2022年に視聴した映画短評(その5)
*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0
・ウエスト・サイド・ストーリー 0.8
アカデミー賞作品賞ノミネート作品。元はミュージカルで1961年にワイズ監督により映画化(ウエスト・サイド物語)されたが、スピルバーグ監督でリメイク。小生はミュージカルもワイズ版も未視聴で曲もTONIGHT位しか知らない
映像はかなり頑張っていると思う。これが1950年代と言われて違和感がないが、クリアで迫力ある画作りは明らかに現代の物。プエルトリコ系はラテン系と分かるキャスティングでどちらの陣営か見分け易い。歌と踊りは高い映像技術によってより素晴らしく見える
但しストーリーは…。ミュージカルは歌と踊りと言うまどろっこしい表現で伝える点からストーリーは薄くなりがちで、ストーリーより歌や踊りの迫力、臨場感等により登場人物に感情移入できるかだと思うが、本作に感情移入できるような人物はいない
その理由の一つが時代錯誤。移民問題は現在のアメリカでも大きな問題だが、本作で描かれているのは単なるチーマーのいざこざ。ロミオとジュリエット風の恋愛も今の時代にはねえ。今、ロミオとジュリエットを作りたいなら〇室-〇子夫妻を題材にした方が遥かに面白いと思う
じゃあどうすればいいんだと言われそうだが、率直に言ってリメイクに向いていない。例えるなら、ぼくらの七日間戦争のような感じ。現在の価値観とあまりにかけ離れていると原作に近い感じでも今風に寄せても違和感の塊になってしまう
本作は原作に近い感じと思われるので旧作の思い出補正に浸れる人にはいいのかも。ロミオとジュリエット風の恋愛、東京リベンジャーズのような世界観なので女性向きの作品だと思う
・ポゼッサー 1.5
SFノワールとあるが、ノワールと言うよりはグリ(灰色)って感じ。何をしたいのか分からんと言うか、中途半端と言うか
SFとして斬新な所はない。やってることは攻殻機動隊のゴーストハックをまどろっこしいやり方で実現しているだけだし。2つの人格が対立する様もその葛藤を描けているとは言えず、単に話が分かりにくくなっているだけに過ぎないし
映像的にはSF的要素は今時のVFXだが、グロシーンは昔ながらの特撮なのは単にお金の問題かも知れないが面白い。画作りのセンスはお父さん譲りなのかな
この映画をノーランが撮ったらエンタメ色の強いSFになりそうで、散々手垢のついたテーマをどう調理するかを含めて興味深い
・永遠の831 0.3
まずアニヲタとネトウヨは回れ右。特にアニヲタはネトウヨ率高いと思うし酷評確実だろう。じゃあ神山健治監督のファンにお勧めできるかと言えば…。ひるね姫に比べて社会風刺色は強いが、攻殻機動隊や東のエデンには遠く及ばないお粗末な作品。一体誰に向けて作ったんだろうか
作画に関してだが風景に関しては悪くない。今時のくっきりはっきりこそ至上だと思っている人には物足りないだろうが。問題なのは人物で、表情に乏しい上動きが不自然。止まっている筈なのにゆらゆらしていて画面酔いする人もいるのでは。アニメファンにはエクスアームの様だと言えば分かるか
脚本についてだが色んな要素を混ぜすぎで何が本題なのか分からない。テロが題材なら残響のテロルの方が数段マシ。明らかに尺不足でアニメで説明しなければいけないことを軒並みナレーションで済まそうとするからストーリーがより薄く感じるし登場人物に感情移入などしようがない
更にエンディングは安っぽい〇〇シーン。某青春映画がギガヒットして以降その方向に寄せるように圧力がかかるようなので本作もそうなんだろうか。ただ、ここまでのストーリーがあんまりな上にヒロインも画だけの問題でなく感情に乏しいのでこれっぽっちも盛り上がらない
