2021年に視聴した映画短評(その10)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・2887 2.8
アベ政治の検証映画。タイトルの2887は2019年11月に首相通算在職日数が桂太郎の2886日を抜いて歴代最長になったことに因んでいる。因みに、2020年9月に内閣総辞職するまでの通算在職日数は3188日、第2次安倍政権の2822日も連続在職としては歴代最長である

本作の良い所を挙げると、まず(不十分だが)テーマに沿って検証している所。最近の政治映画と言うと「パンケーキを毒見する」になると思うが、スガ政治の検証と言う点ではかなり不満が残る出来。まあ、パンケーキ~は政治に興味がない層にも興味を持って貰うことの方が主軸なのかなと思うが

次に、批判のベースを定めている所。日本国憲法の前文だったり安倍政権発足時の施政方針演説だったり「前提」「初志」に対してになっている。安倍政権に限らず最近は論点ずらしが当たり前になっているし、批判する方も兎に角こいつは悪いんだって無理筋な批判になることも多いので

他には松元ヒロがいい味出している。ドキュメンタリーと言えども映画としてエンタメ性は必要だし、話と話を繋ぐ潤滑油的な役割を果たしている

良く中立じゃないという批判があるが、特にドキュメンタリー映画はメッセージ性が強い訳で中立なんて有り得ないと思うが。中立じゃないと喚く人の多くは自分の主張にそぐわないことを言い換えているだけだし。ただ、本作に関してはアベ政治の功の部分にもスポットを当てるべきだったと思う

各テーマについても簡単に見ていくと、

憲法改正
事あるごとに憲法改正と口にしてきた安倍。憲法第9条に自衛隊の存在を明記することの先にあるものは?と訝るのも自然だろう。ただ、憲法改正に反対でも、そもそも自衛隊の存在が違憲とか如何なる事があっても自衛隊は海外に行くべきではないと考える人は余りいないだろう

現実的な批判としては「(PKO邦人救出等の活動に)自衛隊を海外派遣するのに憲法改正は必要か?」だろう。実際、憲法改正無しで海外派遣している訳で、これについて憲法学者にコメントを貰えれば良かったと思う。まあ、5つのテーマの中では一番出来が良かった

拉致問題」「辺野古新基地建設」
拉致に関してはやる気はないが手柄だけは横取りできる状態に、辺野古に関しては東アジアにはイキるのにアメリカには全く頭が上がらないという安倍らしさが出ているが、これらについては簡単に触れる程度でアベノミクスや他のことに時間を割いた方が良かったと思う

アベノミクス
5つのテーマの内の1つという扱いなのだろうが、安倍政権の看板政策だしもっと時間をかけるべきだっただろう。大企業優遇は分かるのだが、他にも問題点は色々あるでしょ。ネタバレもどうかと思うのでこれ以上は止めておくが

福島原発
率直に言ってこれは酷すぎる。ワイドショーレベル。ただ吐き捨てるのも何なのでもう少し噛み砕くと、まず主張は何?、そして論理が稚拙と言うこと

安倍が福島原発はコントロールできていると言ったのは嘘だと言うのが主張なのか。安倍の嘘なら本作の他の話で触れているようにもっと手短で分かりやすい例がある訳で福島原発を扱う必然性が感じられない。まあ、切り捨てるのも何なので「福島原発の問題はまだ終わっていない」が主張であると解釈する

ぶっちゃけコントロールできているかなんて関係ない。できていようがいまいが現状の問題に対して何とかするのが行政及び東京電力のタスクだし。それより最悪だと思ったのは漠然と放射能(敢えてこう記述する)の恐怖を煽る所

人体を構成する蛋白質。主な成分は炭素と水素だが、炭素も水素も一定割合の放射性同位体を含む。放射性同位体は文字通り放射能を持つので言い換えれば人間は放射能と言うことになる。それから、福島原発周辺以外の空間放射線量の高い地域は福島の汚染物質が拡散したから除染しろとでも言う気なのか

空間放射線量は総じて(福島の影響を受けたとは考えられない)西日本の方が高い。それは御影石(御影は神戸の地名)で知られるように土壌に花崗岩を含むので、花崗岩に含まれる放射性物質γ線を放出するから

じゃあ西日本になんて住んでいられないって話になるが、日本人の年間平均被曝線量は約6mSv、うち自然放射線による被曝線量は約2.1mSv。空間放射線量の違いは都道府県平均だと0.4mSv程度なので局所的に放射線量が多い場所に住まない限りは大差ないレベルだろう

この位にしておくが、何も分かっていない素人がTV番組を見て焚き付けられて作ってみました感は否めない。ここまでチクチク言う人は少ないにしろ、原発の話は他にもツッコミ所があるし疑問を持つ人が多いのではなかろうか

テーマ以外では辞める辞める詐欺については取り上げていたが、国会答弁を問題にするならご飯論法(「朝ごはんは食べた?」「(パンを食べたので)ご飯は食べてない」のように曲解で論点をずらすこと)を取り上げないと。代表質問は制限時間があるので、こういう答弁で時間を潰して逃げ切れてしまう

それから安倍政権下で辞任した大臣の話があったが、ドリル小渕等政治資金の杜撰な管理によるものが目立つ。安倍自身もモリカケ桜等疑惑に事欠かないので政治とカネの問題を取り上げると思っていた

ただ、個々の疑惑についての説明も必要だし、捜査が進まないことには疑惑止まりなのも事実で敢えて取り上げないのはアリだと思う

一番の不満はタイトル回収が出来ていないこと。「何故、安倍政権は2887日も続いたのか?」という視点が皆無なので。一番広い解答をするなら「政権を私物化して好き勝手やってきたから」だと思うが、じゃあそれは具体的に何なのか?

