少な目だが、大都市圏の人は是非劇場でどうぞ

 

・ビリーバーズ 3.5
原作未読だが、今年公開された「愛なのに」「女子高生に殺されたい」が良かった城定秀夫監督作品なので視聴。「猫は逃げた」でも脚本を担当しているし大忙しだと思うが、まだ今年公開作品(「夜、鳥たちが啼く」)が控えているんだねえ

本作を端的に言うとシュール+エロ。カルト教団が題材になっているが掘り下げることはしないのもあって全体的に間延び感がある。最後もごちゃごちゃした感じで何となく終わってしまうので不満が残るが、原作もこんな感じなのだろう

とにかく副議長役の北村優衣がエロい。所謂透けTで見える乳房や短パンから覗く太腿等フェチ的なエロもあるが、R15+だけにそれは序ノ口。左右非対称な乳房はリアリティがあるし、ちょっと人妻っぽい雰囲気もエロい。そりゃこんな女性がフェロモンを出し始めたら男は反応してしまうわな

ただ、撮影は大変だっただろう。オペレーター役の磯村勇斗との絡みは普通の濡れ場だが、議長役の宇野祥平との絡みはSM的で生殺し感が半端ない

映画として絶賛はしかねるが、原作の世界観は表現できているのかなと感じるし城定監督で良かったと言える作品だろう。終盤にサプライズもあるので原作ファンは是非劇場へ