本作は珍しく似非声優を使っていないが、ヒロインがここまで無感情なら〇〇〇〇でも起用して壮絶な棒演技を披露して貰った方が少しは話題になって良かったかもね。演技以前に脚本が終わっているので、演技で台無しとは言われないだろう
やっぱり一人で監督と脚本は無理があると思う。本作の評価をどうしようかと迷ったが、これを0点にしたら〇〇や〇〇は永遠の0になるからなあ。限りなく0に近い0.3と言うことで
・SING/シング:ネクストステージ 3.5
前作は登場人物が多すぎてフォーカスが甘く発散していた感じであまりいい印象がないが、本作は良く出来ていると思う。ただ、レビューサイトでは前作の方が良かったと言う人も多くて何を求めるかなんだろう
前作は潰れかけの劇場を再建する話だったが、本作はエンタメのメッカで新しいショーを披露する夢を実現する話。コメディ要素で話の腰を折るようなこともなく、話はテンポ良く進む。終盤はショーをがっつり見せてくれるし、前作よりミュージカル方向に振った作品になっている
正直ストーリーは薄いが、本作にストーリーを求めるのは違うと思う。ただ、前作と比べて人間ドラマが無くなった分物足りなく感じる人はいるかも。個人的には見た目が動物なので人間だとやりにくいようなブラックなネタを仕込んで欲しかったが、このご時世ジミーがプーチンに見えて仕方がない
本作は前作を観ていなくても楽しめると思うが、キャラの背景については本作では触れられていないので前作を観ていた方が楽しめるのは確か。映像は美しく、歌も素晴らしいので是非映画館でどうぞ
と褒めて終わりたいが、本作は吹替版ばかりで字幕版の上映がかなり少ない。本作の配給が東宝東和な時点でお察しだが、豪華芸能人を使っている都合上吹替版に誘導したいのが見え見え。どちらを選ぶかは観客の自由。東宝はそんなに消費者庁コラボがしたいのかね。これは大幅減点せざるを得ない
・愛なのに 3.7
「アルプススタンドのはしの方」の城定秀夫と「愛がなんだ」の今泉力哉が互いに脚本を提供してR15+のラブストーリー映画を制作する企画「L/R15」の作品で本作は監督城定、脚本今泉。逆の組み合わせの「猫は逃げた」も上映されているが、こちらの方が好みに合いそうなので鑑賞
今泉の脚本をVシネマも手掛ける城定が手掛けるとこうなるのかって感じ。濡れ場が多いのをどう捉えるかだが、大人の恋愛だしSEXも愛の形。ただ、今泉が監督ならこうはならないだろうから、今泉監督のファンにとっては不満かも
今泉の脚本なので答えの出ない禅問答の様だったり、片思いの筈がベクトルが逆になりつつある様子も描いているが、本作は恋愛の機微を描いて考えさせるよりは「細かいことはいいんだよ」とばかりに笑い飛ばす作品だと思う。ただ、人によっては身につまされる話だとは思うが
脚本はダラダラ感は無いし、愛なのにと言うタイトルを意識させられるシーンが度々あって悪くないが、一体どう終わらせるんだろうと不安にはなった。御心で終わっても面白かったと思うが、愛=SEXがテーマじゃないからね。まあ、本作のラストシーンは秀逸で不満はないけど
いただけないなと思ったのは両親が出てくるシーン。テーマには沿っているし無意味ではないが、ベタオブベタな展開はちょっとね。せめて両親も〇〇のお世話になるとか捻って欲しかった。いくら娘とは言え、手紙を勝手に読むのは法律的にアウトだしねえ
本作は濡れ場がない方がヒットしたのではと言う意見があったが、それは疑問。監督・脚本は映画好きには響くだろうが、一般層には?だと思うので恋愛映画好きが観るとも思えないが。寧ろ、小生の様に恋愛映画は苦手勢が見に来ると思うので結局行って来いだと思う
P.S. さとうほなみ=ほな・いこか=ゲス極のドラム、知らん人が多いんだな。まあ、映画やドラマ、音楽の双方に興味がないと分からんか。あと濡れ場に驚いた人も多かったみたいだが、「彼女」を見た人は少ないんだろうなあ。ネトフリ配信だし作品の出来もイマイチで話題にならなかったしね