答えは沢山あるし、本作の中にも答えは散りばめられているが、最大の秘訣がアベノミクスなのは疑いようがなく、それ故アベノミクスについてはもっと掘り下げて欲しかった

この映画を未来への警鐘にしたいとのことだが、警鐘とするなら何故長く続いたかの視点は絶対必要。日本は曲がりなりにも議会制民主主義国家。悪政であっても政権が短命に終わればやれることは限られる訳で

この映画をお勧めできる層についてだが、アベ政治に批判的なのは前提として良くも悪くも"素人"目線の映画なのでワイドショー世代、つまり主婦と老人向けだろう。実際、(マスクで分かりにくいが)高齢者が多かった印象

ジャック&ベティは所謂ミニシアターで一般の映画館に比べると若い人が少ないのは事実だが、高齢者がここまで多いのは今まで経験がない。時間帯もあるだろうが、作品の認知度の低さも影響しているかも

採点はパンケーキ~と同様、作品だけの評価なら2点程度かなと思うが、この作品が世に出る意義、素人制作の作品と言うことを考慮してこの点数で

 

・MINAMATA ミナマタ 2.9
この作品は水俣病について扱った作品ではあるが、あくまでユージン・スミスの写真集「MINAMATA」を題材にした伝記風エンタメ作品なので、ドキュメンタリーとして見ると全体的に掘り下げ不足が目立つ

ジョニー・デップと言えば、パイレーツ・オブ・カリビアンでスターダムに上り詰めた感があるが、最近はスキャンダル続き。飲んだくれてすぐやる気を無くす、もう終わったカメラマンという評価であったユージン・スミス役は今のジョニー・デップにオーバーラップするものがある

この作品はユージン・スミス水俣の人たちに受け入れられる所に重点を置いているように思う。ただでさえ尺が足りてないのに感もあるが、ユージン・スミスがそう考えたのと同時にこの映画の制作陣も本作が水俣そして日本に受け入れられて欲しいというメッセージを感じる

映像的には「MINAMATA」に収められた写真が使われていることもあって、映像もどことなく写真的で写真の力を感じることができる作品。ただ、1970年代の日本を感じさせるロケ地探しが難しいのか、セルビアロケなのは残念な所

ストーリーの掘り下げ不足は置いておくとして後半の展開は悪くないと思うが、前半はテンポが悪い。まあ、ジョニー・デップの演技を堪能する映画だと思うが、個人的にはチッソの社長を演じた國村隼の表情が凄く印象に残った

 

スイング・ステート 4.3
兎に角ラストの大どんでん返しが秀逸。特に邦画は大どんでん返しを謳いながら大したことのない作品が多いので、関係者は刮目してこの作品を見るべきだと思う

舞台はインターネット環境が不十分にも関わらず、(アナログな手段で)あっという間に情報が知れ渡ると言う絵に書いたような田舎町。情報が筒抜けの中、どう選挙戦を展開して行くかになるが…

ぶっちゃけ中盤まではそこまで面白くはないが、終盤にかけての展開が見事で"普通でない"結末を予感させてのこのオチは心地よく騙された感じで見事な脚本だと思う

ティーブ・カレルとローズ・バーンの罵り合いも楽しいが、露骨な下ネタが多いので嫌いな人はダメかも

舞台はアメリカなのでアメリカの選挙を皮肉る内容だが、日本にも通じる所が多い。シニカルな作品が好きな人には本作は刺さると思う

 

・マイ・ダディ 3.0
ムロツヨシの演技を堪能するだけの作品。佐藤二朗と共に賑やかし要員の印象だが、本作では普段とは違うシリアス100%の演技を披露している。ただ、折角ムロツヨシ主演ならコミカルとシリアス、両方の演技が見たかった

ストーリーは至ってシンプル。よほど勘が悪くない限り先は読めるし、ツッコミ所も多いので、本作にサスペンスを求めるなら見ない方がいい。それと本予告=オフィシャルファスト映画なので、映画本編が見たいなら新予告にした方がいい

上述のようにツッコミ所は多いが、特に江津子と結婚するまでの経緯はもう少し詳しく描くべきだっただろう。二人は付き合ってまもなく結婚したのだろうが、ひかりが性行為に積極的なのは江津子譲りだと思われ、江津子と一男は婚前交渉しているのは確実だと思うが

一男は牧師という設定で、牧師としての顔と一人間としての顔が描かれているが不十分。牧師という堅苦しい職業と聖職者に似つかわしくないセックスという要素を上手く調理できれば泣き笑いありのストーリーに出来た筈で、そうすればムロツヨシがもっと輝いただろう

上述したように脚本は決して褒められないが、シンプルな脚本は演技を堪能するには悪くないし、ムロだけでなく脇役陣がいい味を出していると思う。中田乃愛は演技はこれからだと思うが、凛とした雰囲気があって今後に期待したい

 

・ベイビーわるきゅーれ 3.5
兎に角アクション。まひろ役の伊澤彩織は女性ながら体幹の強さが感じられ、スピード感溢れるアクションを華麗にこなしている。ちさと(高石あかり)のアクションシーンもあるが、ちさとは演技担当、まひろはアクション担当って感じに思えた

また、殺し屋稼業のピリピリした雰囲気とは相反する日常シーンの緩さが面白い。全体的に小ネタが散りばめられているが、メインは日常シーン。緩い雰囲気でがっつりツッコミが入る訳ではないので、これに笑えるかどうかが映画の印象を左右しそう

難点を挙げると、まず序盤、台詞が聞き取れない。それから、もう少しシナリオを練れなかったものか。ガチッとしたシナリオがウリじゃないのは分かるが、終盤に上手く繋げて欲しかった。そうすれば中弛み感が解消されたかも

