2021年に視聴した映画短評(その4)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・ベイビーティース 2.7
ボーイ・ミーツ・ガール+薄命のヒロインという絵に書いたようなベタなシチュエーション。それだけに"調理"の腕が試される作品だが…。恋愛物はあまり好きでないが、それにしてもこの作品には感情移入できなかった。理由は大きく2つあると思う

まずは人物に魅力がないこと。大病に苦しむミラが情緒不安定なのは致し方ないにしても、他の人物も感情の起伏が大きくて非常識な行動を取ることも多く、何故?と思うと共感することは難しい

次に余りに説明不足なこと。別にすべてが分からなくてもいいが、ミラは恐らく肺がんor乳がんが転移している状態で鎮痛剤としてモルヒネを処方されていること、モーゼスはそのモルヒネを売り捌いて収入を得る為に付き合っていることが分かるかどうか。まあ、気づかない人の方が高評価かも知れないが

ただ、こういう薄命のヒロイン物って死を前に目一杯好きなことをしたり、(恋人に)死の恐怖を打ち明けたりというのが定番だが、この作品はそうではない。肝心なシーンがカットされていると言うのもあるが淡々としているのが印象的。でも、そのせいでどことなく冷めていて盛り上がりに欠けるのも事実

タイトルのBabyteeth(乳歯)はどういう意味合いが込められているのか。ミラに喩えているのは間違いないだろうが、儚い人生のことなのか、それとも自我が芽生えて大人になったことなのか。普通に考えれば前者だろうが

この作品は音楽もミラのウィッグに象徴される色使いも印象的で画を観て感じるタイプの映画。こういう作品が好きな人にはいいだろうが、そうでない人にはもう一息という印象になるだろう

 

・リーサル・ストーム 2.0
正にB級アクション映画。そこそこ楽しめる作品とは思うが、ハリケーンはクローズド・サークルを作るだけで特に意味はなく、戦闘シーンも地味、切迫した状況にしては緊張感に欠ける行動、オチは早々と予測可能と褒められない点が多い

しかし、内容が無いと言うよりは寧ろ色々な要素を詰め込もうとして消化しきれていない印象。原題のForce of Natureも自然だけでなく本能、本質と言う意味が込められていると感じられるし、それが顕著に現れているのがこの作品で触れられる絵画の件

ゴッホのビスカリアのある花瓶(Poppy Flowers)は推定5500万ドルで2010年にカイロのモハメド・マフムード・ハリル博物館から、フェルメールの合奏(The Concert)は2億ドル超で1990年にボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館から盗まれた盗品で現在行方不明

これを活かして絵画の高額売却を試みるナチスの残党vs名画奪還作戦に燃えるFBIのど派手なクライムアクションにでも仕上げてくれた方が面白かったかも

最後に触れなきゃいけないのは邦題の件。リーサル・ストームはセンスゼロ。メル・ギブソンは主役じゃないし、いい加減某コンビニのかさぶたパンみたいな騙しは止めたほうがいい

 

トムとジェリー 1.5
懐かしのアメリカンカートゥーントムとジェリーで映画を作ってみただけの作品。2D調のトムとジェリーがただ実写背景で動いているだけで、実写と組み合わせる意味は感じられない

兎に角、色々と噛み合っていない印象。トムとジェリーの掛け合いは健在だがノリとしては1960年代、シナリオは一発逆転の人生を描いた1980-90年代の映画。更にスマホやドローンが出てくる一方で、ステレオタイプなインドのイメージ

チグハグなのを笑いに繋げらればいいが、残念ながらそうではない。全体的に冗長でテンポが悪く100分だと長く感じられる。懐かしのトムとジェリーを映画で観られるだけで満足と言う人以外にはオススメできない

 

・ミナリ 2.5
この映画を端的に表現するなら、小津安二郎是枝裕和が"北の国から"(舞台がアメリカなので"大草原の小さな家"の方が的確かも)をお涙頂戴要素を薄めて作った(少しデキの悪い)作品。良く言えばジワッと余韻が残る、悪く言えば地味過ぎると言える

地味で無駄にお涙頂戴に走らない分、移民の苦労に満ちた日常は伝わってくる。ただ、この作品に込められたメッセージはもう一つ伝わって来ない

ミナリは韓国語で芹のことで繁殖力の強い芹のように逞しく生きる意味が込められていると思うが、アメリカに来ても韓国人としてのアイデンティティは守るべきなのか、それとも郷に入っては郷に従えなのかハッキリしない

更にオチが戴けない。地味で展開のない作品をこういうマッチポンプみたいなエピソードで締めるのはかなり印象が悪い

駄作とは言わないが、正直並レベルの作品。全てのノミネート作品を視聴する予定は無いが、もしこの作品が受賞するようなら予想以上の不作ということだろう。どうでもいいことだが、このタイトルを始めて見た時思わず浅草観光を思い出してしまった

 

モンスターハンター 2.5
「What kind of knees are these?」「Chinese!」と切り返したのが、アジア人を茶化す歌詞を含む童謡「Chinese, Japanese, Dirty Knees」を想起させるとして中国で僅か1日で上映禁止になった曰く付きの作品

序盤のミリタリーケイデンス的な歌を歌っている辺りでの何気ない会話だと思われ揶揄するつもりは全く無かっただろうが、逆に言えばストーリーと全く関係ない所で誤解を招くような台詞は必要ない訳でお粗末と言わざるを得ない。因みに、問題の箇所はカットされている

余談はさておき、ゲームのモンハンがモチーフである以上緻密なストーリーよりはスケール感や世界観に期待すべき作品だと思うが、最初の敵との戦いはホラー映画並の緊迫感がある。実際、このレベルの敵がどこから現れるか分からない状況なら張り詰めた雰囲気になる筈

ただ、その後がイマイチ。中盤のハンターとの絡みは言葉の壁は必要なかっただろう。テンポが悪くなるだけ。そこまでに余計な尺を使ったせいか終盤は詰め込みすぎ。どうせ続編作るからいいでしょ?的な感じで終わる…

個人的にはもっとゲーム的なプロセスを追って欲しかった。モンハンって弱い敵を狩りつつ装備を整えて仲間と一緒に強い敵に臨むゲームだと思うが、続編ありきならじっくりとした進行で構わなかっただろう。最初の敵に襲われボロボロに→弱い敵を狩りつつ態勢を整える→リベンジ位で良かった

無駄なSF設定もさることながら、強敵相手にナイフで突っ込むとか「そんな装備で大丈夫か?」とツッコミを入れたくなる

映像的には素晴らしいしモンスターを相手にしている緊迫感は伝わるのだが、肝心のモンハンの世界観の再現についてはイマイチ。広い層向けの映画だとは思うが中途半端な印象で、モンハンファン、未プレー組の双方から厳し目の評価を下されそう