2022年に視聴した映画短評(その13)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・女神の継承 3.0
タイと韓国の合作作品。舞台はタイなので韓国っぽさは皆無だが、終盤、それまでとは一変した展開になるのは韓国映画らしい

率直に言って中途半端。ストーリーはドキュメンタリー風に展開するが、アニミズムに基づく伝承話はホラーと親和性が高く、クライマックスの前に重要人物に…で期待を持たせるがクソ寒いオチ。こんなんだったらもっと時間を削るべきだし、そもそもモキュメンタリーである必要がない

ホラーとしてはグロいことはグロいのは確か。なんちゃら村でビビってる人は止めておいた方がいい。ただ、途中まではホラーっぽいが、最終盤は…。お祭り状態で訳わかめ。こういうのはホラーの怖さじゃないんだよな

一番ビビったのはまさかのおっぱい御開帳。タイ映画はあまり見たことないが、中国や韓国映画は勿論、台湾映画でもカメラワークで回避するからねえ。別におっぱいに期待していたわけじゃないけど、正にサプライズって感じ

とにかく本作はミン役のナリルヤ・グルモンコルペチの為の作品と言っても過言ではない。何かに取り憑かれた様は本当に取り憑かれたのかと思う演技。調べても何も分からないのでまだキャリアが浅いのだろうが、可愛いし役者根性もかなりのもので今後の活躍にも期待したい

上述通り稚拙な所が目立つ作品で2点位かなと思うが、鬼気迫る演技に敬意を表して3点で

 

・この子は邪悪 3.0
TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2017」準グランプリ受賞作品。この賞を受賞した作品は他にも映画化されているが、ちょっと風変わりな作品が多い印象。ただ、全体的に脚本が粗削りで本作も例外ではない

いい意味で掴みどころのない作品。ホラー?サスペンス?それとも、…。伏線を丁寧に紡ぎながら進んでいくストーリーは先が読めず引き込まれるが、肝心のオチが激寒で一気に冷める

本作はヒューマンドラマで描きたいのは家族愛なのだろうが、それでもねえ。これじゃサイコパスだろ。しかもそれを周りが棒立ちで見ているのがマヌケ過ぎる。このシーンに限らず棒立ちシーンがチラホラなので、恐怖で体が動かないようには見えないんだよなあ

タイトルはよく考えられていると思う。最後で回収と思いがちだが、本作が家族愛をテーマにしていることを考えると、この子が悪の化身的な捉え方ではなく、それぞれの立場で誰が邪悪なのかってことなんだろう

本作にホラーを期待する向きもあろうが、はっきり言ってホラー要素はほぼ皆無。ホッケーマスクで13日の金曜日のジェイソンが思い出されるからなのだろう

しかし、南沙良は陰のある女子高生位の年齢の役が多いな。明るいキャラも観てみたいが、似合わないのかね

 

・愛してる! 3.7
日活ロマンポルノ50周年を記念したプロジェクト「ROMAN PORNO NOW」の第2弾作品。第1弾以上にエロシーンは控え目。題材がSM、モキュメンタリーだけどコメディ仕立て。ロマンポルノはかくあるべきという頭の固い人にはお勧めできない

女子プロレスラーの地下アイドルがSMの女王様との両立を目指すというぶっ飛んだ設定。心の葛藤はあって当然だが、主人公の性格もあってそういうシーンは皆無。更にモキュメンタリーなこともあってテンポがいいが、別にモキュメンタリーでなくても良かったかなとは思う

ストップワードの時点でオチが何となく想像つくのはマイナスだが、こう来たか。ただ、ストーリーは緻密とは言い難いし、心理描写が皆無で特殊な性癖の持ち主の話なので、感情移入はできず泣けるまではいかないかな

しかし、ウェットな雰囲気がない分、より人間賛歌が際立っている。SMプレイは宛らスポ根物の様。SMの奥深い所の描写はないが、自分を解き放って肯定しようというメッセージを強く感じさせる

役者陣はやっぱり高嶋政宏。本人役で出ているだけあって演技とは思えん。役者として十分な実績があるし、ダニエル・ラドクリフブラッド・ピットみたいにB級映画で自由に演じたいって思いがあるのだろうな

ryuchellや大迫茂生ら他の脇役も良かった。根矢涼香はカメラマン役なので姿は殆ど映らないが、エンドロールの撮影に名前があって笑った

主要役では主人公のミサ。演技が下手とか魅力がないとか酷評もあるが、個人的には嵌っていたと思う。元体育会系のぶっきらぼうで真っすぐなキャラは色気なんて感じさせなくて当然だし、王道アイドルで腹黒いユメカと対照的に描かれていたと思う

でも、カノン様が嵌り過ぎで。Mじゃないけど、カノン様に調教されたら覚醒するんじゃないかと思わせる。ただ、カノン様のデレモードをもう少し観たかったかな。ただでさえエロシーンが少ないし

とても万人にお勧めできる作品ではないが、個性的な作品が見たい人にはいいと思う。但し、今後もロマンポルノらしくない作品をリリースするのなら、エロを期待される「ROMAN PORNO NOW」ではなく新しいレーベルにすべきだろう

 

・RRR 4.3
ラージャマウリ監督の最新作。ボリウッドもコロナ禍で大ダメージを受けたと言うし、バーフバリが大ヒットしてプレッシャーもあったと思うが、不安を払拭するデキだと思う

相変わらずの映像美とスケール感。アクションシーンも迫力がある。ハリウッドを超えたは言い過ぎだと思うが、日本映画とは雲泥の差がある。かけるべき所にお金をかけているのが伝わってくる

ストーリーは少年ジャンプ作品を映画化したような分かりやすい復讐劇。エンタメ方向に振った作品なので、バーフバリのような重厚さはないしツッコミ所も多いが、インド史を知らなくても楽しめるのはいい。海外での公開を意識したのかも知れない

3時間は長いが、内容的にはそこまで長くは感じない。インターミッション後は怒涛の展開で引き込まれる。今回は長い回想もないし。忙しない中にもストーリー的にしっかりタメが出来ているのはラージャマウリ監督の良い所だと思う

ただ、インターミッションまではテンポが悪い。ラブロマンスは少ないし脈絡なく皆で踊りだすようなことはないが、シーンが長過ぎるし歌も多め。アクションシーンをじっくり見せたいのは分かるけど、インターミッションを意識し過ぎて前半が間延びするのは、インド映画あるあるだと思う

文字でインターバルと出るが、実際に休憩を取っている映画館は少ないと思われるので集中力が持たない今の若い人向けではないだろうが、ド迫力の映像と分かりやすいストーリーはエンタメ作品として上々。是非、映画館で見て欲しい

 

・MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない 3.0
所謂タイムループもの。散々手垢がついたテーマなだけにどう料理するか、脚本力が問われるが…

なろう系のようにタイトルが長くて説明的なのは不安を覚えたが、前半はそれを払拭するデキ。タイトル通りの話ではあるが、これを実現する様は日本企業あるあるだし、それをコメディタッチで表現したのは嫌味がなくすんなりと受け入れられると思う

ただ、後半がなあ。いい話はいらないと思うし、明らかにオチがあるのだからオチに向けた伏線を散りばめて欲しかった。まあ、おっさんには刺さるのかな。小生には全く刺さらなかったけど

アニメ以外の作品としては上映時間が短めでダラダラ感は皆無。ベタなテーマでも作る人次第では楽しめる作品になることを再認識させてくれる作品だと思う