続編があるかわからないが、続編は映画よりも時間的に余裕があり組織や二人のバックグラウンドにも触れられる深夜ドラマで観たい

2021年に視聴した映画短評(その9)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・パンケーキを毒見する 2.7
正直、ドキュメンタリー映画としてはイマイチ。2点ってところか。内容を欲張りすぎてフォーカスが甘いし、"演出"も滑り気味。笑えないことはないが、「はりぼて」みたいに自然と苦笑するって感じじゃなく無理やり笑わせに行ってる感が強い。明らかに捻り過ぎ

特別加点要素としては、まず菅についてよく調べたなと言うこと。政治ニュースを良くチェックしている人でも知らない事があるのでは。ただ、その取材力には舌を巻くが、それよりもっと競技やレースについて触れてくれと思う増田明美の解説的なのも事実

もう一点は、堅苦しい作品なんて映画じゃないと思っている人を取り込もうとする意欲は感じられること。ショートアニメは悪くない出来。ただ、本編とリンクしていないのは減点。例えば、ボンボン疑惑を皮肉ってから菅の生い立ちを説明する、しどろもどろの答弁を皮肉ってから学術会議の話をする

それと登場人物が誰かわからないと思う。政治に興味がない層は下手すれば菅しか分からないのでは。加点要素はあるけど、完成度は高くないのでトータル2.7点とする

この映画を観てほしいのはまず若い人。若い人がもっと政治に興味を持たないとなあ。それと横浜市民。特に神奈川2区の有権者は絶対に見るべき。今、市長選の真っ只中だが、これを見れば何故彼がカジノ賛成に寝返ると思われているか分かる筈

この映画をお勧めしたいのは普段映画は余り見ない(特にドキュメンタリー映画)がデーブ・スペクターをフォローしている人。この映画はデーブのツイートのように皮肉が効いているので、デーブファンなら楽しめると思う

しかし、チネチッタは100ワニじゃなくてこれを上映したら良かったのに。系列シネコンじゃないから作品は自由に選べるでしょ。見ずに言うのも何だが、100ワニよりはまともな映画だと思うし客も入ったと思う

 

・少年の君 3.6
東野圭吾のパクリと言われている作品。パクリ元(?)は「白夜行」と言われているが、そんなに似ているかね。「白夜行」を読んでないのでアウトライン位しか分からんが、これでパクリならサスペンスは皆、東野圭吾のパクリってことになると思うが

話は大きく2パートに別れる。前半の恋愛パートには貧富の格差やいじめ等今の中国が抱える問題が描かれているが、いじめは苛烈そのもので邦画じゃここまでの描写は無理かも

後半はサスペンスパートだが正直イマイチ。時間的には前半より短いがダラダラ感がある。面会のシーンはいいシーンだが、そこに至るまでの(心理)描写が不足しているので囚人のジレンマ的な状況が伝わらなくて後半パート自体が蛇足感がある

演出面では台詞が少なめ、時間軸を逆転させるのが目立つ。観客に考えさせたり、行間を補わせることで話に引き込もうとしていると思うが、十分効果が出ていると思う。ただ、色々詰め込み過ぎで少々長いのは残念

あと、残念なのは「薬の神じゃない!」でもそうだったが最後に露骨な中共礼賛が入ること。映画の余韻が台無しだよ。中国映画はこれが当たり前と諦めるしかないのかね

おじさんにとってはヒロインの周冬雨(チョウ・ドンユイ)が可愛らしくて良い。年齢的にはおば…かなりのお姉さんだが制服姿に風俗感はなく、ちゃんと高校生(高中生)に見える。シャオペイ役の易烊千璽(イー・ヤンチェンシー)も中国のアイドルグループのメンバーでかなりイケメン

上映スクリーンが少ないのが難だが、パクリ云々を抜きにすれば悪く言う人は少ない部類の作品だと思うので是非劇場へ足を運んで欲しい

 

・フリー・ガイ 3.2
どこかで見たような話ではあるが、典型的なアメリカンヒーロー映画という感じで中盤まではテンポよく楽しめる。しかし、終盤はグダグダ&ダラダラ感が否めない。話の緻密さを欠くのは許容範囲にしても、なんとかならなかったかねえ

上述したようにツッコミどころは多い。ただ、それで映画として破綻している訳ではないから許せないレベルではないと思うし、ディズニー映画らしく深い所には立ち入らない感じなのでそこまで気にならない

NPCに自我が芽生えて蜂起するというのは、コロナ禍で閉塞感が強い今の社会を何とかしたいというのに通ずるものがある。色々と"オマージュ"があったりして楽しめるし、サービスデーに視聴するには悪くないと思う

 

・アナザーラウンド 1.5
酒の良い面・悪い面を卯建の上がらない高校教師達の群像劇を通して描いた作品。一杯引っ掛けてから授業に行くと口が滑らかになり良い授業ができると言うのはかつて阪急などに在籍した投手、今井雄太郎を彷彿とさせる

ストーリーは正直普通。最後は無理やりハッピーエンドで締めているが、何かスッキリしない。ぶっ飛んだ設定を活かしてもっとコメディに寄せて欲しかった

何かに付けて飲む理由をこじつけて飲むのが酒飲みの性と言うもので、(コロナ禍以前は)会社帰りに一杯やっていくのが当たり前な人は共感できるだろう。酒飲みorマッツ・ミケルセンのファン以外、特にまだおじさんの年齢に達していない人には面白くない作品だろう

 

・サマーフィルムにのって 3.5
どんな映画でもオチは大切だが、この作品の場合は特に重要。意外性があるけど必然性もある秀逸なオチだと思うが、嫌いな人もいるだろうなあ。オチに関してはかなり評価が割れるだろう

