映画『かがみの孤城』謎解きまとめ

*原作ではなく映画の話。公式見解ではなく個人的な見解なので事実と異なる可能性があります。あしからず

 

需要があるのかと思うが、備忘録も兼ねて。正直、脚本のデキがイマイチなので、原作既読勢はまだしも未読勢が途中で謎解きに気づけば気づくほどつまらなくなるので、映画視聴後の答え合わせにどうぞ。かなりの親切設計とは言え、全ての謎に(劇中での)答え合わせ前に気づくのにはかなりの集中力が必要。あなたはいくつ分かっただろうか

 

1. 君たちはどこから来たのか(難易度1.0/5)
宮崎駿の新作も吉野源三郎の著書も勿論関係ない。皆、学校に行ってなかったり、オナ中(オナ◯◯中毒にあらず)だったりと(リオン以外の)共通点が徐々になっていく中、マサムネの提案で学校で会おうということになるも誰にも会えず。皆、疑心暗鬼になる中で、マサムネは平行世界説を唱えるもオオカミさまに一蹴されるシーンは覚えているだろう

でも、学校に行って確かめること自体が意味のない行為。スバルはマサムネのゲーム機にカルチャーショックを受けているが、これはスバルは1985年から来ている設定でファミコン(1983年発売)世代だから。マサムネは2013年から来ているので、所持しているのはSwitch(2017年発売)では無くPSP(2004年発売)かPS Vita(2011年発売)か。ファミコンでさえ画期的な時代の人がPSPを見たらカルチャーショックも当然だろう

更にアキが制服を着て現れるシーン。制服が雪科第五中のものだったので、皆、同じ中学出身だと分かる重要なシーンだが、足下に注目。アキ(1992年から来ている設定)が穿いているのはルーズソックス。今でもルーズソックスはあるようだが、大流行している様子はないしねえ。一世を風靡した懐かしのアイテムという認識だろう

これらの事実は平行世界説を否定するものではないが、平行世界かどうかは重要ではない。話がどことなく噛み合わないのは、皆、異なる年から来ているからで説明がつく。特にスバルとマサムネはかなり離れていそうだし。中学校は3年で卒業するのが普通だから、10年とか離れていたら分かる訳がない

まあ、この時点で分からなくても、マサムネの演説(?)にもヒントの山が。マサムネが語るゲームを知らないのはゲームが発売されたのがこころとリオンの時代(2006年)より後だからと思われ、ウレシノ(2027年から来ている設定)が「映画化されたやつだよね」とリプライしたのにマサムネが否定するのは2013年時点では映画化されていないからだろう。フウカ(2020年から来ている設定)が無反応なのは映画化が2020年より後かピアノ一筋で世間には疎いからだろう

更に某アニメの決め台詞(正直寒すぎる)を披露するが、名探偵コナンは1994年連載開始、1996年TVアニメ放送開始なので、スバルとアキは知っている訳もなく。つれない反応も当然だろう

流石に7年間隔で離れているのは答え合わせまで分からないが、異なる年から来ていることには気付ける筈。一番易しい謎だと思うし、これに気付いて「さっさと話を進めろ」とイライラした人は多いのではないだろうか

 

2. 鍵の在り処(難易度2.0/5)
筆者は20分頃には鍵の在り処が分かったのでこれもわりと易しいと思ったのだが、他の人のレビューを見ると「これは分からなかった」とか「必然性がない」とか。必然性は大アリだと思うが、モチーフになっている童話の内容を知らなければ分からないだろうし、ミスリードが利いているか。鍵を探し出す期限は来年の3月30日までで1年近くあるのだから、すぐ見つかるようなド直球なヒントな訳がない

「オオカミ」「7」「赤ずきん」からどう話を組み立てるかだが、オオカミさまなのでオオカミは当然話に関わってくるだろうし、こころが逃げようとした時「7人じゃなきゃダメ」と言っているので7(人)にも重要な意味がある。赤ずきんに関してはこの話が(赤ずきんのような)童話をモチーフにしているというヒント及びこころ達は人間であって山羊ではないが、赤ずきんのように狼に食べられる存在であると暗喩していると解釈した

