2022年に視聴した映画短評(その18)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・太陽とボレロ 0.5
水谷豊と言えば最近だと「相棒」だろうが、おじさん世代だと「熱中時代」で主題歌のカリフォルニア・コネクションを歌っていたことも知っている筈。そんな水谷豊は映画監督としての顔も持っているが、正直鳴かず飛ばず。その謎を探りに映画館へと潜入した

マチュアオーケストラ、映画タイトルからある楽曲が思い浮かぶ筈。思い浮かばないなら視聴は止めた方がいい。檀れいや町田啓太目当てでは最後まで持たないだろう、まあ、クラシックに興味があっても途中で飽きるけどね

ぶっちゃけ開始5分が本作のピークだからなあ。CMにも使われる有名な楽曲が奏でられると、「西本智実かっけえ」「ブラボー」って感じ、勿論、最後に見せ場はあるが、約2時間の苦行が始める

地方のアマチュアオーケストラが存続の危機というありふれた設定にも関わらずツッコミどころの山なのだが、細かい事に関しては寛大な心で見逃すことにする。本作がつまらんのはそういう問題じゃない

とにかく無駄なカットが多い。予告編で楽団員に解散を告げるシーンがあるが、ここまでで1時間位かかるからなあ。テンポが悪いにも程がある

更にここから先はコメディ色が強くなるが、内容が寒い。決めポーズとか、いちいち「昭和かよ」とツッコミを入れたくなる。まあ、昭和ノリが絶対にダメとは言わないが、監督はこれがイケてると思っているだろうから痛い。河相我聞が気の毒過ぎる…

折角、これだけのメンツを集めたんならパロディにすればいいのに。石丸幹二檀れいが絡めば「題名のない音楽会」って感じだし、やたら人気のない所に呼び出すシーンが多いが、山○○紗なら何人死んでるか。2時間ドラマによく出ている人が多いんだし

一番笑ったのは糞寒いコメディの山ではなく、檀れいの母親役が檀ふみだったこと。単に名字が同じなだけで肉親ではないけどね

本作に映像面を求める人は皆無だと思うが、映像も稚拙。画面暗転→引きの映像からの寄りがやたら多い。ただでさえテンポが悪い上にぶつ切り感があるし、単調なストーリーが更に単調に思える

少しは褒めると、ベタは避けようという気概は感じる。最終公演の前にストーリー的にタメがあるのはいい。ただ、エンドロールで別の曲を流す位なら、ボレロにエンドロールを被せたらと思った。そこそこ有名なタイトルのあえて一番有名な曲を使わないのは拘りなんだろうけど

折角、西本智実を呼んだんだし、西本のクラシックを聴かせるで良かったと思うが、水谷豊の性格だとそれでは納得出来ないんだろうな。腕の悪いシェフが松坂牛をビーフストロガノフにしようとして失敗した感じ。単に塩コショウしてソテーでも十分なんだけどね

稚拙な上に痛いので0点と思ったが、西本智実に免じて極刑は回避。懲りずにまた映画を作るんだろうが、センスが無いのは明白だし黒木瞳同様監督業は即刻廃業して役者一本で行って欲しい。しかし、この作品を見た後だとクリント・イーストウッドが神に思える。あのレベルの作品は永遠に作れんだろうな

 

・映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ 0.3
2021年に全13話のTVシリーズとして放映された「オッドタクシー」の映画版。TVシリーズは2021年のベストアニメに選んだ位素晴らしい作品だが、これを映画化して誰得と言われていたように残念な出来

流石にTVシリーズの完全ダイジェストじゃ気が引けたのか、中盤まで登場人物へのインタビュー方式でストーリーを進めていくように変更されている。ただ、本作の登場人物はかなり多い上に、人物同士の関係性も分かりにくくなっている

TVシリーズの良い所は無関係と思える人物まで関連している複雑さとシリーズ構成の巧みさだと思うが、映画だと良さが全部消える形に。TVシリーズ未視聴で本作を見た人はあまりいないだろうが、この構成でストーリーを追えたのだろうか

本作の唯一の売りと言える最終回後のエピソードは極僅か、新たな目線でストーリーを楽しむと言うよりクソ長いインタビュー早う終われって感じ。マルチプラットフォーム化を否定はしないが、こんな出来ではTVシリーズの評価まで下げることになる。関係者は猛省して欲しい

 

・真夜中乙女戦争 0.3
開始10分でヤバいと思ったが一応最後まで視聴。小生が嫌いなボヤっとした作品と言うことを差し引いてもどこを褒めるのって感じ。強いて言うならキャスト位か

画作りに拘っているのは伝わってくる。ただ、奇抜なカメラワークはカメラ酔いを誘うだけだし、画で説明不足なシナリオや世界観を補っているかと言えばそうではない。何となくお洒落な映像にしてみましたって感じ

全体的に無駄なカットが多くて長い。私と先輩のラブシーンも何もなしでこの長さ。この無駄な尺を「何故?」に振れば少しは話に入れたと思うけど。視聴者に考えさせるにしても本作は群像劇、全ての主要人物の行動原理を考えろと言うのは無理がある

それと「ファイトクラブ」に寄せすぎ。まあ、青年の鬱屈とした感情を世間に対して爆発させる話はいくらでもある訳で「味付け」が必要になるが、雑にファイトクラブの要素を加えただけでストーリーに噛み合っていないように感じる。原作未読だが、原作もこうなのかね

正直、二宮健の筋の悪いオナニー映画としか言いようがないが、福田雄一園子温に比べればまだマシか。極刑は回避するが酷い作品。若くてストーリーは理解せずに感じるタイプの人にはいいのかも知れないが、おじさんが見るべき映画ではないと思う

