2023年に視聴した映画短評(その1)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・カンフースタントマン 龍虎武師 3.7
主に1970-90年代のカンフー映画をスタントマンの視線から見た映画。全てが時系列通りではないが、カンフー映画の起源から全盛期、衰退期、そして今を当時の映像と関係者のコメントで振り返っていく

衰退する理由はどこも同じで、過去の栄光に縋ってワンパターンからの脱却が出来ない。CGが発達した時代に命がいくつあっても足りないようなアクションを売りにはできないわな。最近のインド映画は歌と踊り頼みから脱却して多様性が出てきたが、香港映画は変化が遅すぎた感がある

あくまでスタントマンが主役なので大物はサモ・ハンくらいしか出てこないが、懐かしいと思える世代の人なら見て損はないと思う。ただ、ジャッキー・チェンが出てこないのがね。映画でのシーンは出てくるが、コメントが欲しかったな。まあ、今のジャッキーにコメントを求めるのは難しそうだが

 

・ドリーム・ホース 3.0
競馬を題材にした映画はシービスケットセクレタリアト/奇跡のサラブレッド等、馬が主役の作品が多いが、本作は馬主の方に重きをおいた作品。例えるなら、そこまで生々しくはないが、優駿 ORACION的な感じか

まず競馬について。競馬は大別して平地競走と障害競走に分けられるが、本作は障害競走の話。イギリスでは障害競走が人気で、最高峰のグランドナショナルは賞金総額100万ポンド。英ダービーが150万ポンド、キングジョージが125万ポンドなので遜色ない水準

日本でもオジュウチョウサンが11歳で中山グランドジャンプ(優勝賞金6,600万円)を制するなど高齢馬が活躍することが多く、グランドナショナルは何と出走条件が7歳以上で10歳以上が当たり前の世界

その理由は距離とコース。グランドナショナルは約6,900mで障害数30。中山グランドジャンプが4,250mで障害数17なので段違いのタフさを誇る。スピードよりタフさと飛越の上手さが求められ、多くの馬が競走を中止する

ウェルシュナショナルはウェールズグランドナショナルに当たるレースだが、グランドナショナルのステップレース的なポジションで、日本なら阪神スプリングジャンプ等のJ・GIIって所か。天皇賞(秋)に対する毎日王冠オールカマーと言った方が分かりやすいかも

あと出資者を公募する所謂クラブ馬主制度は日本にもあって、マイネルでおなじみのサラブレッドクラブ・ラフィアンとかウマ娘化されないことでおなじみ(?)のサンデーレーシングあたりが有名所だろう

長々と競馬の話をしたが、ぶっちゃけ内容はそこまで…。勿論、レースシーンはあるが、競馬に深く立ち入った内容ではない。実話ベースではあるが、テンポが良く、適度な溜めもあって手堅く纏まった脚本だとは思う

イギリス競馬のゴージャスな雰囲気は感じられるし、そこに田舎者が大挙して押しかけるのは、中津江村(現日田市)の村民が大勢でカメルーンの応援に行くノリで微笑ましい

お金の話は出てくるがそこまで深刻な内容ではなく、上述のように競馬については極々浅い内容なので、競馬に詳しくない人が気楽に見る映画としてはいいと思うが、競馬マニアには物足りない作品だろう

 

・マリッジカウンセラー 3.5
大手不動産会社から出向してきた赤羽昭雄とカリスマ仲人と呼ばれた母から結婚相談所を受け継いだ時田結衣ら、仲人達の奮闘を描いた作品。本作の前日譚に当たる作品があるらしいが、筆者は未視聴

一言で言うと上手く纏めたなという印象。赤羽は過去の栄光にしがみついて自らを省みない典型的な嫌な上司タイプだし、相談に来る連中も「そりゃ結婚できんわ」と言いたくなるような一癖ある人ばかり。当然、上手くいく筈もなく嫌悪な雰囲気に

しかし、赤羽と結衣は徐々にお互いを認めて感化されていき、それが会員にも良い影響を与えて上手く回りだすようになる。結婚するしないは個人の価値観だと思うが、コメディも柔らかい感じで押し付けがましくないので既婚未婚問わず楽しめる作品だと思う