次に評価が割れそうなのが演技面。下手というよりは素人っぽい演技をしていると見たが。高校の映画部が作成する映画でまともな演技ができる役者が揃う訳がない。ハダシの猫背&ガニ股も設定なのだろう

キャラに関しては渾名が強烈なこともあり個性が十分に立っている。ハダシ、ビート板、ブルーハワイの絡みは面白いし、映画作りを通して青春している感は伝わってくる

ただ、シナリオの完成度はイマイチ。要素が多すぎて闇鍋状態。その闇鍋の具材を全部活かそうとしているので普通なら破綻するのだが、恐らくオチから遡る形でストーリーを構築しているので何とか纏まった印象。とは言え、要素をもっと絞るべきだっただろう

実際、闇鍋のせいで映画の印象が弱まっている感があるし、終盤のハダシの葛藤に関してもっと時間をかけて描くべきだった。オチは本当に良く出来ているので、もっと要素を絞ってシナリオを練り込んでいれば名作になっただろう

2021年に視聴した映画短評(その8)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・ドリームランド 0.5
評価サイトのスコアが低めでどうかと思ったが、ここまで酷い作品だとは思わなかった。何もかもが中途半端。主人公の家庭はかなり複雑だが、それを上手く使えていない。そもそもフォーカスが甘くて誰が主人公って感じだし

また、兎に角テンポが悪い。この作品は「俺たちに明日はない」のパク…もといオマージュであることはすぐ分かるが、肝心の逃亡劇に行くのが遅い上に拍子抜けするほどの淡白さ。この作品、妹の回想で話が進むが、これに意味があるのは救いか

それから、いくら青二才とは言えユージンは余りに覚悟がなさすぎる。アソコのサイズは知らないが肝っ玉は明らかに小さい。アリソンの手解きでDTを卒業するようなまだ恋愛を知らない男だからこそのラストなのかなと思った。まあ、実際は流石に丸パクリはどうよってことだと思うが

マーゴット・ロビーの小ぶりなおっぱいが観たい人以外にはオススメできない

 

・約束の宇宙(そら) 2.2
長く家を離れることになる職業の代表とも言える宇宙飛行士と子育ての両立というテーマは悪くないが、肝心のストーリーが…。サラの治らない傷とかステラの○○障碍とかぶっちゃけ意味の無い設定が目立つが、最大のツッコミ所はやっぱアレでしょ

いくらフィクションとは言え、防疫体制を根本から揺るがすような行為が許される訳ないと思うが。エヴァ・グリーンのシャワーシーンは何度かあるが、この時だけバストトップまで映る。エヴァの豊満なバストのように盛り上がっているって感じなのか?こちらはあまりの笑撃にテンションだだ下がりだよ…

猫にライカ、娘にステラと命名するほどの宇宙好き。千載一遇のチャンスを得てチャンスを棒に振るような選択をするとは思えないが。欧米人は公私混同は嫌うイメージだし

実際に用いられている機器を使用しての訓練シーンは見所があるし、電話の度にステラの「帰ってきて」オーラを感じて葛藤し訓練に身が入らない様子などはよく描けているが、上述の通りダメなシーンの方が印象に残ってしまう

 

・キャラクター 3.0
刑事コロンボじゃないが、観客には分かっている犯人を追い詰める様を描くのは映像作品向きでプロットは良い。ただ、態々危険な橋を渡るケースが目立つし、犯人の過去の掘り下げが明らかに不足している。エンタメ志向とは言え、単にサイコパス怖いねって軽いノリになってしまっている

評価は2.4点ってところだが、Fukaseの演技が演技とは思えないほどに嵌っている。他の出演者を完全に食ってしまっていて目立ちすぎ感もあるが、この作品はFukaseを堪能する映画だろう。Fukaseに免じて3.0点で

 

・イン・ザ・ハイツ 3.2
ミュージカル作品だが、ラップ風の曲も多いなど全体的に今風でミュージカルの構えた感じが苦手な人にも楽しめるだろう

登場人物たちが抱える悩みは移民を取り巻く社会問題に関わっているが、群像劇でもあり掘り下げることはない。ミュージカルメインなのは分かるが、ストーリーはもっと練り上げて欲しかった

有名な女優が出ているという訳ではないが、ヒロインは美人でスタイルが良くておじさんの目の保養にはうってつけ。エンタメ作品として纏まっていると思うが、絶賛するほどではないかな

 

・アーヤと魔女 1.3
4月29日に公開される予定が8月27日に延期された作品。カットを追加してるとのことだが、大差はないと思われるのでTV放送版でレビューする

この作品で一番ダメな所と言えば内容の薄さだろう。原作は"ハウルの動く城"のダイアナ・ウィン・ジョーンズ。この作品は遺作であり未完で終わっているので、アニメが伏線未回収で尻切れトンボなのは致し方ない面もある

ただ、そういう作品だと分かってアニメ化しているのだから、それを感じさせないようにするのが脚本力だろう。この作品はテンポの悪さも相まって約80分の作品なのに半分位で纏まりそうな内容でしかない

アーヤのキャラは賛否両論だろう。快活なのはジブリらしいが、小賢しいクソガキって感じなのは気に入らない人も多いかも。折角のキャラなので、アーヤがもっと周囲を引っ掻き回すエピソードを追加すれば良かったと思う

アーヤに関してはキャラデザインは何とかならなかったのか。世界観に合っていない感じ。それからEarwig→アーヤ(アヤツル)も何だかなあ。Earwigはハサミムシという意味だが、入れ知恵するという意味もあってキャラに合っている名前だと思うが

それから脚本に関しては雑さも目につく。原作改変は構わないが辻褄が合うようにしないと。ハサミムシのお嬢さん(本作ではあくまでアーヤ)、絵について言われているのに音楽の方を気にしたり(バンドはアニオリ)。バンド設定もお母さんを出したいだけ(原作では出てこない)にしか思えないしねえ…

