2023年に視聴した映画短評(その1)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・カンフースタントマン 龍虎武師 3.7
主に1970-90年代のカンフー映画をスタントマンの視線から見た映画。全てが時系列通りではないが、カンフー映画の起源から全盛期、衰退期、そして今を当時の映像と関係者のコメントで振り返っていく

衰退する理由はどこも同じで、過去の栄光に縋ってワンパターンからの脱却が出来ない。CGが発達した時代に命がいくつあっても足りないようなアクションを売りにはできないわな。最近のインド映画は歌と踊り頼みから脱却して多様性が出てきたが、香港映画は変化が遅すぎた感がある

あくまでスタントマンが主役なので大物はサモ・ハンくらいしか出てこないが、懐かしいと思える世代の人なら見て損はないと思う。ただ、ジャッキー・チェンが出てこないのがね。映画でのシーンは出てくるが、コメントが欲しかったな。まあ、今のジャッキーにコメントを求めるのは難しそうだが

 

・ドリーム・ホース 3.0
競馬を題材にした映画はシービスケットセクレタリアト/奇跡のサラブレッド等、馬が主役の作品が多いが、本作は馬主の方に重きをおいた作品。例えるなら、そこまで生々しくはないが、優駿 ORACION的な感じか

まず競馬について。競馬は大別して平地競走と障害競走に分けられるが、本作は障害競走の話。イギリスでは障害競走が人気で、最高峰のグランドナショナルは賞金総額100万ポンド。英ダービーが150万ポンド、キングジョージが125万ポンドなので遜色ない水準

日本でもオジュウチョウサンが11歳で中山グランドジャンプ(優勝賞金6,600万円)を制するなど高齢馬が活躍することが多く、グランドナショナルは何と出走条件が7歳以上で10歳以上が当たり前の世界

その理由は距離とコース。グランドナショナルは約6,900mで障害数30。中山グランドジャンプが4,250mで障害数17なので段違いのタフさを誇る。スピードよりタフさと飛越の上手さが求められ、多くの馬が競走を中止する

ウェルシュナショナルはウェールズグランドナショナルに当たるレースだが、グランドナショナルのステップレース的なポジションで、日本なら阪神スプリングジャンプ等のJ・GIIって所か。天皇賞(秋)に対する毎日王冠オールカマーと言った方が分かりやすいかも

あと出資者を公募する所謂クラブ馬主制度は日本にもあって、マイネルでおなじみのサラブレッドクラブ・ラフィアンとかウマ娘化されないことでおなじみ(?)のサンデーレーシングあたりが有名所だろう

長々と競馬の話をしたが、ぶっちゃけ内容はそこまで…。勿論、レースシーンはあるが、競馬に深く立ち入った内容ではない。実話ベースではあるが、テンポが良く、適度な溜めもあって手堅く纏まった脚本だとは思う

イギリス競馬のゴージャスな雰囲気は感じられるし、そこに田舎者が大挙して押しかけるのは、中津江村(現日田市)の村民が大勢でカメルーンの応援に行くノリで微笑ましい

お金の話は出てくるがそこまで深刻な内容ではなく、上述のように競馬については極々浅い内容なので、競馬に詳しくない人が気楽に見る映画としてはいいと思うが、競馬マニアには物足りない作品だろう

 

・マリッジカウンセラー 3.5
大手不動産会社から出向してきた赤羽昭雄とカリスマ仲人と呼ばれた母から結婚相談所を受け継いだ時田結衣ら、仲人達の奮闘を描いた作品。本作の前日譚に当たる作品があるらしいが、筆者は未視聴

一言で言うと上手く纏めたなという印象。赤羽は過去の栄光にしがみついて自らを省みない典型的な嫌な上司タイプだし、相談に来る連中も「そりゃ結婚できんわ」と言いたくなるような一癖ある人ばかり。当然、上手くいく筈もなく嫌悪な雰囲気に

しかし、赤羽と結衣は徐々にお互いを認めて感化されていき、それが会員にも良い影響を与えて上手く回りだすようになる。結婚するしないは個人の価値観だと思うが、コメディも柔らかい感じで押し付けがましくないので既婚未婚問わず楽しめる作品だと思う

ただ、映画っぽくはないかな。大きな展開もないし。ドラマならそれぞれの背景にももっと踏み込めると思うし、会員以外にもスポットライトを当てられるので、続編があるならドラマにして欲しい。多分、中京ローカルになるだろうが、今はTVerとかあるしね

P.S. 松本若菜が美人すぎる。こんな人にサポートされるなら、ずっと独身でいいやと思ってしまうかも

 

・SHE SAID/シー・セッド その名を暴け 3.7
ハーヴェイ・ワインスタインによる性的暴行疑惑を追いかけた2人の女性記者による回顧録をベースにした作品。#MeToo 運動に火がついたきっかけとなった出来事で、日本でも監督による"演技指導"が問題になるなど影響力が大きい

本作の特徴的な点はまず家族の描写が多いこと。記者も被害者も女性が多いこともあるが、子育てとの両立や家族の理解など女性の社会進出の上で問題になりそうなことがサブテーマになっている

次に上司と話しているシーンが多いこと。主役は記者ではあるが、あくまで組織としてワインスタインに対峙するプロセスが描かれている

この手のテーマは男性vs女性の構図になりがちだが、全ての男性を敵視しているのではなく、あくまでワインスタインの悪事を告発するのが目的だとはっきりさせる効果があったと思う

本作を一言で言うと"質実剛健"。事実をベースに丁寧に作られた作品だと思うが、ぶっちゃけ地味。ドキュメンタリーではなくドラマなのだから、もう少し盛り上がらないものかねえ。ラストシーンは悪くないけど

ニューヨーク・タイムズ紙は紙媒体が厳しい中オンライン契約数を増やしているようだが、こういう"仕事"が評価されているのだろう。記者クラブ制度に甘えてマスコミの矜持を忘れたメディアには未来はない。日本で残りそうな紙媒体は週刊文春くらいだろう

 

ルパン三世VSキャッツ・アイ 2.5
ルパン三世のアニメ化50周年とキャッツ・アイの原作40周年を記念して製作されたコラボ作品だが、アマプラ限定配信作品

タイトルを見ると対決モノと思ってしまうが、実際はルパン三世 ゲスト:キャッツ・アイな感じでルパン三世の世界観でルパン一味がキャッツ・アイに御膳立てする内容。まあ、ルパン三世クラリスにもおじさまと呼ばれていたし、特に愛にとってはお父さんでも不思議じゃないからねえ

ストーリーは90分程度の作品だし、こんなものかなって感じ。キャッツ・アイに合わせてターゲットは絵で、絵にまつわる謎を解いていく。明らかに怪しい人物がいるのでミステリー要素は薄いが、キャッツ・アイに関するエピソードを楽しませる軽めの内容

作画は3D。ただ、古い感じのキャラデザで懐かしさを感じる。設定が1980年台なので合わせたのか。それとキャッツ・アイ3人の衣装は露出不足で不満に感じるおじさんが多いかも。まあ、セクシーなのは(同じ作者の)シティーハンターでってことだろう

既にアマプラ会員なら見て損はないと思うが、この為だけに会員になる必要はないと思う