実際、こころの2度目の来城の際に自室の本棚の前で童話の本を見ているシーンがあるが、そこにあった(と確認できる)のは「シンデレラ」、「赤ずきん」と「狼と七匹の子山羊」。シンデレラは分かるだろうが、残りの2つは注意深く見ていないと見逃すだろう

しかし、いくら狼と七匹の子山羊をモチーフにしているとは言え、何故時計の中に特定できるのかと言われそうだが、子山羊たちが隠れた場所のうち唯一生き残った子山羊が隠れていたのが(柱)時計の中。この城の時計は高い場所にある上に(日本時間の)午前9時から午後5時までが活動時間という縛りがあるので、時計は頻繁に映るであろうから演出的にもいい感じ

まあ、ここで分からなくても✘マークが6箇所しか確認できないのが重要なヒントで、マークが食べられた子山羊たちが隠れていた場所を示していると考えれば、マークのついていない場所に鍵があるのは自明だろう

これに関しても「さっさと鍵を見つけろ」と思わなくはないが、比較的早い段階で「鍵を見つけても願い事を叶えてもらうのは最終日」というコンセンサスが出来ているので直ぐに見つからないであろうことは想像できた。それより気になったのは、6つしかないとマークの数が重要なのを示唆したのも、こころに「鍵の場所は恐らく…」と託したのもリオン。リオンは明らかに分かっているのに自ら鍵を探さないのは何故なのか。それは…

それとこころが(七匹目の子山羊として)城に戻ってきた時にトロイメライが流れて見るとオルゴールが破壊されているが、この演出はいらん。確かにオルゴールの中にも隠せそうだが、「狼と七匹の子山羊」がモチーフならここじゃないし。オルゴールは一応ヒントにはなっているが、上手く使えずこんな形で消費するとね。本作の脚本の拙さの一端が表れている

 

3. オオカミさまの正体は(難易度2.5/5)
他にいないだろという理由で特定はできるが、そういう話ではなくリオンの答え合わせ以前に特定する要素はあったかという話

まず、オオカミさまの容姿。こころ達よりかなり小さく、赤いドレスを着ていることから幼稚園~小学校低学年の女の子って所か。一方、「オオカミさまと呼べ」とかなり尊大な態度でこころ達に接するし、声や喋り方は女児というよりはこころ達より年上の女性のイメージ。これってオオカミさま役の芦田愛菜のイメージと重なる。芦田愛菜=子役のイメージを持っている人は多いだろうが、今は子役ではないからねえ。絶妙なキャスティングだと思う

容姿と中身にギャップが有ることから、既に死んでいて容姿は生きていた時のままで止まっていると推測できるかが鍵。ファンタジーなんで何でもアリなんで、理由はいくらでも後付けできそうだし

マサムネの提案が空振りに終わった後の城内でこころとリオンが出会うシーン。ここでキスから押し倒しての◯◯◯ってことにはならないが、こころもリオンに気がありそうだしキス位すると思った人は多いのでは

このシーンではリオンのカミングアウトが重要で、リオンが小学校に入る頃に姉が亡くなったという話は勿論、他にも重要な話が。前は一所懸命探していたけど今は探していないというのはオオカミさまの正体(と鍵の在り処)が分かったから。ただ、「オオカミさまは俺たちを(子山羊ではなく)赤ずきんと呼ぶ」と言っているので、確証はないってことだろう

その後、こころが皆の思い出を辿るシーンでリオンの話も出てくるが、これもなあ。ここでは姉の病室に病室にかがみの孤城に似ているおもちゃの城があること、姉が「狼と七匹の子山羊」を読み聞かせ、「もし私がいなくなったら、神様に頼んで何か一つ願い事を叶えて貰う?」とリオンにいう決定的過ぎるヒントが提示される(この後「リオンが小学校に入る時には私は中学生」と年齢差を示唆する話も)。回想シーンはもう一回あり、そこではリオンが手動式のオルゴールのハンドルを回すとトロイメライが流れそれをおもちゃの城の前に置くが、メインディッシュの後の前菜って感じで順序を逆にすべきだっただろう