ただ、映画っぽくはないかな。大きな展開もないし。ドラマならそれぞれの背景にももっと踏み込めると思うし、会員以外にもスポットライトを当てられるので、続編があるならドラマにして欲しい。多分、中京ローカルになるだろうが、今はTVerとかあるしね

P.S. 松本若菜が美人すぎる。こんな人にサポートされるなら、ずっと独身でいいやと思ってしまうかも

 

・SHE SAID/シー・セッド その名を暴け 3.7
ハーヴェイ・ワインスタインによる性的暴行疑惑を追いかけた2人の女性記者による回顧録をベースにした作品。#MeToo 運動に火がついたきっかけとなった出来事で、日本でも監督による"演技指導"が問題になるなど影響力が大きい

本作の特徴的な点はまず家族の描写が多いこと。記者も被害者も女性が多いこともあるが、子育てとの両立や家族の理解など女性の社会進出の上で問題になりそうなことがサブテーマになっている

次に上司と話しているシーンが多いこと。主役は記者ではあるが、あくまで組織としてワインスタインに対峙するプロセスが描かれている

この手のテーマは男性vs女性の構図になりがちだが、全ての男性を敵視しているのではなく、あくまでワインスタインの悪事を告発するのが目的だとはっきりさせる効果があったと思う

本作を一言で言うと"質実剛健"。事実をベースに丁寧に作られた作品だと思うが、ぶっちゃけ地味。ドキュメンタリーではなくドラマなのだから、もう少し盛り上がらないものかねえ。ラストシーンは悪くないけど

ニューヨーク・タイムズ紙は紙媒体が厳しい中オンライン契約数を増やしているようだが、こういう"仕事"が評価されているのだろう。記者クラブ制度に甘えてマスコミの矜持を忘れたメディアには未来はない。日本で残りそうな紙媒体は週刊文春くらいだろう

 

ルパン三世VSキャッツ・アイ 2.5
ルパン三世のアニメ化50周年とキャッツ・アイの原作40周年を記念して製作されたコラボ作品だが、アマプラ限定配信作品

タイトルを見ると対決モノと思ってしまうが、実際はルパン三世 ゲスト:キャッツ・アイな感じでルパン三世の世界観でルパン一味がキャッツ・アイに御膳立てする内容。まあ、ルパン三世クラリスにもおじさまと呼ばれていたし、特に愛にとってはお父さんでも不思議じゃないからねえ

ストーリーは90分程度の作品だし、こんなものかなって感じ。キャッツ・アイに合わせてターゲットは絵で、絵にまつわる謎を解いていく。明らかに怪しい人物がいるのでミステリー要素は薄いが、キャッツ・アイに関するエピソードを楽しませる軽めの内容

作画は3D。ただ、古い感じのキャラデザで懐かしさを感じる。設定が1980年台なので合わせたのか。それとキャッツ・アイ3人の衣装は露出不足で不満に感じるおじさんが多いかも。まあ、セクシーなのは(同じ作者の)シティーハンターでってことだろう

既にアマプラ会員なら見て損はないと思うが、この為だけに会員になる必要はないと思う

2022年私的映画ランキング+各賞

さっさと行きます

まずは、ベストランキング

個人的な合格ラインは評価3.5以上なので、まずは評価3.5の作品

3.5 テレビで会えない芸人
3.5 犬王
3.5 ビリーバーズ
3.5 SING/シングネクストステージ
3.5 サバカン SABAKAN
3.5 メタモルフォーゼの縁側
3.5 マイスモールランド
3.5 ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガー
3.5 スピリットウォーカー

次は、評価3.6-3.9の作品

3.9 ギレルモ・デル・トロピノッキオ
3.9 コーダ あいのうた
3.7 愛してる!
3.7 女子高生に殺されたい
3.7 愛なのに
3.7 モガディシュ 脱出までの14日間
3.7 死刑にいたる病
3.6 手
3.6 生きててよかった

最後に、評価4.0以上の作品

4.4 ブレット・トレイン
4.3 RRR
4.3 ドント・ルック・アップ
4.2 さがす
4.2 ナワリヌイ
4.1 東洋の魔女
4.0 神は見返りを求める
4.0 犯罪都市 THE ROUNDUP
4.0 ある男
4.0 瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと
4.0 ライダーズ・オブ・ジャスティ

