2022年に視聴した映画短評(その9)
*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0
・トップガン マーヴェリック 3.1
1986年公開の映画「トップガン」の続編。本作の理解に必要な前作のエピソードは随時挿入されるが、前作を観ていた方が楽しめるのは確か。ただ、観たのは大昔なので細かい話までは覚えていないし、本作の為に前作を見直すこともしていない
何と言ってもトム・クルーズ。おっさんを通り越して初老だがスターのオーラは健在。アイスマン役が前作と同じバル・キルマーなのも良い。今風の設定も入っているが使っている機体はF-18とかF-14とか古いもので、現在の技術で撮影して迫力が増した前作の正統進化なのが刺さる理由だろう
ストーリーはアメリカの商業映画らしくガバガバ。ただ、本作に緻密なストーリーを要求する人は皆無だろうし、今風に馴染めないマーヴェリックを自身にオーバーラップさせるおっさんが多いのでは
駄目な点はラブシーンが多すぎる。これでも前作よりは少ない気がするが、本作はラブストーリーメインじゃないしおばちゃんとのラブシーンに興味はないのでその分戦闘シーンを入れて欲しかった。ただ、こういう「構成」含めて前作を踏襲しているのもヒットの要因だろう
後はリスペクトが過ぎる。ケニー・ロギンスの曲が流れればおっさん達がアガるのは間違いないが、ゴーストバスターズもそうだったけどここまで前作を引きずらなくてもと思う。往年の名作の思い出が蘇るにはリスペクト過多位じゃないとダメってことなのか
特に日本ではZ世代ばかり注目されるのでこういったX世代ホイホイもアリだとは思うが、本作をZ世代はどう思うんだろうな。率直な意見を聞いてみたい気がする。内容ベタで映像の迫力で勝負は鬼滅と共通するから意外に受け入れられるのかも
・パリ13区 2.0
パリ13区とはパリ市20区の内の1つでセーヌ川の南側にある行政区。再開発が進んで高層住宅が多く、パリ最大の中華街がある。原題のLes Olympiades(レ・ゾランピアード)は13区にある元貨物駅だったエリアのこと
本作はモノクロ映画であるが、正直狙いは分からない。カラーのシーンも1シーンあるが、そちらも?って感じ。モノクロで何となくお洒落な雰囲気はあるが、それ以上でもそれ以下でもないと思った
ストーリー的にはミレニアル世代の男女4人の群像劇。ミレニアル世代とは最近良く使われるZ世代の上の世代でY世代とも呼ばれる。ミレニアム(千年紀)に因み、2千年紀の最終年に当たる2000年以降に社会進出した世代と言う意味らしい
フランス映画らしく主題がはっきりしない作品だが、結局の所4者4様の価値観があると言うことだろう。愛のないSEXもあれば愛のあるSEXもある。SEXを伴う愛もあればSEXを伴わない愛もある
個人的にはありがちな映画って感じだが、雰囲気に浸れるような作品が好きな人には刺さるかも。ただ、R18+が示すようにSEXシーンが多いので、それが嫌な人は観ない方が良いだろう
・ハッチング―孵化― 2.5
本作が長編デビュー作である新人監督の作品。オチへの伏線は十分だしメッセージ性もあるのだが、ストーリー的にもホラー的にももう一つ振り切れていない感じ
正にDQN一家って感じだが、その中でも母親の異常さは際立っている。母親の前では良い子を演じているが、内心は抗いたいと思っている娘。蛙の子は蛙と言うか、自分が辛い思いをしているなら自分の"子"には求めなければいいのに良い子でいろと要求した結果は…
率直に言ってストーリーは雑。まあ、卵が大きくなる時点でお察しだが。ただ、卵が大きくなるのはフラストレーションに対応していて、それが限度を超えた時に孵化する設定なんだと思うが
トータルではまずまずだと思うが、捻りも爽快感もないラストなので高評価は無理。北欧テイストは感じられるので北欧映画好きならいいのかも。ただ、PG12にしてはグロいので耐性は必要か。まあ、北欧映画好きなら全く問題ないレベルだろう
・決戦は日曜日 2.6
レビューサイトでは中間評価が目立つ作品。コメディなのか社会派なのか中途半端と言う感想が目立つが、中途半端と言うか"伝わらない"作品。何を描きたいのかが伝わってこないから中途半端な印象になるのだろう
本作の主人公は誰なのか、どういうストーリーなのかと言えば、父の地盤を引き継いで急遽出馬することになった有美が自由奔放な行動で周囲を振り回す様子をコメディタッチで描いた作品って感じだろうが、恐らくそうではないのだろう
エンドロールを見ると最初に出てくるのは谷村を演じた窪田正孝。宮沢りえではない。本作は秘書目線で見た選挙戦を描いていて、候補者でなく秘書目線であることで政治家なんて所詮ピエロでドブ板選挙の馬鹿らしさをよりシニカルに映し出すと思うが、有美が主人公っぽいのでそれが薄らいでいる感じ
そうなった理由は端的に言えば日和ったからだと思う。尖った作品は観る人を選ぶし少しでも多くの人にって感じだと思うが、日本人に多い政治を批判してはいけない病患者はそもそもこの題材では観たいとは思わない
じゃあ、尖った作品ならヒットしたかと言うとそうではないだろうけど。ただ、この手の作品はピンかパーかだと思うので、中間点が多い作品ってある意味最低とも言える。記録にも記憶にも残らない作品ってことだし
窪田正孝と宮沢りえの迷バディぶりも悪くないし、内田慈ら脇役陣もいい味出しているんだけどね。長いこと構想を温めていた作品らしいので振り切って欲しかった。本人がどう考えているかは分からないが、見ている側からは不完全燃焼に思える
・ナイル殺人事件 1.5
原作はアガサ・クリスティのナイルに死す。クリスティの作品は当然過去にも映像化されているが、本作はケネス・ブラナー監督・主演作品の2作目。因みに前作のオリエント急行殺人事件は未視聴
率直に言ってミステリー作品としては外れ。前半ダラダラしていて正味1時間って感じなので、ごちゃごちゃしていて忙しない。登場人物を減らしたのは悪くないが、減らしたのだったらもっと登場人物を掘り下げて欲しかった、トリックに関しても納得度は低い
過去にも映像化されている作品。原作もミステリーとしては完成度が低いのかなと思うし、本作を本格ミステリー作品にする気は無かったのだろう。冒頭のエピソードといい、本作はポアロをフィーチャーした作品で「愛さえあれば何でもできる」とでも言いたいのか
映像は美しいし、異国情緒に浸るのが目的ならまずまずの作品だと思うが、本格ミステリーを期待するなら時間の無駄なので止めておいた方が良い