CGに関しては及第点。ジブリっぽくないのでディズニー(ピクサー)と比較して云々言う人も多いが、金満ディズニー程金をかけられる訳ないし。アーヤのキャラも個人的には好きなので、この位の評価で

2021年に視聴した映画短評(その7)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

ホムンクルス 2.1
前半こそ興味を惹かれるが、後半は何となく話が発展して何となく終わる感じ。トレパネーションホムンクルスについても説明不足でややご都合主義にも感じる

原作は同名の漫画で全15巻。映画の尺では厳しいボリュームでシナリオをなぞるだけで精一杯なのは仕方ない所もある。ただ、前半はいいが、後半は…は最近の清水監督の作品そのもので他の監督ならこの作品の他の部分にフォーカスしたかも知れない

正直、映画よりドラマで制作すべきだっただろう。ネトフリは金は出さないが口は出すイメージでそれが殆ど裏目に出ている印象。極稀に当たりもあるが期待値はかなり低い

糞と言えば、この作品、映画館で上映時には特別料金設定で値引きは一切なし。正直、この出来で1,900円は高いと言わざるを得ず、エイベッ糞いい加減にしろと叫びたくなる

 

・ザ・スイッチ 3.1
ホラー要素はあるが割とマイルド、コメディタッチ、下品な台詞はあるが露出は無しと比較的広い層向けの娯楽作品。登場人物のIQ低めでマッチポンプ気味なのは気になるが、殺られる人物は西村みたいに尊大な奴とか嫌味な人物ばかりなのは爽快感がある

ただ、「ハッピー・デス・デイ」シリーズの監督の作品と言うことで期待が大きかった分イマイチに感じる。設定を活かしきれてないし、ありがちなストーリーなのでもう少し捻って欲しかった。まあ、今回は軽めの作品として制作したのだろうし、演技も笑えて普通に面白いが

 

・21ブリッジ 3.3
チャドウィック・ボーズマン扮するデイビス刑事は聡明且つ信念の人という感じでとてもかっこいいし、上映時間が短めなこともありテンポは良く、銃撃戦や逃走劇も迫力があって娯楽作品として良く出来ている

ただ、ストーリーは正直ベタ、タイトルもストーリーとの関連性が薄い。もう一捻りあれば良かったが、それ故何か足りないと思わせる作品ではある

 

・パーム・スプリングス 2.9
いきなり軽薄そうな男が出てくるし、下品な台詞も多いし、リゾート地の開放的な雰囲気と相まってバカップルがS○Xしまくりの軽いノリの映画だと思ってしまうが、おっぱい露出はないし、後半はシリアス展開なのでエロは期待しない方がいい

本作はタイムループ物で焦点は如何にしてループを脱出するかだが、この部分に関してはイマイチ。他にもループしている人物がいるので上手く絡めて欲しかったが、それが売りではないってことだろう

この映画は悩める男女がお互いの理解を深めながらデートを楽しむ様子や、ループに疲れ達観している男と是が非でも脱出したい女のスタンスの違いがお互いに影響を与え合う様子に重きを置いた作品なので、SF要素に期待しなければ十分楽しめる。個人的にはもう少しループ脱出に力を入れて欲しかったが

 

・AGANAI 地下鉄サリン事件と私 3.5
地下鉄サリン事件の被害者であるさかはらあつし監督がアレフ荒木浩広報部長に迫った作品。力作ではあるが、正直映画としては…。まずは、細かいところからダメ出ししていくと

冒頭、地下鉄サリン事件の映像が流れるが中途半端。触れる気がないならナレーションだけ、触れるんだったら10分程度でもう少し詳しく事件の概要を伝えた方が良かった。事件から20年以上経って、生まれる前の話、ガキの頃で記憶にない人が増えているが、その世代は観なくてもいいとは考えてない筈

次に字幕はできれば全てに付けて欲しかった。特に荒木氏はぼそぼそ喋るので全体的に聞き取り難い。帰依とか普段余り使わない言葉だが、だったらグルとかオウム用語こそ字幕をつけるなりして説明が必要では。まあ、グルが智津夫のことなのは文脈で分かると思うが

それから旅行に行くのはいいが、行程は字幕等で示しても良かったのでは。この映画に旅要素は期待していないが、色々な縁の地を訪れ、軽い話題も交えながら、心を開かせ核心に迫ろうとしているプロセスはより伝わるのでは。まあ、細かい話はこれくらいで

ラストは賛否が分かれそう。個人的には悪くないと思ったが。マスゴミ批判が目的ではなく、荒木氏に迫っているのは詰る為ではないと言うメッセージだと思うので。謝罪に意味がないとは言わないまでも、今更謝罪されてもそれでどうなる訳でもなし、そもそも謝罪は期待できない訳で

後はもっと荒木氏に語らせて欲しかった。なかなか心を開いてくれないのは分かるが、気分良く喋らせるのがインタビュアーの腕だし

それから、死刑囚が一斉ポアされた件について荒木氏及びアレフとしての考えを聞いて欲しかった。一斉ポアに関しては無駄に刺激するだけと批判も多かったし、実際その日を特別な日としてイベントとかやっているようなら警戒しないといけないし。○周忌記念のテロとか冗談じゃない

人間は満腹時に奢って貰ったステーキより炎天下で激しく喉が渇いている時の一杯の水のことを覚えているもので、そういった心細さに付け込んでくる喪黒福造のような人間を拒否できないものなのだろう

ただ、9.11といい確信犯(政治的・宗教的信念に基づいて行われる犯罪)は傍目には全く理解できないが、逆に言えばこれだけのことをあっさり成し遂げてしまう組織に洗脳されてしまったら抜け出すのは至難の業だろう。今の不寛容な世の中だと抜けても白い目で見続けられることになるから尚更だ

