2023年に視聴した映画短評(その10)

*今年観た映画なので、今年公開の作品とは限らない。5点満点で最低点は0

 

・65/シックスティ・ファイブ 0.0
ゴミ。以上で片付けたくなる位、清々しいまでの駄作。本作では監督ではないが、サム・ライミも最早駄作請負人って感じだな。当にアメリカの清水崇。2人が共同監督を務めたらどんな特級呪物が生み出されるのか興味深い

本作を一言で言えば「ジュラシック・パークの粗悪なパチもん」。当然、内容は無いよう。本作はSFサバイバルスリラーらしいのだが、当然のように突っ込み所しかない。まあ、本作に本格SFなんて期待してないけど

とは言え、少しは設定を活かせなかったものかね。6500万年前と言えば巨大隕石の衝突によって恐竜が絶滅したとされているが、ストーリー的には恐竜さえいればそれでいいって感じだし

それに言葉が通じない設定もなあ。ご都合主義の塊なのに無駄な所でリアリティに拘るとか。こんな状況でも通信できる高性能デバイスなら翻訳くらいできそうなものだが。(言葉が通じない)ミルズとコアが少しずつ理解を深めていく感動ストーリーにしたいのだろうが、この完成度じゃねえ

本作の唯一の見せ場はエンドロール。CASTのあまりの短さに衝撃を受けること間違いなし。そりゃ偶に妻と娘の回想が挟まる程度で、ミルズとコアしか出てこないんだから当然といえば当然だが

一応SFも絡んだごった煮って感じなので、「エブエブ」が好きな人ならこういう作品も受け入れられるのかも

 

・リバー、流れないでよ 2.7
ヨーロッパ企画長編映画第2弾。貴船とあるように舞台は京都。本作は所謂タイムループものだが、普通のタイムループものとは違う点が2つある

1つ目は皆、記憶を保持している点。タイムループが起こった時点でその間の記憶がなくなるのが普通で、それ故にまずタイムループが起こっていることに気づきにくいし、人にどう伝えるかが難しい。それを会社という組織に当てはめたのが、去年公開された「MONDAYS~」だろう

2つ目はインターバルが極端に短いこと。1日とか1週間とかが普通だと思うが、本作はまさかの2分

本作はこの2つの特徴を上手く活かしていて、移動の連続でへとへとになったり、続きをタイムループ後にしたり、2分で元に戻るならと遊んでみたり…。舞台っぽい大袈裟な演技もコメディには合っている

ただ、完成度の高いシナリオかと言われると…。まず、終盤に来ての恋愛要素はなあ。恋愛要素と言うよりは恋愛要素でタイムループを消費することが最悪と言うべきか。タイムループの連続に飽きている所に解決には関係ない要素に時間を割くのはセンスが無さ過ぎる

あと、オチもねえ。オチ自体もさることながら、オチへの伏線が弱い。何だかなあって感想になってしまう

途中までは面白いので、全体を通しては普通ってところか。2,000円だして観る作品とは思えないが、サービスデーにあまり期待せずに気楽に観るならいいかも

 

・断捨離パラダイス 3.9
タイトルから想像がつくだろうが、ゴミ屋敷を掃除する清掃業者の話。原因不明の手の震えによりピアニストを諦めた主人公と同僚や顧客が織りなす人間ドラマをユーモアを交えて描いた作品

構成としてはオムニバスではあるもののそれぞれの話が繋がっていて、当に「縁は異なもの味なもの」と思わせる脚本が秀逸

ただ、もう少し主人公の成長を描いて欲しかった。ピアニストを諦めるかどうかの葛藤もそうだし、最初はお荷物だったのがいつの間にか戦力になっているし。まあ、それをきちんと描くと映画として冗長になる気もするが

あと、最後のサプライズはいいと思うが、その前は…。ああいう無難なシーンじゃなくて、その前の会話のシーンで終わりの方がインパクトがあったと思う

出来れば映画館でと言いたい所だが、元々上映している映画館が少ないので本レビューを公開する頃には0になっているかも。それと続編が作れそうなので期待したい。プライムタイムにゴミ屋敷は厳しいだろうし、本作のユーモアはおこちゃまには受け入れられないだろうからTVなら深夜ドラマかな

 

・憧れを超えた侍たち 世界一への記録 3.0
劇場公開された作品だが、間もなくアマプラでも視聴可能になったように、本作はアマプラ向けに作られた作品だろう。劇場公開メインだとどうしても大衆受けする内容になってしまうのは仕方ないが、配信向けならもっとディープな内容にしてくれと思う