同点は、上の方が順位が上。「東洋の魔女」は2021年公開作品

2022年のベストは「ブレット・トレイン」。原作未読なんで原作ファンの人からすればふざけるなかも知れないが、原作の良さを理解した上で改変を加えて独自の世界観を構築した印象


次いで、ワーストランキング

まず、評価0.6-0.9の作品

0.9 ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
0.8 マッドゴッド
0.8 NOPE/ノープ
0.8 ウエスト・サイド・ストーリー

まだ、許せる範囲かな。次に、評価0.5の作品

0.5 グリーン・ナイト
0.5 鹿の王 ユナと約束の旅
0.5 バイオレンスアクション
0.5 バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ
0.5 太陽とボレロ
0.5 バブル

最後に、評価0.3以下の作品

0.3 リコリス・ピザ
0.3 サイレント・ナイト
0.3 映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ
0.3 永遠の831
0.3 真夜中乙女戦争
0.0 3022
0.0 東京2020オリンピック
0.0 大怪獣のあとしまつ

3022は劇場未公開作品。東京2020オリンピックはSIDE:A、SIDE:Bトータルでの評価。同点は、下の方が評価が下。同点が多いが、下の方の作品は0.1点刻みにしていない。0.5点以下の作品は個人的に相当ヤバい作品

2022年のワーストは「大怪獣のあとしまつ」。本当はマイナスにしたいのだが、最低点は0点なので。面白くないと言われそうだが、映画界の正義を守るためにも断罪すべき作品。この駄作を関係者は「観てる側の理解力が足りない」と曰いやがったんだからとんでもない話だ


毎年やる気にはならないが、2022年は見た本数が多かったので、各賞も決定していく

まず、最優秀監督賞は城定秀夫

◎城定秀夫
○デビッド・リーチ
S・S・ラージャマウリ
○アダム・マッケイ
○片山慎三

何故、ベスト作品の監督を選ばないのかと言われそうだが、城定秀夫監督は2022年に公開された作品がとにかく多くて、それでいて粗製濫造になっていないのが評価できる。映画としての評価はそこまで高く出来ないが、「ビリーバーズ」なんか城定監督じゃないと糞つまらん作品になっていたと思う

最優秀男優賞は窪田正孝

窪田正孝
○マ・ドンソク
磯村勇斗
神尾楓珠
柄本明

RRRは二人選ばないといけないしなあ。海外映画ではマ・ドンソクかな。とにかく存在感が半端ない。若手だと磯村勇斗神尾楓珠が印象に残ったけど、インパクトという面では「ある男」の柄本明かな。ピッタリ過ぎる。でも、最優秀男優賞は窪田正孝。出演作品が多いが、見たのは「ある男」「決戦は日曜日」。「ある男」が良かったけど、「決戦は日曜日」では真逆と言っていいキャラで演技の幅を感じさせた

最優秀女優賞はナリルヤ・グルモンコルペチ

◎ナリルヤ・グルモンコルペチ
岸井ゆきの
河合優
○伊東蒼
○北村優衣
○宮崎優
○鳥之海凪紗

普通に選べば出演作数の多い岸井ゆきの河合優実辺りを選出するのが妥当かなと思うが、2022年は一発で撃ち抜いた女優が多かったのでこちらのタイプから。伊東蒼(「さがす」)、北村優衣(「ビリーバーズ」)、宮崎優(「死刑にいたる病」)、鳥之海凪紗(「愛してる!」)も印象に残ったが、やっぱりナリルヤ・グルモンコルペチ(「女神の継承」)で決定でしょ。この演技はヤバ過ぎる

2022年に視聴した映画短評(その19)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・ブルーサーマル 1.7
小沢かなの漫画が原作。心得がある人ならタイトルでピンとくると思うが、(大学の)航空部を舞台にした作品。監督がプリンセス・プリンシパル橘正紀なので期待したいところだが、脚本が「脚本界(?)の山○○人」こと高橋ナツコ女史なのは不安材料

