2022年に視聴した映画短評(その16)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・ブラックアダム 1.8
最後位メジャーどころの作品で締めようと思ったが、上位3つはイマイチ気乗りしないのでこれを選択。アメリカンヒーロー物はそんなに好きじゃないしスパイダーマンはやられたって感じだが、逆に評判があまり良くない作品の方が当たりかも知れないと思ったのだが…

なんか全体的に「小粒」なんだよなあ。ブラックアダム以外全く印象に残らないし。そのブラックアダムもねえ…。ダークヒーローなんだからもっと暴れてくれ。マ・ドンソクの警察官の方が大暴れしてたぞ。ぶっちゃけ、本作はドウェイン・ジョンソンのアクション以外に見所はないんだし

ストーリーはまあこんなもんでしょって感じ。スパイダーマンもそうだったが、内容が薄い割に設定はガッチリしているので、設定を説明するのに尺を割く感じでテンポが悪い。まあ、設定がしっかりしてないと、得意のスピンオフ商法は難しいだろう

映像は悪くはないが、CGに逃げたって印象が強い。ハリウッドもコロナ禍で厳しいだろうし、潤沢な予算という訳にはいかないのだろう。邦画に比べれば雲泥の差だが、映像美を売りにできる程ではない

続編製作が中止になったようだが正解だろう。マルチバース示唆とか悪い意味でマーベルと変わらない印象だし、もっと強烈な個性が欲しい

 

・3022 0.0
稀代の迷作アンチ・ライフのジョン・スーツ監督作品。アンチ・ライフより前に制作されたようだが、日本では劇場未公開。なのに吹替版がある不思議。本作、最大の謎かも知れない

ぶっちゃけ褒めるところがない。アンチ・ライフ同様、90分程度で短めな作品だが、盛り上がりに欠けるため凄く長く感じる。宇宙ステーションは模型感1000%。全体的に画面が暗く、ワールドカップ視聴で寝不足だと寝落ち確実だろう

とにかく全てが中途半端。SF的なストーリーを考えるのが面倒臭くなって人物描写に逃げたとしか思えん。ただ、人物描写にしても、現在の状況が分からないと行動に説得力を持たない。訳の分からないストーリーと行動原理で最後まで突き進む感じ

SF好きにはとてもじゃないがオススメできない。監督のファン、B級映画マニア、出ている俳優はブルース・ウィリス程の有名人ではないが、海外ドラマに出ている人たちなので海外ドラマ好きなら楽しめるのかも

 

ピノキオ 2.0
最近ピノキオのリメイクブームで、現在ギレルモ・デル・トロ監督によるストップモーションアニメが公開されているが、本作は少し前からDisney+で配信された実写版。監督にロバート・ゼメキス、ゼペットじいさん役にトム・ハンクスと豪華な布陣

本作の原作は原作小説も含むらしいが、実質的にはアニメ版だろう。アニメ版のピノキオはかなり原作改変が行われているが、ピノキオと言えばアニメ版な人は多いだろう。劇中で歌われる「星に願いを」はストーリーを知らない人でも知っているのでは

映像は素直に素晴らしい。全てが実写ではないが、実写との合成も違和感がない。アニメは1940年(日本では1952年)に公開されたが、その頃の世界観を映像的には表現できていると思う

最近のディズニー映画はポリコレの話題とセットになっている感があるが、本作も例外ではない。ブルー・フェアリーは黒人(しかも坊主頭)に、ファビアナは脚が良くない設定に。ファビアナはともかく、ブルー・フェアリーはアニメ版だと金髪の白人なので違和感があるのは確か

ただ、黒人である必要性を感じないのと同時に白人である必要性も感じないのも事実。原作小説をアニメ版でそう解釈しただけの話。感想なんて「それってあなたの~」で構わないと思うが、歴史上の人物の改変とかならともかく、行き過ぎたポリコレアレルギーは単なる老害としか思えない