選手選考や宮崎合宿等本戦が始まる以前の話や、ベンチ裏の様子など本作ならではの要素はあるが物足りない。選手も平等に扱われているとは言い難いし。控え選手を手厚くとは言わないが、メジャーリーガー+村上メインだとやっぱりねとしか言いようがない

選手選考は揉めたらしいが、どういう意図でこの選手達を選んだのか。スタメンを含め選手起用の意図は。また控えに回った選手達の本音は。特に源田が骨折したのにも関わらず、結局源田で行くことになった時の中野の気持ちに迫って欲しかった

あと褒めるほどではないが、山川が出てきたのは良かった。控え選手なので出番は殆どないけど。山川の行為自体は許されることではないが、正真正銘侍ジャパンに選ばれた選手なんだし存在自体を抹消するのは明らかにやり過ぎ。だったら坂本はどうなるんだって話にもなるしね

アマプラ会員が本作を観てWBCの思い出に浸るには悪くないと思うが、ディープな野球ファンが本作を視聴する目的でアマプラ会員になる程の作品ではない。某オリンピックの記録映画みたいにSIDE-AとSIDE-Bに分けて、ライト層向けとコアなファン向けにしてくれれば良かったと思う

 

・リトル・マーメイド 1.0
知らない人はいないであろうアンデルセン童話『人魚姫』。これを原題とした作品は沢山あるが、1989年に公開されたアニメ映画『リトル・マーメイド』の実写映画版が本作

本作を視聴する前にアニメ映画版を視聴(IIは未視聴)したが、正直観なければ良かった。アニメ映画版も傑作とは思わなかったが、本作に比べれば雲泥の差。観た直後だと本作のダメな所が目につく

最初に映像面。確かに綺麗ではある。折角実写映画化したんだし、アニメとは違う映像体験を提供したいのは分かる。ただ、これがリアルで迫力のある映像かと言われるとね。実写とCGのコンビネーションによる美しい映像は『ピノキオ』でも味わったし。すごい映像を見せたいならノーランみたいにCGは使わない位はやってくれないと

それに『人魚姫』は『ピノキオ』よりファンタジー色が強いと思うし。リアリティを追求しても嘘くさくなるし、世界観にマッチしていないと思う

あとアースラを倒すシーンはなあ…。これがリアルに拘った結果なのか。ショボすぎる

次に脚本だが、まず上映時間。アニメ版では83分だったのが、実写版では135分に。正直、長すぎる。勿論、本作は原作に対してもアニメ版に対しても改変されているが、ここまで伸ばす必要があるとは思えない

改変点はかなり多くて、アリエルの姉妹たちの名前とか意味不明なものも多い。全てを網羅しきれないし、してもしょうがない

本作の上映時間が伸びた最大の要因は人間vs人魚(海の生物)の図式をより明確にしたこと。アリエルの姉妹たちがそれぞれの海を治めているように変更される等、これに関わる描写が増えたことで30分は伸びた感じ

ただ、人間と人魚が和解するエンドは悪くはないもののストーリー的には説得力に欠けるし、ここまで上映時間を伸ばしてまでとは思わない。アースラを人間と人魚の共闘で苦戦の末に倒したなら説得力が違っただろうが。先にも述べたが、アースラ討伐が映像的にもストーリー的にも呆気ないのはねえ

最後にキャストだが、当然アリエル役には触れることになる。実写化=コスプレショーではないので黒人でも構わないと思うが、黒人にした意味がないと言うか弊害が目立つ

率直に言って”輝いていない”んだよねえ…。地味。しきたりに拘らずに人間界に飛び込んでくるようなキャラなんだし、人間界のマナーなんて知らなくて当然なんだから、もっとお転婆でいいのに。アニメのアリエルはそうだったでしょ

結局、黒人=学がないというステレオタイプに繋がるようなことはしたくないからでしょ。だったら、白人のままでいい。視聴者が求めているのはアリエルらしさであって、白人か黒人かは関係ない

輝いていないのはエリック王子もそうで、なんか影が薄い。実の子ではないという設定のせいなのか。上述のように対アースラ戦もショボいしね

唯一輝いていたのはアースラ。当に悪女って感じで貫禄十分。トリトン王も頼りない感じだったし、アースラの為の映画だった

かなり長くなったが、一言で言って「原作に対する理解が足りない」。ファンタジーにリアリティを追求して面白くなる訳無いでしょ。映画としてのデキが悪いから”ポリコレ汚染”と感じる人が多くなる。レビュー操作をする位なら批判を謙虚に受け止めろって