ぶっちゃけ褒められるのは序盤だけ。多少強引な展開ではあるが、部活モノならこんなものだろう。たまきがグライダーに惹きつけられていく様子がストーリーだけでなく映像からも伝わってくる。ただ、高橋ナツコが牙を剥くのはこれから

原作は単行本5巻+αで、しかも打ち切り漫画。後半はかなりの巻きで進行しているようで、少なくとも実質7-8巻分のボリュームはあるだろう。それを100分程度に纏めるのは明らかに無理があるのだが、それにしてもねえ…

単にエピソードの中の印象に残るシーンだけを抜き出して切り貼りしただけ。途中の話は勿論、人物の掘り下げが皆無なので、終始唐突な感じでTVシリーズのダイジェストを見ているように思える。まあ、ダラダラして話が進まないよりはマシだろうが

無理に全てを映画化する必要はないでしょ。特に最後は得意のナツコオリジナル展開みたいだし。高橋ナツコではあまり仕事が来ないから高橋イタコに改名する気なのだろうか

作画は可もなく不可もなくってところか。正直、最近のアニメ映画のクオリティからすると見劣りする。ただ、作画のクオリティよりグライダー競技の魅力を表現できていないのが問題。ルールもよく分からんし、台詞による現状説明で状況を把握せざるを得ないのはダメなスポーツアニメの典型

声優は殆どプロだが、主人公のたまきは堀田真由。他にムスカの人とかも出ている。演技は及第点以上だし好印象だが、プロだと水瀬いのりがやりそうな役でその方が説得力があったかも。本作はしょうもない理由で主人公に悪態をつくキャラが多いが、甲高い声だと屁理屈も多少は理解できるかも

素材は悪くないので、新人戦位までをもっとじっくりと映画化すれば良かったと思うが、それよりは打ち切りENDで描けなかった話を補完してTVシリーズでやって欲しい。勿論、脚本家は交代で。さよなら私のクラマーを見る限りスポーツものも得意ではなさそうだしね

P.S. 151cm50kgでデブなんかね。運動とは無縁だと多少ふっくらして見えるのかも知れないが、体育会系女子ならこんなものだと思うけど

 

・鹿の王 ユナと約束の旅 0.5
原作未読だが壮大なファンタジーであることは知っていたし、”映像化不可能”とも言われているらしく世界観をどう表現するのかが難しい作品なのだろう。そんな原作をアニメ映画の尺で表現しようとしたら、お粗末なデキになることは容易に想像できるのだが…

何がダメと一言で言うなら、本作を見ても原作の良さが全く伝わらないこと。上橋菜穂子と言えば「精霊の守り人」「獣の奏者(エリン)」が既にアニメ化されていて、「鹿の王」も凡庸な作品とは思えないのだが。まあ、上述のように原作未読なので断言はできないが

長編の割にはストーリーはシンプルのようだが、とは言えこの尺では説明不足なのは否めない。それなのに、やたら自然と戯れるシーンを強調して話が進まない。あまり台詞で説明したくないのだろうが、おかげで余計に本作の良さが伝わらず、薄っぺらい印象になってしまった

新海作品等にも見られるが、とにかく要素の噛み合わせが悪い。リアルとファンタジーもそうだが、リアルについても勢力争いと治療の話がバラバラに進行している感じ。余り関係ないのなら、どちらかをメインに据えるべきだったと思う

作画は(硬派な)攻殻機動隊シリーズで知られるProduction I.Gだが、スタッフにジブリ関係者が多いこともあってジブリっぽい柔らかい感じ。ただ、そのせいで劣化ジブリの印象が強くなっている

声優は例によって似非声優。悪くはないが、本職と比べると滑舌が悪くて聞き取りにくい。鬼滅がヒットしてパンダは必要ないって証明した筈なんだけど、悪しき習慣は簡単には変わらないのだろう

本作はコロナ禍を口実に2回も公開延期されているが、だったらもっとブラッシュアップできなかったものかね。難解な話は極力カットして、画もストーリーも(大ヒットした)「もののけ姫」、声優もパンダ起用でヒット間違いなしの皮算用だったようだが、興行収入は残念な結果に終わったようだ