ストーリーは基本的にはアニメ版を踏襲している筈。見たことある筈だが、細かいことは覚えていないし。ただ、ブルー・フェアリーに導かれるというよりは(良心に従って)己の道は己で切り拓く冒険活劇の要素が強くなった感じか

良くないと思った点は、まずピノキオの性格。あまりに良い子過ぎるでしょ。アニメ版は原作よりだいぶ素直になっているが、それより素直になっちゃうとねえ。何も知らない筈なのに、こんなに物わかりがいい訳ないと思うが。最近はフィクションでも素行の悪い人物が炎上する時代だからかねえ

次にメタネタが寒い。インフルエンサーとか同調圧力とか、この時代にSNSなんてある訳ないでしょ。今風のネタを織り込みたいんだったらストーリーも大きく改変すべきだったと思うが

ラストについては賛否分かれるだろうが、個人的には良かったと思う。全て同じならリメイクする必要なんてないと思うし。しかし、ただでさえ影が薄くなったブルー・フェアリーの見せ場が無くなって不満な人も多いだろう

評価サイトでも上から下まで評価はまちまち。人によって評価が割れる作品なのは間違いない。(アニメ版の)ピノキオファンでも評価は割れると思うので、評価は自分で見て決めて欲しい

 

・ナワリヌイ 4.2
ロシアの反体制運動家、アレクセイ・ナワリヌイを追ったドキュメンタリー。政府がここまでやるかって感じで当に恐ロシアなのだが、独裁体制を築くってこういうことなのだろう。中国や北朝鮮も色々とヤバイのだろうな

ナワリヌイというタイトル通りナワリヌイにフォーカスした作品ではあるが、ナワリヌイのこれまでの生き様を追っていく感じではなく、毒殺未遂事件を中心にここ数年のナワリヌイを追った映画なので、彼が語る政治理念がどのように構築されていったのか等、人物を深く掘り下げるような内容ではない

本作はあくまで映画なのでフォーカスするのは悪くないが、上手く切り取り過ぎていて恰もこういう設定のゲームをプレーしているように感じるのも事実。それを上手く映画化しているとは受け取らず、胡散臭さを感じる人もいると思う

特にモスクワ4からの話はホンマかいなって感じだが、ぶっちゃけ日本も大差ないんじゃないの。永遠の与党の国だから皆そちらを向いていて、外部を全く意識していない。政府機関に限らず、外に意識が向かない会社も"脆弱性"は変わらないと思う

CNNは最近は鳴かず飛ばずの印象だが、ジャーナリズムの気骨を見た気がする。独裁体制だと適当な言い訳で許されるから、こういう"茶番"が平然と行える。安易にあの発言はなかったとか言い出す政治家ばかりの国も他人事ではないと思った方がいい

 

・ボイリング・ポイント/沸騰 2.8
クリスマス前のロンドンの高級レストランの一夜をワンカットで描いた作品。ワンカットと言えば最近だと「1917 命をかけた伝令」が思い出されるが、あれは疑似ワンカットなのに対して、こちらは本当にワンカットらしい

次から次に起こるトラブルはクリスマス前のレストランっぽいし、ワンカット向きの脚本だと思う。ただ、オチは寒い。このオチにするならもっと人物を掘り下げる必要があると思うが、テンポを優先したのだろう。ワンカットなら楽しめるが、多分普通の撮影だと面白くないだろう

映像的にはてんてこ舞いな様子は伝わってくるが、如何せん画面が暗い。西洋では間接照明が主流だし高級レストランなら尚更だが、暗い画面で動くのを追うのは目が疲れるし、料理もあまり美味しそうには見えないし。まあ、イギリス料理…

上映時間は短めでテンポがいいので気楽に見る分には悪くないかな。ただ、人物も出来事も胸糞のオンパレードだし、上述通りストーリー自体はあまり面白くないのでワンカット撮影を楽しむ作品だろう