2022年に視聴した映画短評(その12)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

サバカン SABAKAN 3.5
本作を一言で言えば、スタンド・バイ・ミー鯖缶仕立て。スタンド・バイ・ミーを意識した作品は今年グッバイ、ドン・グリーズ(アニメ作品)が公開されたが、グッバイ~よりは出来がいいと思う

主人公は大人だが、ストーリーの大半は少年時代の思い出を描いた作品。キン消しだったり当時のヒット曲が出てくるので40代以上向けだろう。白い炎、懐かしすぎる。メタルテープとか、若い人はカセットテープすら知らないかもな

EDはORANGE RANGEのキセキ。但し、オリジナルではなくりりあ。歌唱による映画Ver.。因みに、キセキと検索すると競走馬に続いてPAMELAHが。PAMELAHも相当懐かしいなw

宜しくない点はやはり暴力が多すぎる。昭和じゃ珍しくないが、子供を叩くのは当たり前、ヤンキーが小学生をボコるのもねえ。そういう連中を注意する人がいるのもいい意味で昭和らしいが、ビンタで制裁はご愛敬か。今、スクール☆ウォーズを再放送したら山下真司に非難の嵐だろうな

それとおっぱいネタに茅島みずきはどうなのか。少年が憧れるおっぱいってうる星やつらのラムみたいな感じだと思うが、残念ながら…。長崎出身だから起用したのだろうが、モデル体型でスポーティな感じでセクシーと言うよりはカッコイイ感じ。それはそれで少年の憧れだとは思うけど

纏めると良くも悪くもシンプルな作品。人生何が起こるか分からないとは言え、脚本は強引過ぎる感は否めない。上映時間が短いので内容は薄めだが、ストーリーよりは昭和のノスタルジーに浸る作品なのだろう。それを引き出す少年役の演技は素晴らしかった

 

・ブレット・トレイン 4.4
Bullet Train。直訳すると弾丸列車だが、新幹線の英語訳に使われることも。原作は伊坂幸太郎の殺し屋シリーズの2作目、マリアビートルだが未読。ブレット・トレインはダブルミーニングになっていて上手いと思うが、邦題は弾丸列車が良かったかも

舞台は殆どが東海道新幹線らしき中での話だが。乗客に日本人は少なくて日本とは思えない雰囲気。所謂なんちゃって日本には拒否反応を示す人が多いだろうが、列車の名前は"ゆかり"号だし、車内マナーを注意されたりと現在の日本を分かった上でのなんちゃってだと感じたので嫌な感じはなかった

灰汁の強い人物が多く、ぶっ飛んだ行動が多いのでコメディ映画だと思うが、伏線を丁寧に回収していくのでストーリー的にも十分楽しめる。ただ、伊坂幸太郎ファンがどう受け取るか。そういう意味では、原作未読であるファン以外の方が楽しめるのかも

挿入歌は洋楽、邦楽問わずであるが、何故ここでこの選曲?なミスマッチ感が楽しい。小ネタも面白いし、個人的には結構ハマった

難点はアクションシーンが少な目なのと、序盤に回想が多いこと。ただ、回想は伏線になっているので必要ではあるのだが

人を選ぶタイプの作品であるのは確かだが、タランティーノ的なブラックな笑いとなんちゃって日本を許容できるならお勧めの作品。当方はチネチッタのLIVEサウンドで視聴したが、出来るだけ音響のいいスクリーンで視聴した方が良さが味わえるだろう

 

・NOPE/ノープ 0.8
本作を一言で言えばアメリカ版ウルトラQ。予算が乏しい訳ではないだろうがチープな感じ。周りに何もない田舎町で訳の分からないことをやっている絵面は何ともシュール

とにかく長い。入りに時間をかけすぎな上に2時間以上かけて内容は無いよう。サルの話とか祖先が騎手(多分)だったりとかストーリーに関連するのかと思いきやラストがこれじゃあね。色々考察している人もいるが、正直考察する気にならない

ちょっと当てた画家が更なるヒットを目指して前衛的になったら子供の落書きになりましたってところか。ホラーとしてもSFもどきとしても見所は皆無。監督のファンでも賛否あるだろうな。個人的には大外れだった

 

・雨を告げる漂流団地 1.0
前作の「ペンギン・ハイウェイ」が良かったので期待していたが残念な出来。ネトフリが口を出したからなのか、それとも原作無しのオリジナルだとこんなものなのか。一言で言えば"響かない"作品。何を言いたいのか、どういった層をターゲットにしているのかが全く分からない

テンポが悪い訳じゃないがダラダラ感がある作品。行動原理が理解できずにイライラする為か。マッチポンプなのもそうだが、サバイバル下でしょうもない言い掛かりで喧嘩している場合じゃないだろう。おかげでサバイバルの緊迫感を欠いて、ストーリーに入れない

最後まで見ても何故、漂流したのかものっぽの正体も分からず仕舞い。全体的に説明を極力省こうとしている感じ。だったら、漂流中の過去を思い出すエピソードを通じて航祐と夏芽が昔のように仲良くなることにフォーカスして90分位で描けば良かった。なんか「木を見て森を見ず」な脚本なんだよなあ

作画は悪くないし、似非声優の棒演技にイライラせずに済むのは良い。ただ、演技にイライラしなくても行動にイライラすることになる訳だが。寧ろ、棒演技の方が人物にイライラせずに済むだけマシまであるかも

 

・手 3.6
原作は「人のセックスを笑うな」の山崎ナオコーラの小説。日活ロマンポルノ50周年を記念したプロジェクト「ROMAN PORNO NOW」の第1弾作品だが、R18+とは思えないマイルドな作り。セックスシーンはあるが控え目な描写なので、エロ目的で本作を観るのはお勧めできない

金子大地演じる森は見るからにイケメンで女性慣れしているのも納得だが、人は見かけによらないと思わせるのが福永朱梨演じるさわ子。地味で大人しそうな感じはおじさん受けするタイプなのか、おじさんをとっかえひっかえ手玉に取る。勿論、セックスありの関係で

時折入るさわ子のモノローグもおいおいって感じで、明らかに性悪女なのだが不思議と腹が立たない。福永朱梨はオーディションで選ばれたらしいが正にはまり役。おじさん達はいい味出しているし、妹も妹らしく天真爛漫で良い。セックスもあっけらかんとしているし

注文を付けると、終盤にかけて強引に「手」にこじつけている感があるので、序盤から映像的に手を印象づける感じにならなかったか。原作がそうなのかも知れないが、手というタイトルなのに手の印象が薄い

上記の様にセックス描写は控え目、詩が入ったり文章表現が多く文学的な雰囲気がある。官能小説とも言い難いし、ロマンポルノとしては新機軸なのは間違いない

本作はさわ子に共感できるかが作品の評価を左右しそうで是非若い女性に観て欲しいが、ミニシアターだけなので若い人は行かないかな。カップルで観ても面白そうだが、お互い疑心暗鬼になるかもね