P.S. だったらTVシリーズならどうかだが、原作の魅力は細かい描写らしい。人物描写はアニメより実写向けだと思うが、ファンタジーは実写だとかなり難しい。特に貧乏性の日本ではショボいものになるのがオチ。原作ファンからしてみれば、やはり映像化してはいけない作品ってことになりそうだ

 

・バイオレンスアクション 0.5
浅井蓮次と沢田新によるコミックの映画化だが、主演は最早”B級映画請負人”橋本環奈。普段はゆるいのに裏の顔はシビアな殺し屋稼業と言えば「ベイビーわるきゅーれ」を思い出すが、当に月とスッポンだ

アクションシーンは見るに堪えない。カット&エフェクトで誤魔化す気しかない感じで動きは極めて単調。殆どアクションしていないんだろうな。アクションと名乗るなら、せめてジェシカ・チャステイン位にはやって欲しいものだが

じゃあ、コメディとしてはと言われると…。岡村隆史はいいアクセントになっているが、佐藤二朗は相変わらず滑っているしねえ…。これと言って見せ場なし

ストーリーはごくありきたりなヤクザもの。映画の尺では仕方ないかも知れないが、主人公のケイすら禄に掘り下げないので感情移入のしようがない。アクションのショボさと相まって何となく話が終わっちゃったって感じ

キャストは無駄に豪華だが、ハッキリ言ってそれだけ。あと、らーめんTシャツになりたいw。しかし、橋本環奈はおこちゃまに見えるな。赤髪だし、ポスター見て一瞬SPY×FAMILYかと思った

 

神々の山嶺 2.5
夢枕獏の小説を谷口ジローがコミカライズした作品「神々の山嶺」がフランスでアニメ映画化。日本では「エヴェレスト 神々の山嶺」のタイトルで2016年に実写映画化されている

小説も漫画も実写映画も見ていないので比較はできないが、正直薄い。全5巻の漫画のアニメ映画化なのでバッサリいかないとどうしようもないのだが、羽生も深町も描写が中途半端な感じ。まあ、羽生のミステリアスでストイックな所は伝わるが、それでも感情移入はしにくい

あと、人が死にすぎ。原作がそうなんだろうが、火曜サスペンス劇場じゃないんだから。下山家と揶揄された登山家でさえも山で絶命したように雪山が危険なのは分かるが、山で死ねたら本望と言うのは理解し難い。死ぬ時は腹上死みたいなものかと言ったらアルピニストに怒られるか

画のタッチは如何にも海外映画って感じ。最近はCGが多い中、本作は手書き。最近の写真のような美しい画とは明らかに異なる。雪山の描写は素晴らしく、風景の美しさもさることながら、アタック中の緊迫感と迫力が伝わってくる

反面、街中の描写はイマイチ。本作は1990年代前半の設定だと思われるが、雰囲気から受けるイメージは昭和。だから、ネカフェがあったりする今風の街並みに違和感がある。それと瞳が皆つぶらで人物の区別がつかない。フランス人から見た日本人は皆そう見えるのだろうか

原作に対するリスペクトは感じるが、作品の出来自体は普通。アマプラで視聴しての感想だが、映画館で見るほどではないと思った。まあ、原作を知っていれば違った感想になるのかも知れないが

 

・エルヴィス 1.0
アカデミー作品賞にノミネートされたのでレビューにするが、ぶっちゃけ駄作。まあ、ノミネートされる作品の半分位はゴミなのが通例だと思うが

まず、タイトルに偽りあり。本作をプレスリーの伝記映画だと思ってみるとガッカリする。本作の主役はトム・ハンクス演じるマネージャーのパーカー大佐。語り部もパーカーだし、とにかくパーカーの存在感が半端ない

オースティン・バトラー演じるエルヴィスは悪くはないが、パーカーに対して脇役にしか見えない。更に、当時のエルヴィスの映像が挿入されるから余計に存在感が薄い。やっぱり本家には勝てないし、バトラーのエルヴィスがパチもんにしか見えない

上映時間は2時間40分ほどだが、正直長過ぎる。歌唱シーンをじっくり見せてくれるならいいが、ぶった切ってパーカーの語りを被せるし。オースティン・バトラーとトム・ハンクスでは格が違うのは確かだろうが、そこまでトム・ハンクスに忖度する必要なんてあるのかね

