2023年に視聴した映画短評(その11)

*今年観た映画なので、今年公開の作品とは限らない。5点満点で最低点は0

 

・SAND LAND 3.8
ドラゴンボール』や『Dr.スランプ』で知られる鳥山明の2000年に発表された同名短編漫画をアニメ化

作画は最近のアニメ作品に比べると正直見劣りする。ただ、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』のような作画が本作に合うかと言えば話は別で、世界観を保ちつつ今風になっている感じ

短編ということもあり、そこまで話に広がりがあるわけじゃない。勿論、ツッコミ所も多い。しかし、種族や世代が違う3者が友情を深め目的を達成するのは当に(ジャンプ的)少年漫画って感じだし、ある意味今話題の多様性にも配慮している

別に鳥山明が多様性を考慮して作ったわけじゃないだろうが、マッチポンプなストーリーも今の社会を揶揄していると言える。『マイ・エレメント』が受け入れられているのも、露骨ではなく比喩的なやんわりとした主張だからだろう。昨今のポリコレはストーリー抜きで強引に自分たちの主張をするだけだからねえ

まあ、主張云々はそういう見方をしなければそう思わないだろうし、ベルゼブブのタフさは◯◯◯◯◯◯◯人かよって突っ込みたくなる位、昭和から平成初期にかけての鳥山明ワールド全開って感じなので、おじさんは楽しめるだろうが若い人にはノリが古臭く感じるかも。映画評論家は『バービー』のゴリ押しに必死だが、おじさんにはこっちの方がいいと思うなあ

 

・マイ・エレメント 2.0
ディズニー傘下のピクサーによるアニメ作品。最近のディズニーはポリコレ色が強い作品が殆どだが、実写のみならずアニメもポリコレ汚染が進むのか不安になる

本作を一言で言えば「ディズニー版(えんとつ町の)プペル」。勿論、話は違うが、ファンタジックでキレイな映像とメッセージ性の強さはプペルを彷彿とさせる

ストーリーは正直物足りない。展開に乏しく、謎も残ったままだし、(この展開の遅さなら)ここで終わりだなって分かってしまうし。本作に限らずピクサーはメッセージ性が強い作風で、ダイレクトに黒人万歳ではなくエレメンタル=人種という柔らかい表現で普遍的なメッセージを込めるのは良いと思うが、(プペルもそうだが)メッセージを伝える為だけの作品って印象しか残らないのは残念

それと邦題の『マイ・エレメント』は如何なものか。エレメント=元素って訳しているけど、この作品で扱っているのは四大元素(火・水・土・風)に由来する四大精霊でしょ。エレメントにも四大元素って意味はあるけど、一般に元素って言えば水素とか酸素とかを想像する筈。原題は『Elemental』なんだし、せめて『マイ・エレメンタル』にして欲しかった。と言うか、普通に『エレメンタル』で良かったと思うけどね

もう一つ、当方は字幕版を視聴したが吹替版はどうなのかね。予告編を見る限り、川口春奈の演技がやばそうな上に声もキャラに合っているとは言い難い感じ。字幕版の声優はハスキーボイスだからねえ

正直、大人が見る映画としては物足りないと思うが、家族向けの作品としては悪くないと思う。ただ、マリオみたいに頭を空っぽにして見る作品ではないので子供に受けるかは疑問だが。本国とはウラハラに日本でもそこそこヒットしているが、映像以外のセールスポイントはないのでメガヒットは望めないだろう

 

バイオハザード:デスアイランド 1.5
カプコンの大ヒットゲーム「バイオハザード」シリーズをモチーフにしたアニメ映画。ゲームのアニメ化や実写版のリメイクではなく、スピンオフ作品。前作(「バイオハザード: ヴェンデッタ」)の1年後のエピソードを描いているらしいが、当方はゲームはプレーしていないし、映画も殆ど観ていないので詳しいことは分からない

まず作画だが、流石の最新技術で実写と見分けがつかないと言いたいところだがそこまでではない。今の技術の限界なのか動きがぎこちない所が見受けられる。最新のゲームエンジンであるUnreal Engine 5(UE5)もかなりの映像レベルに達しているので、この程度では驚嘆には値しない

ストーリーの前に気になったのはキャラ構成。メインキャラ5人の内、男性2人、女性3人なのはいいとして、全員白人なのは大丈夫と思った。スピンオフだから自由にできる筈だし、アメリカで公開したらポリコレで叩かれるんじゃないのって思ったら、本作のウリは歴代の主人公が揃うことなのか

ただストーリーは正直低レベル。歴代キャラ勢ぞろいの”同窓会”映画はアメコミ系など最近の作品に多いが、どれも大味な感じ。全員に活躍の機会を与えることが最優先になって、ストーリーはマッチポンプで雑になりがち。本作も何で単独行動から始まり、ツッコミ所には事欠かない

