2021年に視聴した映画短評(その7)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

ホムンクルス 2.1
前半こそ興味を惹かれるが、後半は何となく話が発展して何となく終わる感じ。トレパネーションホムンクルスについても説明不足でややご都合主義にも感じる

原作は同名の漫画で全15巻。映画の尺では厳しいボリュームでシナリオをなぞるだけで精一杯なのは仕方ない所もある。ただ、前半はいいが、後半は…は最近の清水監督の作品そのもので他の監督ならこの作品の他の部分にフォーカスしたかも知れない

正直、映画よりドラマで制作すべきだっただろう。ネトフリは金は出さないが口は出すイメージでそれが殆ど裏目に出ている印象。極稀に当たりもあるが期待値はかなり低い

糞と言えば、この作品、映画館で上映時には特別料金設定で値引きは一切なし。正直、この出来で1,900円は高いと言わざるを得ず、エイベッ糞いい加減にしろと叫びたくなる

 

・ザ・スイッチ 3.1
ホラー要素はあるが割とマイルド、コメディタッチ、下品な台詞はあるが露出は無しと比較的広い層向けの娯楽作品。登場人物のIQ低めでマッチポンプ気味なのは気になるが、殺られる人物は西村みたいに尊大な奴とか嫌味な人物ばかりなのは爽快感がある

ただ、「ハッピー・デス・デイ」シリーズの監督の作品と言うことで期待が大きかった分イマイチに感じる。設定を活かしきれてないし、ありがちなストーリーなのでもう少し捻って欲しかった。まあ、今回は軽めの作品として制作したのだろうし、演技も笑えて普通に面白いが

 

・21ブリッジ 3.3
チャドウィック・ボーズマン扮するデイビス刑事は聡明且つ信念の人という感じでとてもかっこいいし、上映時間が短めなこともありテンポは良く、銃撃戦や逃走劇も迫力があって娯楽作品として良く出来ている

ただ、ストーリーは正直ベタ、タイトルもストーリーとの関連性が薄い。もう一捻りあれば良かったが、それ故何か足りないと思わせる作品ではある

 

・パーム・スプリングス 2.9
いきなり軽薄そうな男が出てくるし、下品な台詞も多いし、リゾート地の開放的な雰囲気と相まってバカップルがS○Xしまくりの軽いノリの映画だと思ってしまうが、おっぱい露出はないし、後半はシリアス展開なのでエロは期待しない方がいい

本作はタイムループ物で焦点は如何にしてループを脱出するかだが、この部分に関してはイマイチ。他にもループしている人物がいるので上手く絡めて欲しかったが、それが売りではないってことだろう

この映画は悩める男女がお互いの理解を深めながらデートを楽しむ様子や、ループに疲れ達観している男と是が非でも脱出したい女のスタンスの違いがお互いに影響を与え合う様子に重きを置いた作品なので、SF要素に期待しなければ十分楽しめる。個人的にはもう少しループ脱出に力を入れて欲しかったが

 

・AGANAI 地下鉄サリン事件と私 3.5
地下鉄サリン事件の被害者であるさかはらあつし監督がアレフ荒木浩広報部長に迫った作品。力作ではあるが、正直映画としては…。まずは、細かいところからダメ出ししていくと

冒頭、地下鉄サリン事件の映像が流れるが中途半端。触れる気がないならナレーションだけ、触れるんだったら10分程度でもう少し詳しく事件の概要を伝えた方が良かった。事件から20年以上経って、生まれる前の話、ガキの頃で記憶にない人が増えているが、その世代は観なくてもいいとは考えてない筈

次に字幕はできれば全てに付けて欲しかった。特に荒木氏はぼそぼそ喋るので全体的に聞き取り難い。帰依とか普段余り使わない言葉だが、だったらグルとかオウム用語こそ字幕をつけるなりして説明が必要では。まあ、グルが智津夫のことなのは文脈で分かると思うが

それから旅行に行くのはいいが、行程は字幕等で示しても良かったのでは。この映画に旅要素は期待していないが、色々な縁の地を訪れ、軽い話題も交えながら、心を開かせ核心に迫ろうとしているプロセスはより伝わるのでは。まあ、細かい話はこれくらいで

ラストは賛否が分かれそう。個人的には悪くないと思ったが。マスゴミ批判が目的ではなく、荒木氏に迫っているのは詰る為ではないと言うメッセージだと思うので。謝罪に意味がないとは言わないまでも、今更謝罪されてもそれでどうなる訳でもなし、そもそも謝罪は期待できない訳で

後はもっと荒木氏に語らせて欲しかった。なかなか心を開いてくれないのは分かるが、気分良く喋らせるのがインタビュアーの腕だし

それから、死刑囚が一斉ポアされた件について荒木氏及びアレフとしての考えを聞いて欲しかった。一斉ポアに関しては無駄に刺激するだけと批判も多かったし、実際その日を特別な日としてイベントとかやっているようなら警戒しないといけないし。○周忌記念のテロとか冗談じゃない

人間は満腹時に奢って貰ったステーキより炎天下で激しく喉が渇いている時の一杯の水のことを覚えているもので、そういった心細さに付け込んでくる喪黒福造のような人間を拒否できないものなのだろう

ただ、9.11といい確信犯(政治的・宗教的信念に基づいて行われる犯罪)は傍目には全く理解できないが、逆に言えばこれだけのことをあっさり成し遂げてしまう組織に洗脳されてしまったら抜け出すのは至難の業だろう。今の不寛容な世の中だと抜けても白い目で見続けられることになるから尚更だ

日本にいて災禍と言うと地震や台風が真っ先に挙がるだろうが、SNS等の普及によりエコーチェンバーな人が多い現在、誰かがトリガーを引けばテロは簡単に起こり得る。地下鉄サリン事件は被害もさることながら、確信犯の恐ろしさを後世に伝える為にも絶対に風化させてはならない