変わった目線、歌唱はおまけならドキュメンタリーとして作れば良かったと思うが、金になりそうな題材をドキュメンタリーにするんじゃ賞にも商売にもならないってことだろうな。作品賞ノミネートでリバイバル上映する所もあるだろうが、金だして見る程の作品じゃないんで他の作品の視聴をお勧めする

2022年に視聴した映画短評(その18)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・太陽とボレロ 0.5
水谷豊と言えば最近だと「相棒」だろうが、おじさん世代だと「熱中時代」で主題歌のカリフォルニア・コネクションを歌っていたことも知っている筈。そんな水谷豊は映画監督としての顔も持っているが、正直鳴かず飛ばず。その謎を探りに映画館へと潜入した

マチュアオーケストラ、映画タイトルからある楽曲が思い浮かぶ筈。思い浮かばないなら視聴は止めた方がいい。檀れいや町田啓太目当てでは最後まで持たないだろう、まあ、クラシックに興味があっても途中で飽きるけどね

ぶっちゃけ開始5分が本作のピークだからなあ。CMにも使われる有名な楽曲が奏でられると、「西本智実かっけえ」「ブラボー」って感じ、勿論、最後に見せ場はあるが、約2時間の苦行が始める

地方のアマチュアオーケストラが存続の危機というありふれた設定にも関わらずツッコミどころの山なのだが、細かい事に関しては寛大な心で見逃すことにする。本作がつまらんのはそういう問題じゃない

とにかく無駄なカットが多い。予告編で楽団員に解散を告げるシーンがあるが、ここまでで1時間位かかるからなあ。テンポが悪いにも程がある

更にここから先はコメディ色が強くなるが、内容が寒い。決めポーズとか、いちいち「昭和かよ」とツッコミを入れたくなる。まあ、昭和ノリが絶対にダメとは言わないが、監督はこれがイケてると思っているだろうから痛い。河相我聞が気の毒過ぎる…

折角、これだけのメンツを集めたんならパロディにすればいいのに。石丸幹二檀れいが絡めば「題名のない音楽会」って感じだし、やたら人気のない所に呼び出すシーンが多いが、山○○紗なら何人死んでるか。2時間ドラマによく出ている人が多いんだし

一番笑ったのは糞寒いコメディの山ではなく、檀れいの母親役が檀ふみだったこと。単に名字が同じなだけで肉親ではないけどね

本作に映像面を求める人は皆無だと思うが、映像も稚拙。画面暗転→引きの映像からの寄りがやたら多い。ただでさえテンポが悪い上にぶつ切り感があるし、単調なストーリーが更に単調に思える

少しは褒めると、ベタは避けようという気概は感じる。最終公演の前にストーリー的にタメがあるのはいい。ただ、エンドロールで別の曲を流す位なら、ボレロにエンドロールを被せたらと思った。そこそこ有名なタイトルのあえて一番有名な曲を使わないのは拘りなんだろうけど

折角、西本智実を呼んだんだし、西本のクラシックを聴かせるで良かったと思うが、水谷豊の性格だとそれでは納得出来ないんだろうな。腕の悪いシェフが松坂牛をビーフストロガノフにしようとして失敗した感じ。単に塩コショウしてソテーでも十分なんだけどね

稚拙な上に痛いので0点と思ったが、西本智実に免じて極刑は回避。懲りずにまた映画を作るんだろうが、センスが無いのは明白だし黒木瞳同様監督業は即刻廃業して役者一本で行って欲しい。しかし、この作品を見た後だとクリント・イーストウッドが神に思える。あのレベルの作品は永遠に作れんだろうな

 

・映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ 0.3
2021年に全13話のTVシリーズとして放映された「オッドタクシー」の映画版。TVシリーズは2021年のベストアニメに選んだ位素晴らしい作品だが、これを映画化して誰得と言われていたように残念な出来

流石にTVシリーズの完全ダイジェストじゃ気が引けたのか、中盤まで登場人物へのインタビュー方式でストーリーを進めていくように変更されている。ただ、本作の登場人物はかなり多い上に、人物同士の関係性も分かりにくくなっている