スピンオフで独立した話ではあるが、前作やゲームとの関連性がある要素が多いと思われるので初見勢が楽しめるかは微妙。この手の作品が好きで映像に何点つけられるかだろう。基本的にはバイオガチ勢かつオールスター映画が好きな人向けの作品だと思う

 

・バービー 0.5
何故か見る機会があったので、率直な感想を。バーベンハイマー騒動を始め、某漫画家のツイートが炎上するなど”場外戦”は盛り上がっているが、肝心の映画の中身は…

本作を語る上でポリコレやフェミニズムの話は切っても切れないと思うが、正直それほどでもないと思った。一部の人が言う反フェミニズム映画とも思わないし。主張は薄めと言うか何が主張なのか良く分からん

本作はブラックジョーク多めのコメディ作品として捉えるべきなのかと思う。去年のアカデミー作品賞にノミネートされた『ドント・ルック・アップ』みたいな感じ

ただ、『ドント・ルック・アップ』は個人的には大変面白かったのだが、本作は…。理由はネタが分からんから。『ドント~』は明らかにトランプやマスコミを揶揄しているのが分かるのだが、本作は何を揶揄しているのか分からんのよね

バービーは長い間販売されているので、数々の”黒歴史”があってそれを揶揄しているであろうことは分かるのだが、その失敗作自体を知らないとだから?って感じ。例えば、「大失敗した」と言われて「どの位」と返したら「ピピンアットマーク位」と返されたようなもの。ゲームに詳しい人なら笑えるネタだと思うが、多くの人はピピンアットマークを知らないだろうから反応しようがないだろう

別の例えをするなら、コ◯◯◯◯や東◯◯◯◯◯の動画を強制的に視聴させられている感じ。別に彼らのファンにどうこう言うつもりはないが、彼らの動画は内輪ノリの極致みたいなものでしょ。ファンにとっては面白くても、ファン以外が観たら全く面白くない訳で

一応、本作はバービーネタ以外も仕込まれていて、冒頭部分は「ツァラトゥストラはかく語りき」が印象的なあの作品のパロディであることは分かるだろうし、他にも映画ネタは仕込まれているが、それで映画ファンが満足できるかといえばそうではないだろう

正直誰におすすめと言い難い作品。フェミニズム映画としては弱いし、バービーに思い入れがあるという点では女性向けではあるのだろうが、女性でも不愉快に感じる人は多そう。日本では「批判しちゃいけない病」が流行しているように、ブラックジョーク=不謹慎と思う人が多いから。強いて言うならブラックジョーク好きでバービーにも詳しい人向けになるが、そんな人日本にどれだけいるのかね

P.S. マスゴミと言うか三流映画ライター共に猛省を促したい。いい加減、提灯記事は止めろ。こんな作品、日本で受けるわけないのは分かっているだろう。最近、アメリカを始め他の国でもセールス好調だった作品が日本でコケるケースが目立つが、その要因の一つが提灯記事だろう。”失敗体験”が刷り込まれているから、煽り=危険って察知してしまうんだよね。万人受けしそうな作品だって受け付けない人はいるが、明らかに賛否が分かれそうな作品(最近だと『エブエブ』とか)をゴリ押しするのはいい加減止めた方がいい。アカデミー賞とか全米興行収入No.1とか見る人には全く関係ない話だ

 

MEG ザ・モンスターズ2 1.0
2018年の映画『MEG ザ・モンスター』の続編。本作を視聴する前に前作を観たのだが、ぶっちゃけ前作の方が良かった

本作で進化したのは映像面。前作から5年経っていることもあり、CGも進化しているので迫力が増している。ただ、CGの進化に対して模型(?)がショボいからバランスが悪く感じる

前作は当に「内容は無いよう」で「そうはならんやろ」と突っ込まずににはいられない位人が海に投げ出され、そこに迫るメガロドン(サメ)。さながら吉本新喜劇のような”お約束”だが、人間vsメガロドン、そしてジェイソン・ステイサムの強さが伝わってきて傑作とは言わないものの、それなりに楽しめる作品だったと思う

それに対して本作は色々詰め込みすぎ。前半の海底探検はとにかく退屈。原題は『Meg 2: The Trench(海溝)』なのでタイトルに偽りなしではあるのだが、画面は暗いは話は良く分からんわで寝不足なら寝るだろうな

サメだけじゃ飽き足らないのかタコとかイグアナ(?)が追加されたり、新たな勢力が登場して話を膨らませようとしているのは分かるのだが、脚本が穴だらけなのは前作同様だし、全てをぶん投げて終わっているからねえ。肝心のサメ狩りも良く言えばスタイリッシュ、悪く言えばあっけなさ過ぎる。しかも、他の話の方がメインでサメ退治はおまけって感じ

恐らく次回作を作る気なのだろうが、正直このクオリティではねえ。ステイサムの熱狂的ファン以外は観る価値はなさそう