2023年に視聴した映画短評(その9)

*今年観た映画なので、今年公開の作品とは限らない。5点満点で最低点は0

 

聖闘士星矢 The Beginning 1.2
風魔の小次郎』『リングにかけろ』等の作品で知られる車田正美の人気漫画の実写映画版。人気作品なだけにアニメ、ゲーム、舞台など様々な展開がなされているが、当方は原作を含めいずれも観たりしたことはないので、大まかな話しか知らないし、聖闘士星矢に思い入れもない

原題は「Knights of the Zodiac」。聖闘士星矢は1986年にTVアニメ化されて以降、アニメ映画やOVA化されているが、本作は2019年にNetflixで公開された「聖闘士星矢: Knights of the Zodiac」をベースにしていると思われる

ストーリーだが点数が示すようにはっきり言ってクソ。今季ワースト級ではないが、余裕で寝れる。とにかくテンポが悪い。煮えきらない主人公と夫婦喧嘩を長々と見せられてもねえ…。少年漫画の実写化に求めるのはこれじゃないって。(少年漫画とは関係ないが)『RRR』を見習ってくれ

こういう脚本になってしまうのは商売のことしか考えていないからだろう。希少な知名度のある原作を打ち出の小槌にしたいのだけは伝わってくる。ポリコレもそうだが、商売に目が眩んで駄作を量産するのが今のハリウッド

映像的には安っぽくはないものの普通ってところか。制作費6,000万ドルはそこまで高額ではないが、どこに金をかけてるのって感じ

聖衣のデザインについて批判が多いようだが、個人的にはGood。検索すると1986年版アニメの聖衣がヒットするが、それよりはマシだと思う。まあ、この辺は「思い出補正」の有無で大きく変わるだろう

あと、本作は新田真剣佑が出演しているが、台詞(英語)もアクションもそつなくこなしている。体もしっかり出来上がっていてやる気が感じられるが、残念ながら脚本が出来あがっていないんだよなあ

タイトルにThe Beginningと付くように次回作を作る意気込みは感じられるが、大赤字必至でジョジョるのは確実だろう。算盤を弾く前に内容を吟味しないとな

 

・THE KILLER 暗殺者 4.2
韓国のクライムアクション作品。コンセプトがしっかりしていて、チャン・ヒョクが演じる伝説の暗殺者ウィガンをスタイリッシュに見せて爽快感のある作品に仕上げたいのが伝わってくる

上映時間は95分と短めだが、徹底的に無駄を削ぎ落とした結果。ストーリー自体はありがちだが、標的が徐々に明らかになるように工夫されていて、組織を根絶やしにするのは痛快。コメディ要素も邪魔にならないし、生意気なユンジが徐々にウィガンになつくようになる等、韓国のエンタメらしい仕上がり

その分、本筋の話がやや雑になっているが、アクションとテンポの良さで帳消しか。あとアクション自体は悪くないが、敵の用心棒の頭があまり強そうではなくて、無駄に引っ張っているなって印象を与えるのは残念

区分がPG12とは言え内容的に家族連れで観るような作品ではないが、大人向けのエンタメとしては最高レベル。ウィガンの過去にも興味があるし、続編製作を希望する

 

・M3GAN ミーガン 3.0
恐ろしいほど一途なお友達AI人形<M3GAN(ミーガン)>が引き起こす制御不能なサイコ・スリラーと紹介されているが、ホラー目的での視聴は止めた方がいい。予想通りのシーンはあるが、残虐シーンは大幅カットされているのでフラストレーションが溜まるだけだろう

本作の魅力は何と言ってもM3GAN。人形xホラーは過去にもあるが、今の時代だとリアリティが違う。ただ、見所であるミーガンダンスを予告編でこれでもかと見せているのはどうなのか。TikTok等でバズっているから、ダンスを見て本作を視聴する人の方が多いって計算なのか

