2024年に視聴した映画短評(その1)

*今年観た映画なので、今年公開の作品とは限らない。5点満点で最低点は0

 

・VESPER ヴェスパー 1.0
フランス・リトアニア・ベルギー合作のSFダークファンタジーらしいが、本作にSFを期待するだけ無駄。一応それっぽい世界観だが、SF要素の掘り下げは皆無

冒頭にこの世界についての説明があるが、この程度の説明では理解できないし、意味不明な設定も。上映時間は2時間弱なので長くはないが、ダラダラした感じな上に唐突な展開が多いので作品の世界に入り込むのは難しい。ラストもは?って感じだし。終盤慌ただしいのは如何にも次回作の伏線に思えるが、本作の続編を希望する人はいるのかね

B級映画だと思うが、映像はヨーロッパ映画って雰囲気に溢れていて悪くない。望み通りの映像作りだけを考えていてシナリオはお留守だったんだろう。酷評レビューが目立つが、シナリオをもっと吟味していれば(B級映画の)SF作品としてそれなりに評価されそうなポテンシャルはありそうなので残念だ

 

・哀れなるものたち 3.8
原作は1992年に発表されたスコットランドの作家アラスター・グレイの同名小説。何故今更映画化って思ってしまうし、しかも最近何かと問題の多いディズニー映画。その上アカデミー作品賞ノミネート。去年、作品賞にノミネートされた作品は個人的には全てハズレだっただけに嫌な予感しかしないが…

粗筋は自害したもののマッドサイエンティストの気まぐれによって自らの胎児の脳を移植されて蘇生したベラ。胎児の脳だけに体は大人だが行動は幼児そのもの。ただ脳の成長と共に自我が生まれ、ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。旅の途中で色々な場所に行き人と触れ合う中で教養や立ち居振る舞いを身につけていく

とにかくディズニー映画らしからぬエログロでR18+は伊達じゃない。手術シーンはそれなりにグロいが、R18+たる要因はセックスシーンだろう。”熱烈ジャンプ”だけでなく様々な体位でやりまくりで、エマ・ストーンの日本人サイズのバストとヘアをバッチリ拝める

とは言え流石に多すぎる。セックスだけでなくオナニーシーンもあるからねえ。精神的に子供でも体が大人であれば性欲が生じるのは当然だが、相手がいなければ”熱烈ジャンプ”に興じることはできないし。最初は猿のように”熱烈ジャンプ”を欲していたベラも徐々にセックスに感情が伴うようになり、それ故にダンカンと反りが合わなくなっていく等セックスシーンの持つ意味は大きいのだけど

それと男性目線だと男性が悪者にされるのはちょっとね。まあ、全ての男性が悪く描かれている訳では無いし、立場の強い人間が立場の弱い人間を物のように所有したがるのを皮肉っているのだと思うので、原作を考えれば立場が上の人間=男性でも仕方がないのかなとも思うが

最後に上映時間が長すぎる。セックスシーンもだが旅に出るまでも長いので、この辺を切り詰めるなどして2時間以内に収めて欲しかった

お小言はこれ位にして、本作が評価される大きな要因が映像美だろう。モノクロとカラーのコントラストもさることながら、撮影方法やライティング、衣装や小道具も素晴らしくて幻想の世界にいるよう。このリアリティの無さが本作の過激さを上手く中和しているように思える

あとはエマ・ストーンの演技。幼児(というより獣か)から大人の女性までかなり振れ幅が大きい役だが見事に演じきった。納得の主演女優賞だろう。ダンカン役のマーク・ラファロも如何にもクズ男って感じで嵌っていた

ヨーロッパ映画というと難解でストーリーが良くわからないものが多い印象を持つ人が多いだろうが、本作は解釈は人次第とは言え、ストーリー自体は明快だし、オチを含めて皮肉が効いたヨーロッパ映画らしいコメディ作品だと思う。ただ、エログロ(特にエロ)が苦手な人、ベラもそこまで共感を集めるキャラではないと思うのでキャラへの好感度が作品の評価に直結する人にはオススメできない

 