 

東京2020オリンピック 0.0
SIDE:AとSIDE:Bの二本立てだが、共通する(ダメ出し)要素が多いので纏めて評価

SIDE:Aは0点。ネトウヨや映画関係者が発狂しそうだが、理由は明快で記録映画の体を成してないから。ラーメン屋に行ってラーメンを注文したのにうどんが出てきて、「ラーメンもうどんも似たようなものだろ」と言われて納得するのかって話

内容は河瀨直美の趣味全開のドキュメンタリーってとこか。一応、選手が主役ではあるが、競技シーンは殆どない。記録映画で日本の金メダルラッシュに沸いた五輪を振り返ろうと思う人は見てはいけない

まあ、記録映画の縛りを抜きにすれば0点ではないと思うので、スポーツにはあまり興味が無い河瀨直美のファンなら見る価値があるかもね。あと、藤井風の歌が聞けるのはSIDE:Aだけ

SIDE:Bは0.5点。SIDE:Aに比べれば記録映画っぽいのでこの点数だが、記録映画縛りを抜きにするならSIDE:Aよりデキが悪い。普通の映画なら0点にするかも。時間がなかったのか内容が整理されていないし、締めは陳腐そのものだし

一応、時系列を追う形にはなっているが、シャッフルされているので非常にわかりにくい。しかも、本来はSIDE:Aで扱う筈の競技の話も入ってきているし

SIDE:Bに関しては、スポーツは勿論オリンピックには興味がなくオリンピック反対の運動をしていた人も期待していただろうが、率直に言って見るだけ無駄。無かったことにはなっていないが、五輪関係者には取材しているのに反対運動の参加者には取材にならないという印象を植え付けるだけ

まあ、本作は東京オリンピックの記録映画な訳で五輪賛成派の立場なのは当然。第三者による五輪開催への道のりを描いた作品ではないからねえ。ただ、本作を見ると、禄に大義名分もないまま五輪をゴリ押ししたとしか思えない。実際、そうなんだから否定できないと思うけど

別に記録映画だからってIOCの犬である必要はないと思う。こういう視点からの記録映画は異例だし、好きにやっても良かったと思うけどね。SIDE:Aでは好き勝手やってるのに

反対運動以外にも、厳しいイベント規制で(五輪より後の開催である)鈴鹿GP等も中止になったのに、何故五輪は開催されるのか。別に河瀨直美が五輪賛成だったか反対だったかは興味ないが、河瀨が考える五輪強行の大義名分は何なのかは示して欲しかった。震災、広島、そんなんじゃないでしょ

トータルでは0点。まずSIDE:AとSIDE:Bの区別が不明瞭。SIDE:Aが競技の記録で、SIDE:Bが「場外戦」も含む裏方とかの話だった筈だが、SIDE:Aは選手メインではあるものの政治色が強い内容だし、SIDE:Bは本来SIDE:Aで扱うべき内容を雑に放り込んだ感じ

それにSIDE;Aがオナニー全開でSIDE:Bが大人しいのも違うと思う。逆ならここまで低評価にはならなかったと思うけどね。世界の河瀨直美が監督した映画がこんな惨状で良いのかとか言っていた映画関係者がいたが、寧ろ不入りで良かったんじゃないの。これで納得するのはファンだけだろう

次に選り好みが過ぎる。映画全体のトーンからして河瀨直美がスポーツに興味があるとはとても思えないが、女子バスケに思い入れがあるのかね。SIDE:Bでも尺を割いているからねえ。知り合いでもいるのか

女子バスケより気になるのは森喜朗。SIDE:Bでは勿論のこと、SIDE:Aでもしっかり出てくるからねえ。御存知の通り件の発言で会長を辞任しているので、五輪直前によりフォーカスして然るべきの記録映画なら出番はそんなに多くない筈だが、どうでもいい所でも抜かれるなど存在感が半端ない

本作はジェンダーとか女性の権利の主張が強い。女性監督だしそれ自体は悪いとは思わないが、それなのに女性蔑視の権化のような森喜朗フィーチャーは違和感しかない。小池百合子の扱いはぞんざいなのを考えると将来は自民党から立候補するつもりかね。流石に森喜朗の愛人ではないだろうし

他にも言いたいことはあるがこの位で。「朝が来る」を見て路線変更かと思ったが、単なる気まぐれだった模様。福田雄一だって「普通の」映画を撮ることもあるしね。やっぱり河瀨直美はこの程度かという印象だけが残った

 

・大怪獣のあとしまつ 0.0
噂に違わぬ駄作。三木聡監督は前作「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」もヤバかったので酷評はシン・ゴジラ的なのを期待したヲタクの逆恨みではないと思っていたが、他の駄作同様開始10分で観てしまったことを後悔するレベル

三木も福田雄一同様、深夜ドラマを手掛けていたこともあって悪い意味で似ている。脈絡なく入るギャグらしき何かが話の腰を折る。しかも、その内容が訳の分からない比喩とウンコとかゲロとか小学生レベルの下ネタ。いったい何を笑えばいいのか

本作も前作も着想は悪くないと思う。ただ、脚本に昇華できていない。見境なしにネタを挟むのがコメディではない。だからストーリーは勿論、風刺も伝わらない。観てる側の理解力が足りないのではなく、作り手の力量が足りないだけ。関係者は猛省して欲しい

まあ、福田の新解釈・三國志みたいなノリが好みなら、本作も楽しめるのかも