2021年に視聴した映画短評(その9)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・パンケーキを毒見する 2.7
正直、ドキュメンタリー映画としてはイマイチ。2点ってところか。内容を欲張りすぎてフォーカスが甘いし、"演出"も滑り気味。笑えないことはないが、「はりぼて」みたいに自然と苦笑するって感じじゃなく無理やり笑わせに行ってる感が強い。明らかに捻り過ぎ

特別加点要素としては、まず菅についてよく調べたなと言うこと。政治ニュースを良くチェックしている人でも知らない事があるのでは。ただ、その取材力には舌を巻くが、それよりもっと競技やレースについて触れてくれと思う増田明美の解説的なのも事実

もう一点は、堅苦しい作品なんて映画じゃないと思っている人を取り込もうとする意欲は感じられること。ショートアニメは悪くない出来。ただ、本編とリンクしていないのは減点。例えば、ボンボン疑惑を皮肉ってから菅の生い立ちを説明する、しどろもどろの答弁を皮肉ってから学術会議の話をする

それと登場人物が誰かわからないと思う。政治に興味がない層は下手すれば菅しか分からないのでは。加点要素はあるけど、完成度は高くないのでトータル2.7点とする

この映画を観てほしいのはまず若い人。若い人がもっと政治に興味を持たないとなあ。それと横浜市民。特に神奈川2区の有権者は絶対に見るべき。今、市長選の真っ只中だが、これを見れば何故彼がカジノ賛成に寝返ると思われているか分かる筈

この映画をお勧めしたいのは普段映画は余り見ない(特にドキュメンタリー映画)がデーブ・スペクターをフォローしている人。この映画はデーブのツイートのように皮肉が効いているので、デーブファンなら楽しめると思う

しかし、チネチッタは100ワニじゃなくてこれを上映したら良かったのに。系列シネコンじゃないから作品は自由に選べるでしょ。見ずに言うのも何だが、100ワニよりはまともな映画だと思うし客も入ったと思う

 

・少年の君 3.6
東野圭吾のパクリと言われている作品。パクリ元(?)は「白夜行」と言われているが、そんなに似ているかね。「白夜行」を読んでないのでアウトライン位しか分からんが、これでパクリならサスペンスは皆、東野圭吾のパクリってことになると思うが

話は大きく2パートに別れる。前半の恋愛パートには貧富の格差やいじめ等今の中国が抱える問題が描かれているが、いじめは苛烈そのもので邦画じゃここまでの描写は無理かも

後半はサスペンスパートだが正直イマイチ。時間的には前半より短いがダラダラ感がある。面会のシーンはいいシーンだが、そこに至るまでの(心理)描写が不足しているので囚人のジレンマ的な状況が伝わらなくて後半パート自体が蛇足感がある

演出面では台詞が少なめ、時間軸を逆転させるのが目立つ。観客に考えさせたり、行間を補わせることで話に引き込もうとしていると思うが、十分効果が出ていると思う。ただ、色々詰め込み過ぎで少々長いのは残念

あと、残念なのは「薬の神じゃない!」でもそうだったが最後に露骨な中共礼賛が入ること。映画の余韻が台無しだよ。中国映画はこれが当たり前と諦めるしかないのかね

おじさんにとってはヒロインの周冬雨(チョウ・ドンユイ)が可愛らしくて良い。年齢的にはおば…かなりのお姉さんだが制服姿に風俗感はなく、ちゃんと高校生(高中生)に見える。シャオペイ役の易烊千璽(イー・ヤンチェンシー)も中国のアイドルグループのメンバーでかなりイケメン

上映スクリーンが少ないのが難だが、パクリ云々を抜きにすれば悪く言う人は少ない部類の作品だと思うので是非劇場へ足を運んで欲しい

 

・フリー・ガイ 3.2
どこかで見たような話ではあるが、典型的なアメリカンヒーロー映画という感じで中盤まではテンポよく楽しめる。しかし、終盤はグダグダ&ダラダラ感が否めない。話の緻密さを欠くのは許容範囲にしても、なんとかならなかったかねえ

上述したようにツッコミどころは多い。ただ、それで映画として破綻している訳ではないから許せないレベルではないと思うし、ディズニー映画らしく深い所には立ち入らない感じなのでそこまで気にならない

NPCに自我が芽生えて蜂起するというのは、コロナ禍で閉塞感が強い今の社会を何とかしたいというのに通ずるものがある。色々と"オマージュ"があったりして楽しめるし、サービスデーに視聴するには悪くないと思う

 

・アナザーラウンド 1.5
酒の良い面・悪い面を卯建の上がらない高校教師達の群像劇を通して描いた作品。一杯引っ掛けてから授業に行くと口が滑らかになり良い授業ができると言うのはかつて阪急などに在籍した投手、今井雄太郎を彷彿とさせる

ストーリーは正直普通。最後は無理やりハッピーエンドで締めているが、何かスッキリしない。ぶっ飛んだ設定を活かしてもっとコメディに寄せて欲しかった

何かに付けて飲む理由をこじつけて飲むのが酒飲みの性と言うもので、(コロナ禍以前は)会社帰りに一杯やっていくのが当たり前な人は共感できるだろう。酒飲みorマッツ・ミケルセンのファン以外、特にまだおじさんの年齢に達していない人には面白くない作品だろう

 

・サマーフィルムにのって 3.5
どんな映画でもオチは大切だが、この作品の場合は特に重要。意外性があるけど必然性もある秀逸なオチだと思うが、嫌いな人もいるだろうなあ。オチに関してはかなり評価が割れるだろう

次に評価が割れそうなのが演技面。下手というよりは素人っぽい演技をしていると見たが。高校の映画部が作成する映画でまともな演技ができる役者が揃う訳がない。ハダシの猫背&ガニ股も設定なのだろう

キャラに関しては渾名が強烈なこともあり個性が十分に立っている。ハダシ、ビート板、ブルーハワイの絡みは面白いし、映画作りを通して青春している感は伝わってくる

ただ、シナリオの完成度はイマイチ。要素が多すぎて闇鍋状態。その闇鍋の具材を全部活かそうとしているので普通なら破綻するのだが、恐らくオチから遡る形でストーリーを構築しているので何とか纏まった印象。とは言え、要素をもっと絞るべきだっただろう

実際、闇鍋のせいで映画の印象が弱まっている感があるし、終盤のハダシの葛藤に関してもっと時間をかけて描くべきだった。オチは本当に良く出来ているので、もっと要素を絞ってシナリオを練り込んでいれば名作になっただろう