リオンが結論にたどり着いたのは、城内にあるオルゴールの仕組みに気付いてオルゴールを動かしたらトロイメライがかかったのも一因なのは明らかで、姉との思い出を思い返している内に他のエピソードも思い出したか。クリスマスケーキを食べる時にはひょっとしたらと思っていて、オオカミさまの反応を見たのだろう

結局、リオンが諦めたのは死んだ姉に「姉ちゃんを(生き返らして)家に帰してくれ」と頼んだところで姉は困るだけで何も出来ないと悟ったからだろう。オオカミさまにお願いをした後に「私が死んだら~」の台詞を聞いた方が泣けると思うけどねえ

それと言うまでもないが、オオカミさまは永遠のMAN WITH A MISSIONでいて欲しかった。お面を取るシーンなんて必要ないでしょ。この後、姉の病室のシーンになるんだし。本当、演出が酷いよなあ

 

4. 喜多嶋先生の正体は(難易度3.0/5)
これと次の謎は「この城での出来事や願い事で人生(歴史)は変わるのか」という話に関わるが、当然否だろう。誰かの願い事が叶えられれば皆の記憶が消え、誰も鍵を見つけられず誰の願い事も叶えられなければ皆記憶を保持したままだが、どちらに転んでも結果は変わらない。つまりリオンの願いのような結果が明らかに変わるような願いは叶えられないし、見つけないつもりでも見えない力が働いて誰かが鍵を見つけ記憶を消される(可能性が高い)のだろう

ただ、スバルやアキの将来は明らかにこの城での出来事に左右されているように思えるが、それはこの城やオオカミさまの力ではなく自らの経験に基づいて自らの意志で決定した結果に過ぎないってことだろう

無駄話が長くなったが、要はこの要素はオマケ(謎解きにとっては。作品のメッセージとしては別)だと思うし明確な謎解きは不要と言うこと。それなのに脚本が…

まず、容姿は何とかならなかったかね。せめて髪型をロングにするとか。ただ、アニメの場合使い回しも多く、某国民的アニメでも波平さんと(カツオ達の)おじさんの差は髪の毛の数(1本と3本)だけだったりするし、これだけで同一人物とは決定できないが

アキが城でこころ達女性陣でお茶している時に飲んでいる飲み物、喜多嶋先生がこころの家を訪れた時にこころに渡したのは共にストロベリーティーフレーバーティーと言えばレモンティーとかアップルティーが相場でストロベリーティーはわりと珍しいし、それをアキにクリソツの喜多嶋先生が持ってくると赤の他人とはとても思えない

しかも、これって全体の半分にも満たない段階だしねえ。更にこころは全く気付いていない(最後には気づくが)。この時点でのこころにとって喜多嶋先生は心にも無いだろうから当然ではあるけど、視聴者は分かっているのにこころをはじめ誰も気がついていないのが1時間も続くと流石にイライラする

折角、ギリギリまで名字の公表を引っ張っているんだし、井上→喜多嶋だけで十分分かるからねえ。それと、「大人になって、こころ」はダメ。喜多嶋先生に(城での)アキとしての記憶はない筈だし。どうしてもアキとオーバーラップさせたいなら、ここでこころに紅茶(ストロベリーティー)を振る舞えば視聴者には伝わると思うのだが

 

5. マサムネにとってスバルは(難易度3.5/5)
アキの話は喜多嶋先生がフリースクールの先生なのでこころ達にも大きく関わる話だが、これに関しては物語の大筋とは全く関係ないんだし、もっと見つけにくい隠し要素で十分だったと思う。こういう謎を隠しておいた方が本作の謎解きの評価も上がったと思うのだが

マサムネが演説(?)中に長久六連(漢字表記なのかは知らん)の話を出すが、これに(名字が同じ)スバルが食いつく。スバルが「もっとコンピュータを勉強したいから工業高校に行く」。スバルはゲーマーとしてのセンスもあるようだし、昴は別名「六連星」。ここまででも十分過ぎるヒントなのだが、更に…

総じて余韻0って感じなんだよなあ。子供向けならこんなものなのかね。本当に残念だ