日本にいて災禍と言うと地震や台風が真っ先に挙がるだろうが、SNS等の普及によりエコーチェンバーな人が多い現在、誰かがトリガーを引けばテロは簡単に起こり得る。地下鉄サリン事件は被害もさることながら、確信犯の恐ろしさを後世に伝える為にも絶対に風化させてはならない

2021年に視聴した映画短評(その6)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・シンクロニック 1.8
素材はいいのにシェフの腕が…の典型。SF一本で行く気はなかったのだろうが、SF部分はかなり甘いし、ヒューマンドラマとしても特筆するようなことはない。ストーリーの進行が遅くてオチも寒い、正直褒められた作品ではない

伏線は丁寧に仕込んでいる印象でタイムトラベルは唐突な話ではないが、テンポが悪くなってオチも見え見えだし上手く使えていない。行き先がニューオーリンズの歴史を反映しているのは面白いが、何故、毎回襲われる?とか考えてしまうと冷めてしまう

ゴミと吐き捨てる程つまらなくはないし、映像的には頑張っている。細かい事は気にしない人ならそこそこ楽しめるかも

 

・彼女 1.5
この作品を端的に言えば、テルマ&ルイーズの上っ面だけを舐めた、原作を雑に切って張り合わせただけの凡庸な映画。映像的には攻めているが、シナリオは正に「これだから邦画は〜」と言われかねない中途半端な脚本で内容の割にダラダラ長い印象

原作は中村珍の羣青(ぐんじょう)。全3巻のうち上巻だけ読んだが、ボリューム的に原作に忠実な作品にするには映画の尺では厳しい感じで、大幅なカットや改変は必須と言える

音楽はテルマ&ルイーズを意識したのか明るい軽いノリの曲が多いが、全く合っていない。原作は殺人を犯した罪悪感と同性愛に揺れる心の機微を克明に描いた作品のようだが、本作では心理描写が明らかに不足していて、情緒不安定で行きあたりばったりにしか見えない

本作の最大の話題性は過激な性描写だろう。水原希子さとうほなみ(=ほな・いこか)のヌードは勿論、絡みもある。因みに、所謂ガッカリおっぱいではないのでそこは御安心を。ただ、上述の通り心理描写が不足しているので絡みの必然性に乏しい。過激な性描写ならVシネマ等でも見れる訳で

原作通り緻密な心理描写をするか、テルマ&ルイーズ路線に大胆に改変するかのどちらかにして欲しかった。明らかに無理なボリュームにまで圧縮して駄作化するネトフリの闇の典型のような作品になってしまった

 

・アウトポスト 2.5
後半の戦闘シーンはかなりの迫力でこれが戦場だと思わせるものだが、前半は…。アウトポスト(前哨基地)での出来事なので単調なのは仕方がない所はあるが、余りに細切れ過ぎる。全員にスポットライトを当てたいのだろうが、皆軍服だし誰が誰だか覚えられない

正直、並の戦争映画。戦争映画好きがサービスデーに行くにはいいかも

 

スプートニク 3.7
ポスターを観るとエイリアンvs人類の壮大なバトル物に思えるが、はっきり言って地味な作品。ストーリーに粗はあるが、逆にソ連らしいと思わせる部分もある。伏線はきちんと回収しているし、この手の話としては意外な方向に向かうのが面白い

難点は中弛み感があるのと、子供の話がくどい。無理に分かりにくくする必要はなかった。映像的にはそこまででもないが、クリーチャーは良く出来ている。グロシーンは少ないが、耐性無い人はきついかも

この作品はソ連末期の設定だが、全体的に暗い映像、重々しい音楽は実にそれらしい。施設の場所がカザフスタン(バイコヌール宇宙基地があるからだろう)、冒頭の歌は元はラトビアの曲と当時はまだ一つの国だったのだと実感する

 

・AVA/エヴァ 2.0
この作品の最大の注目点と言えばジェシカ・チャステインのアクションだが、よく頑張ったで賞って所か。ただ、アクション慣れしてない上に小柄(163cm)なこともあって、もう一つ迫力が足りないのも事実。最後もラスボス(コリン・ファレル)が弱いだけにしか見えないし

肝心のストーリーだが、アクション物なので多少の粗には目を瞑るにしてもありきたりな上にサイドストーリー(と言うよりこちらがメインかも)も色々あるので、全体的に浅い、詰め込みすぎな印象。まあ、テンポが悪いよりはマシだが、話が撚れている感も強い

この作品がユニークなのは、サイドストーリーと言うか主人公を掘り下げている所。そんなの当たり前と言われそうだが、職業が殺し屋となれば話は別。ただ、主人公の家族や過去、心の葛藤を掘り下げて面白いかと言えばそうでもなく、ただでさえ中途半端なストーリーが更にガバガバになるだけなのが現実

この終わり方だと続編も考えていそうだが、このデキでは観たいとは思えない

どうでもいいことだが、エヴァヲタがチケット買う時はちゃんとエヴァンゲリオンと言った方がいい。EVA(邦画)とAVA(洋画)の区別がつかないから。最近はネット予約が主流だから、窓口で購入する機会は少ないと思うけど

2021年に視聴した映画短評(その5)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・Mank/マンク 2.0
策士策に溺れると言うのが的確であろう作品。白黒の画面は逆に今っぽく感じる。画面が全体的に暗いのは仕方ない所もあるが、おかげで登場人物の判別が難しくなっている。テンポからして当時の映画ではないし、素直にカラーで良かったと思う

この作品は「市民ケーン」の脚本家ハーマン・J・マンキウィッツの視点で「市民ケーン」の舞台裏を描いた作品だが、この作品自体が「市民ケーン」のオマージュになっていて年季の入った映画ファンには堪らない作品だろう