犯罪都市 NO WAY OUT 3.5
マ・ドンソク演じる刑事マ・ソクトが刑事らしからぬ大暴れを見せる犯罪都市シリーズの三作目。前作から7年経ち、衿川警察の強力班からソウル広域捜査隊に異動した設定になっている

前作よりストーリーは刑事モノっぽい。青木崇高國村隼が出演していることもあり日本刀を用いたアクションもあってアクションシーンが増えている。兄貴は相変わらず強いのだが、今回は結構やられる。しかし尋常ではない回復力。ハリウッド作品にも出演しているマブリーだが、是非ジェイソン・ステイサムと対戦して欲しいものだw

反面、コメディ要素が減ってメリハリがやや足りない感じ。前作でいい味を出していた班長や情報屋の出番が少ないのは寂しい。とは言え、お約束の”真実の部屋”は本作でも健在だ

今後もシリーズは続くようなのでお約束だけではマンネリになるのは理解できるし、何だかんだで水準以上の面白さはあるので今後に期待したい

 

・ARGYLLE アーガイル 1.8
キングスマン』シリーズで知られるマシュー・ヴォーン監督作品。本作も『キングスマン』シリーズ同様スパイアクションもの

感想を一言で言うと”くどい”。演出も台詞回しもストーリーも。二転三転どころか何転しているか分からないが、頻繁に敵と味方が入れ替わるからといって面白さに繋がるものではない。取ってつけたような話になって、どうせまだまだ入れ替わるんでしょって思ってしまうので敵でも味方でもどうでもいいって思ってしまう

ではアクションシーンはと言えば正直ショボい。アクションではなく(体を張った)コントだと思うべきだろう。サモ・ハン・キンポーみたいにコメディとアクションを両立して欲しいが、それが無理ならもっとコメディに振るべきだったと思う。まあ、ドリフターズとか吉本新喜劇とか”お約束”な笑いが好きな人なら楽しめるのかも

続編が作られるようだが、正直この出来では期待薄だろう

 

オッペンハイマー 1.5
クリストファー・ノーランと言えば『メメント』『インセプション』『TENET テネット』等SF映画のイメージが強いが、『ダンケルク』等SF以外の作品も作っている。『ダンケルク』が戦争映画だっただけに本作もって思ってしまうが、”原爆の父”と呼ばれた科学者オッペンハイマーの人物像に焦点を当てた作品であって戦争映画に期待するなら見るだけ無駄だろう

極力CGは使わないノーランらしい映像作りは健在。カラーとモノクロの混在、時間軸操作もノーランらしいが、頻度が高すぎて作品に集中できない。態と話を追いにくくして内容の薄さを誤魔化しているようにしか思えない

オッペンハイマーの科学者以外の顔を知ることができるのが本作のウリだろうが、アメリカ人にとっては特別な人でも日本人にとってはそうでもないだろう。名前すら知らない人が多いのでは。それに本作を見た後のオッペンハイマーの印象は”赤い種馬”。本作がR15+なのもヤッてるシーンがあるからだろう

とにかく3時間は長すぎる。前半は本当に退屈で寝不足なら熟睡できること請け合い。後半も日本人目線からすれば原爆が投下され甚大な被害が出たことに変わりはない。まあ、アメリカ人目線からすれば「原爆投下は戦争終結に不可欠だった」という定説に疑いを持つような作品が作られること自体がセンセーショナルかも知れないが

日本での上映がかなり遅れたが、バーベンハイマー騒動に関係なくこの内容では日本人の心には響かないと思う。ノーラン信者と映画関係者は称賛するだろうけど、もう提灯記事じゃ動員は見込めないし無駄な努力は止めとけって。3時間だしTV放映は期待できないが、レンタルや配信で十分だと思う

しかし、「オッペンハイマーは原爆投下を知らなかったからそのシーンは描かなかった」は詭弁だわな。素直に「そんなシーンを描いたらアメリカのネトウヨに目の敵にされて今後ハリウッドで映画を撮ることはできなくなる」って言えばいいんじゃないの。そういう意味ではスピルバーグ監督で見たかった題材。監督引退記念作品ならネトウヨなりパヨクなりに疎まれようが関係ないしね