2023年に視聴した映画短評(その7)

*今年観た映画なので、今年公開の作品とは限らない。5点満点で最低点は0

 

・とつくにの少女 1.8
ながべの漫画を原作にクラウドファンディングで資金調達して作られたOVA作品。アマプラでは3話に分割されているが、元々は分割されていないと思われること、それと本作は2022年の作品だが、アマプラでの配信開始は2023年なので本年度の映画扱いとする

作画は素晴らしいデキ。今時のクッキリとした画ではないが、きっちり描き込まれた絵画のような画は本作の世界観を体現している。流石、作画に定評があるWIT STUDIOの作品だ

ただ、ストーリーはねえ…。70分弱だと30分アニメ3話+αなので話が進まなくても仕方がないとは言え、初見勢置き去りは如何なものか。本作の設定についての言及が皆無なので話についていけずに何となく終わってしまう。そもそもタイトルの”とつくに(外つ国)”だってピンとこないしねえ

こう書くと原作ヲタが発狂して「だったら原作を読め」と言い出しそうだが、順序が逆。配信は新たな客をつかむチャンスなんだし、説明パートを足す位はすれば良かったと思うが。出資した人の中には配信反対もいるだろうし、ヲタク心理を逆なでするようなことはできないってか

人外のおじさんと少女のロードムービーは「魔法使いの嫁」っぽい感じだが、上述のように内容は初見殺しのファンディスクなので原作ファン以外にはオススメできない

 

・レジェンド&バタフライ 1.5
東映創立70周年記念作品。今年1月に劇場公開された作品を5月に配信開始することになるとは、関係者にとっては寝耳に水だろう。今年ワースト級の駄作ではないものの、普通につまらない凡作って感じ

本作を一言で言えば中途半端。主演にキムタクと綾瀬はるか、タイトルは英語。織田信長を取り上げた作品は山ほどあるし、新機軸で時代劇を観ない層にアプローチしたいのは分かるが、これではねえ。タイトルのバタフライが帰蝶(濃姫)に因むことにも気付かないだろうし

まず上映時間が長すぎる。信長の半生を網羅するには短すぎるが、この内容にしては長すぎて飽きる。特に濃姫の出番が少なくなる後半は退屈

もっとエピソードを取捨選択すべきで、ぶつ切り感が半端ない。織田信長を知らない人は極少数だろうが、この内容についていくにはそれなりの知識が必要。浅井(あざい)長政とか松平(イントネーション)とか、時代劇を観ない人には違和感があるだろう

じゃあ時代劇ファンにとって満足のいく作品かと言えばそうではないだろう。エピソードぶつ切りもさることながら、史実無視、合戦シーンは殆どなし。殺陣も少なく、しかも貧民を殺めるというトンデモ。脚本は「どうする家康」で絶賛炎上中の古沢良太だし、そっぽを向かれて当然だろう

織田信長は世間的には亭主関白なイメージだろうから嬶天下なのは面白いと思うし、もっとラブコメ色を全面に出して、最後も夢オチとか寒いことをせずに本当にタイタニックで良かった。それと綾瀬はるかはアクションバリバリだし、女剣士として活躍させても良かったかも

それができないのは時代劇ファンを怒らせたくないという意図もあるだろうし、キムタクへの忖度もあるのだろう。ただ、この内容でも怒り狂う時代劇ファンは多いと思うが

キャストでは綾瀬はるかと各務野役の中谷美紀は安心して観ていられる。それに引き換え木村拓哉…。キムタクしか演じられない男と時代劇との相性は最悪。どうしてもキムタクに拘るなら、現代風のぶっ飛んだシナリオにすべきだった

それとキムタクに隠れてはいるが、明智光秀役の宮沢氷魚もねえ…。そもそも明智光秀が合っていないと思うし、森蘭丸の方が良かったかも

ぶっちゃけキムタクファン以外にはオススメできない作品。それから効果音や音楽に対して台詞が聞き取りにくいので字幕をオンにすることを推奨する

 

・別れる決心 1.0
噂されたアカデミー作品賞はノミネートすらされなかったが、カンヌ国際映画祭では監督賞を受賞。映画賞は娯楽性の強い作品は受賞しにくいことを考えると、受賞するようなサスペンスってどんな作品なんだろうって思ってしまう

本作は珍しく日本語吹き替え版も用意されていて、配信でも日本語版を選べるが、当方は字幕で視聴

正直、配信で良かった。韓国サスペンスとしてはワースト級だろう。韓国サスペンスの良さであるキレは皆無で、終始モヤッとした感じ。回想多用でテンポも悪い

じゃあラブロマンスとしてはどうかと言えば、こちらもねえ…。タイトルの意味を含めスッキリしない。ソレを悪女として描きたくないようだが、寧ろバビロン(アニメ)の曲世愛級の悪女の方がサスペンスとの親和性が高かったと思う

監督としては韓国サスペンスの固定観念を打破するような作品を作りたかったのだろうが、サスペンスとしてのデキの悪さがラブロマンスの足を引っ張っているように思える。ありがちな失敗作って感じ

本作は韓国サスペンス好きには全くオススメできないが、ラブロマンスは昭和のメロドラマの香りがするので、そういうのが好きな比較的上の年齢層にはウケるのかも知れない

 

・テリファー 3.0
日本では劇場未公開であったが、続編の「テリファー 終わらない惨劇」が劇場公開されることを受けて本作も劇場公開された。が、小生はアマプラで視聴

本作のウリはグロさだろう。最近(製作は2016年だが)の作品にしてはかなりキテる。悪趣味な殺戮シーンは耐性のない人には無理だろう。まあ、R18+のホラー作品を耐性のない人が観るとは思えないが

アート・ザ・クラウンは不気味さといいなかなかのキャラではあるが、ピエロはホラーではど定番だし、ジェイソンやフレディ等、往年の殺人鬼達と比べると流石に物足りなく感じる

ストーリーはツッコミ所しかないって感じ。最後に無理やり伏線回収して続編への布石としているだけだしね。ただ、ホラーに緻密な話を求める人は少ないだろうし、上映時間が短めでテンポが良く、構成には工夫があるのでそれなりに楽しめる

 

・テリファー 終わらない惨劇 1.5
2016年に公開された「テリファー」の続編。(ホラーにしては)長い上映時間(138分)はストーリーがお留守になりやすいホラー映画だとマイナスに作用する予感しかしないが…

グロさは相変わらずと言うか前作よりもグロいが、殺し方に芸が無い。ワンパターンなんだよなあ。「全米が吐いた」のキャッチフレーズ通り、兎に角グロいシーンを観たいという人にはいいのだろうが

上映時間が長くなった分展開にメリハリができれば良かったのだが、残念ながらそうはならず。ストーリーに関係なかったり、関係あっても中途半端なエピソードばかり。アート・ザ・クラウンの素性とか何故、この姉弟を狙うのかとか肝心なことは不明だから、単に間延びしただけになっている

最終決戦(?)の超展開も最早失笑すらできないのだが、もう少し父の話を膨らませて丁寧に話を紡げば一味違うホラーになったかも。なろう(私TSUEEEEEEEEEEEEE)系ホラーとか。ホラーに緻密なストーリーを求める人は少ないと思うから相性は良さそうだけどね

全てにおいて前作より劣化していて、正直時間と金の無駄。終わり方からして続編が作られるのだろうが、スタッフに大幅変更でも無い限り次は観ないだろう