ただ、終盤に盛り上がる感じでもなく、人物の掘り下げが不足している。マンクはアル中で皮肉屋で短気という褒める所のないダメ人間にしか見えないし、他の人物も気が短い人物ばかり。上述の登場人物の判別の問題もあって、同じような人物ばかりに見える

市民ケーン」を見ていた方が楽しめるだろうが、それより世界恐慌ニューディール政策(で、銀行を強制休業させ実態調査→預金保護)、1934年のカリフォルニア州知事選挙で庶民の味方シンクレアを富裕層の権益を守りたいハーストが潰しにいった当時の社会情勢を頭に入れておいた方がいい

 

・シカゴ7裁判 3.6
この映画の最大の見所と言えば、やはりラストシーンだろう。いくら現実を元にしたフィクションとは言え、判決を変えるのは流石に無理で別の見せ場が必要になる。ただ、このシーンは現実では裁判の途中で行われ、判事によってすぐ止めさせられたことは覚えておきたい

裁判映画なので画的には地味だが、正に悪代官の判事vs正義に燃える弁護士というベタ過ぎる構図に徐々に明らかになっていく事実、ショッキングな出来事はエンタメ性も十分で徐々に引き込まれていく。多少、やり過ぎな感があるが

この映画はベトナム戦争の頃の話だが、正直今でも驚かない。日本でも雀豪任期延長事件があったし。国民審査で辞めさせられた裁判官は0、政府が人事に強く介入しようとしている最中に家栽の人になろうとはしないのが現実だろう

この作品はNetflix制作なのでそのままの邦題になっているが、一応映画館でも公開されたしもう少し工夫が欲しかった。日本でシカゴ・セブンを知っている人は殆どいない筈で、このタイトルだとあまりそそられないと思う

 

ノマドランド 1.5
貧困を題材とした作品と言う点で「ミナリ」と共通しているが、「ミナリ」の方がテーマが明確な分まだマシだった。展開に乏しい点は共通だが

アメリカの雄大な風景と美しい音楽を楽しむ作品なのだろうが、ロードムービーと呼ぶには重すぎる作品。短気労働をしながら各地を転々とする様はタイトル通りノマドのようであるが、好き好んでノマド生活をしている人は少数な訳で

終始淡々と進む感じで盛り上がりに欠ける。終盤、いい話(?)っぽい語りが多くなるが、で?って感じで、この作品として貧困問題をどう捉えてどう解決していこうというビジョンが全く見えない。貧困を題材にした作品は数多いだけに、雰囲気だけの作品にはどうしても辛口になってしまう

 

・JUNK HEAD 4.0
とにかく映像が素晴らしい。キャラクターの質感はもとより背景、(苦手である筈の)動きに至るまでよく出来ていて、ストップモーションアニメの素晴らしさを堪能できる

反面、ストーリーはもう少し工夫が必要か。前半は正直退屈で、コンセプト先行で内容は二の次なのかと思ったが、この世界の秘密が明らかになるにつれ引き込まれた。あと、いくら続編ありきとは言え、ここで終わりか?と思ってしまった

それと、エログロ要素が結構あるのは人によってはマイナスかも。個人的には(低俗な)エログロと因果応報的な行動との対比が面白かった。言葉が違うという設定で字幕なのも人手不足を逆手に取っていて面白い

多少甘いかなと思うが、次回作の期待料込みでこの点数で

 

・テスラ エジソンが恐れた天才 0.5
テスラと聞いて思い出すのは磁束密度の単位か電気自動車の会社だろう。因みに自動車会社のテスラは本作の主人公であるニコラ・テスラの名に因んでいるが、会社とテスラとは全く関係がない

肝心の映画の内容だが、はっきり言ってゴミ。薄っぺらで悪ふざけが過ぎる。テスラじゃ地味だから何か盛り上がる要素を適当に追加でって感じなのだろう。だったら最初から映画化しなければいいのに

ストーリーとは関係ないのでネタバレしてしまうと、ソフトクリームだけでも失笑モノだが、ルール・ザ・ワールドは失笑を通り越して打首獄門級だろう。いくら懐メロとは言え、テスラが亡くなって40年以上後の曲だもんなあ。バカにするにも程がある

こんなノリなので当然テスラの業績を掘り下げるような内容ではなく、J・P・モルガンの娘との恋物語にかなりの尺を割いているし、現代と過去を無駄に行き来する構成では世界観に浸れない。現代パートでテスラの研究が今のどの技術の礎になっているか説明するなら分かるのだが、勿論そんなものはない

イーサン・ホークのテスラ以外に何も見どころはないので、イーサン・ホークのファン以外にはオススメできない作品

2021年に視聴した映画短評(その4)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・ベイビーティース 2.7
ボーイ・ミーツ・ガール+薄命のヒロインという絵に書いたようなベタなシチュエーション。それだけに"調理"の腕が試される作品だが…。恋愛物はあまり好きでないが、それにしてもこの作品には感情移入できなかった。理由は大きく2つあると思う

まずは人物に魅力がないこと。大病に苦しむミラが情緒不安定なのは致し方ないにしても、他の人物も感情の起伏が大きくて非常識な行動を取ることも多く、何故?と思うと共感することは難しい

次に余りに説明不足なこと。別にすべてが分からなくてもいいが、ミラは恐らく肺がんor乳がんが転移している状態で鎮痛剤としてモルヒネを処方されていること、モーゼスはそのモルヒネを売り捌いて収入を得る為に付き合っていることが分かるかどうか。まあ、気づかない人の方が高評価かも知れないが