AIの暴走と言えば「2001年宇宙の旅」が思い出されるが、当時とは技術が違い過ぎる。最近だとChatGPTが話題になったが、将棋は勿論囲碁でもプロを凌駕するようになるなんてあり得ないと言われていたからねえ。AIと人間の関わり合い方を真剣に考える時期なのだろう

更にミーガンを開発したジェマは両親を亡くした姪のケイディを引き取った設定だし、ジェマの勤める会社はアジア人の社長が白人をこき使っている。こういう今のアメリカを反映している所も評価されている一因だろうが、社会に無関心な人が多い日本ではプラスにはならないだろう

次回作への繋ぎも無理がないし、全体的に手堅く作られた作品という印象だがストーリーにインパクトがないのは残念な所。ミーガンダンス+ライトホラーで満足できるかどうかだろう

しかし、ミーガンの価格設定はなあ…。この価格で出せるのは(日本同様の)ブラック企業だからなのか。個人的にはM3GANよりブルースの無骨さがいいと思うが、「だからオッサンは」と言われてしまうか

 

・放課後アングラーライフ 3.5
井上かえるのライトノベル「女子高生の放課後アングラーライフ」の実写映画化。白木須椎羅、汐見凪、間詰明里と魚や釣り用語に因んだ名前はフィクションらしいが、極めつけは追川めざし。何でめざし…

釣り映画なので釣りシーンは出てくるが、ガチなのを期待すると裏切られることになるだろう。ガシラ(カサゴ)の煮付けは美味しそうだけど。アングラー女子会の活動自体を鮮明に描くよりは、めざしが活動を通して人との距離感を模索している様子の方がメイン

舞台は不明(原作は兵庫県たつの市、但しロケ地は三浦市と思われる)だが、関西弁で田舎で海に面しているとなると和歌山か兵庫かって感じ。田舎に加えて関西人気質もあるから、人と距離を取って無難には通用しない土地柄。人の領域にずけずけと土足で上がり込んでくるような人が多いのは事実

主演の十味とまるぴはグラビアアイドルとして少年誌等の表紙を飾っていて、大先輩である中山忍西村知美との共演は新旧対決ってところか。挿入歌の「渚のはいから人魚」も懐かしくてGood。後はグラドルが出演しているので水着シーンがあれば目の保養になって良かったのだが

上映時間が83分と短く、雑さが目立ち緻密さに欠ける所はあるが、勢いのあるストーリー展開は城定秀夫らしい。最近はお上品な路線にシフトした感があるが、そういうのは期待していない

 

・プー あくまのくまさん 0.5
期待はしていなかったが、ここまで酷いとは…。酷評レビューが多いが、この作品を観ようとする人は「くまのプーさんを汚すなんて許さない」なんて言わない訳で、それなのに酷評の山なのは単に全てにおいて稚拙だから

まずプーとピグレットがあまりに安っぽい。低予算なのは分かるが、そこには力を入れろよ…。あと、特に最初の方は画面が暗すぎて折角のグロシーンも何が起こっているか分からない。更に暗転を多用し過ぎ。話の薄さをカバーする目的なのだろうけど

ストーリーは例によってツッコミ所しかない。ホラーに緻密なストーリーは求めないにせよ、設定は大事。言葉を話さない、人間らしさを放棄したんだったら、こういう殺し方はしないだろうに。続編ありきだから、プーとクリストファー・ロビンは殺したくないのが見え見えなんだよなあ

当に「なろう系ホラー」とでも呼ぶべきテンプレホラーって感じで、くまのプーさんならではの要素は皆無。プーによる惨殺シーンがどうしても観たい人以外はテリファーの続編を見た方がいいだろう

P.S. 邦題を「あくまのプーさん」にしないのは、レビューに圧力をかけるアメリカン邪ニーズことDズニーへの忖度なんだろうなあ。原作小説の著作権は消滅しても、アニメの方はまだ残っているみたいだしね