ただ、こういう薄命のヒロイン物って死を前に目一杯好きなことをしたり、(恋人に)死の恐怖を打ち明けたりというのが定番だが、この作品はそうではない。肝心なシーンがカットされていると言うのもあるが淡々としているのが印象的。でも、そのせいでどことなく冷めていて盛り上がりに欠けるのも事実

タイトルのBabyteeth(乳歯)はどういう意味合いが込められているのか。ミラに喩えているのは間違いないだろうが、儚い人生のことなのか、それとも自我が芽生えて大人になったことなのか。普通に考えれば前者だろうが

この作品は音楽もミラのウィッグに象徴される色使いも印象的で画を観て感じるタイプの映画。こういう作品が好きな人にはいいだろうが、そうでない人にはもう一息という印象になるだろう

 

・リーサル・ストーム 2.0
正にB級アクション映画。そこそこ楽しめる作品とは思うが、ハリケーンはクローズド・サークルを作るだけで特に意味はなく、戦闘シーンも地味、切迫した状況にしては緊張感に欠ける行動、オチは早々と予測可能と褒められない点が多い

しかし、内容が無いと言うよりは寧ろ色々な要素を詰め込もうとして消化しきれていない印象。原題のForce of Natureも自然だけでなく本能、本質と言う意味が込められていると感じられるし、それが顕著に現れているのがこの作品で触れられる絵画の件

ゴッホのビスカリアのある花瓶(Poppy Flowers)は推定5500万ドルで2010年にカイロのモハメド・マフムード・ハリル博物館から、フェルメールの合奏(The Concert)は2億ドル超で1990年にボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館から盗まれた盗品で現在行方不明

これを活かして絵画の高額売却を試みるナチスの残党vs名画奪還作戦に燃えるFBIのど派手なクライムアクションにでも仕上げてくれた方が面白かったかも

最後に触れなきゃいけないのは邦題の件。リーサル・ストームはセンスゼロ。メル・ギブソンは主役じゃないし、いい加減某コンビニのかさぶたパンみたいな騙しは止めたほうがいい

 

トムとジェリー 1.5
懐かしのアメリカンカートゥーントムとジェリーで映画を作ってみただけの作品。2D調のトムとジェリーがただ実写背景で動いているだけで、実写と組み合わせる意味は感じられない

兎に角、色々と噛み合っていない印象。トムとジェリーの掛け合いは健在だがノリとしては1960年代、シナリオは一発逆転の人生を描いた1980-90年代の映画。更にスマホやドローンが出てくる一方で、ステレオタイプなインドのイメージ

チグハグなのを笑いに繋げらればいいが、残念ながらそうではない。全体的に冗長でテンポが悪く100分だと長く感じられる。懐かしのトムとジェリーを映画で観られるだけで満足と言う人以外にはオススメできない

 

・ミナリ 2.5
この映画を端的に表現するなら、小津安二郎是枝裕和が"北の国から"(舞台がアメリカなので"大草原の小さな家"の方が的確かも)をお涙頂戴要素を薄めて作った(少しデキの悪い)作品。良く言えばジワッと余韻が残る、悪く言えば地味過ぎると言える

地味で無駄にお涙頂戴に走らない分、移民の苦労に満ちた日常は伝わってくる。ただ、この作品に込められたメッセージはもう一つ伝わって来ない

ミナリは韓国語で芹のことで繁殖力の強い芹のように逞しく生きる意味が込められていると思うが、アメリカに来ても韓国人としてのアイデンティティは守るべきなのか、それとも郷に入っては郷に従えなのかハッキリしない

更にオチが戴けない。地味で展開のない作品をこういうマッチポンプみたいなエピソードで締めるのはかなり印象が悪い

駄作とは言わないが、正直並レベルの作品。全てのノミネート作品を視聴する予定は無いが、もしこの作品が受賞するようなら予想以上の不作ということだろう。どうでもいいことだが、このタイトルを始めて見た時思わず浅草観光を思い出してしまった

 

モンスターハンター 2.5
「What kind of knees are these?」「Chinese!」と切り返したのが、アジア人を茶化す歌詞を含む童謡「Chinese, Japanese, Dirty Knees」を想起させるとして中国で僅か1日で上映禁止になった曰く付きの作品

序盤のミリタリーケイデンス的な歌を歌っている辺りでの何気ない会話だと思われ揶揄するつもりは全く無かっただろうが、逆に言えばストーリーと全く関係ない所で誤解を招くような台詞は必要ない訳でお粗末と言わざるを得ない。因みに、問題の箇所はカットされている

余談はさておき、ゲームのモンハンがモチーフである以上緻密なストーリーよりはスケール感や世界観に期待すべき作品だと思うが、最初の敵との戦いはホラー映画並の緊迫感がある。実際、このレベルの敵がどこから現れるか分からない状況なら張り詰めた雰囲気になる筈

ただ、その後がイマイチ。中盤のハンターとの絡みは言葉の壁は必要なかっただろう。テンポが悪くなるだけ。そこまでに余計な尺を使ったせいか終盤は詰め込みすぎ。どうせ続編作るからいいでしょ?的な感じで終わる…

個人的にはもっとゲーム的なプロセスを追って欲しかった。モンハンって弱い敵を狩りつつ装備を整えて仲間と一緒に強い敵に臨むゲームだと思うが、続編ありきならじっくりとした進行で構わなかっただろう。最初の敵に襲われボロボロに→弱い敵を狩りつつ態勢を整える→リベンジ位で良かった

無駄なSF設定もさることながら、強敵相手にナイフで突っ込むとか「そんな装備で大丈夫か?」とツッコミを入れたくなる

映像的には素晴らしいしモンスターを相手にしている緊迫感は伝わるのだが、肝心のモンハンの世界観の再現についてはイマイチ。広い層向けの映画だとは思うが中途半端な印象で、モンハンファン、未プレー組の双方から厳し目の評価を下されそう