TVシリーズの良い所は無関係と思える人物まで関連している複雑さとシリーズ構成の巧みさだと思うが、映画だと良さが全部消える形に。TVシリーズ未視聴で本作を見た人はあまりいないだろうが、この構成でストーリーを追えたのだろうか

本作の唯一の売りと言える最終回後のエピソードは極僅か、新たな目線でストーリーを楽しむと言うよりクソ長いインタビュー早う終われって感じ。マルチプラットフォーム化を否定はしないが、こんな出来ではTVシリーズの評価まで下げることになる。関係者は猛省して欲しい

 

・真夜中乙女戦争 0.3
開始10分でヤバいと思ったが一応最後まで視聴。小生が嫌いなボヤっとした作品と言うことを差し引いてもどこを褒めるのって感じ。強いて言うならキャスト位か

画作りに拘っているのは伝わってくる。ただ、奇抜なカメラワークはカメラ酔いを誘うだけだし、画で説明不足なシナリオや世界観を補っているかと言えばそうではない。何となくお洒落な映像にしてみましたって感じ

全体的に無駄なカットが多くて長い。私と先輩のラブシーンも何もなしでこの長さ。この無駄な尺を「何故?」に振れば少しは話に入れたと思うけど。視聴者に考えさせるにしても本作は群像劇、全ての主要人物の行動原理を考えろと言うのは無理がある

それと「ファイトクラブ」に寄せすぎ。まあ、青年の鬱屈とした感情を世間に対して爆発させる話はいくらでもある訳で「味付け」が必要になるが、雑にファイトクラブの要素を加えただけでストーリーに噛み合っていないように感じる。原作未読だが、原作もこうなのかね

正直、二宮健の筋の悪いオナニー映画としか言いようがないが、福田雄一園子温に比べればまだマシか。極刑は回避するが酷い作品。若くてストーリーは理解せずに感じるタイプの人にはいいのかも知れないが、おじさんが見るべき映画ではないと思う

 

東京2020オリンピック 0.0
SIDE:AとSIDE:Bの二本立てだが、共通する(ダメ出し)要素が多いので纏めて評価

SIDE:Aは0点。ネトウヨや映画関係者が発狂しそうだが、理由は明快で記録映画の体を成してないから。ラーメン屋に行ってラーメンを注文したのにうどんが出てきて、「ラーメンもうどんも似たようなものだろ」と言われて納得するのかって話

内容は河瀨直美の趣味全開のドキュメンタリーってとこか。一応、選手が主役ではあるが、競技シーンは殆どない。記録映画で日本の金メダルラッシュに沸いた五輪を振り返ろうと思う人は見てはいけない

まあ、記録映画の縛りを抜きにすれば0点ではないと思うので、スポーツにはあまり興味が無い河瀨直美のファンなら見る価値があるかもね。あと、藤井風の歌が聞けるのはSIDE:Aだけ

SIDE:Bは0.5点。SIDE:Aに比べれば記録映画っぽいのでこの点数だが、記録映画縛りを抜きにするならSIDE:Aよりデキが悪い。普通の映画なら0点にするかも。時間がなかったのか内容が整理されていないし、締めは陳腐そのものだし

一応、時系列を追う形にはなっているが、シャッフルされているので非常にわかりにくい。しかも、本来はSIDE:Aで扱う筈の競技の話も入ってきているし

SIDE:Bに関しては、スポーツは勿論オリンピックには興味がなくオリンピック反対の運動をしていた人も期待していただろうが、率直に言って見るだけ無駄。無かったことにはなっていないが、五輪関係者には取材しているのに反対運動の参加者には取材にならないという印象を植え付けるだけ

まあ、本作は東京オリンピックの記録映画な訳で五輪賛成派の立場なのは当然。第三者による五輪開催への道のりを描いた作品ではないからねえ。ただ、本作を見ると、禄に大義名分もないまま五輪をゴリ押ししたとしか思えない。実際、そうなんだから否定できないと思うけど

別に記録映画だからってIOCの犬である必要はないと思う。こういう視点からの記録映画は異例だし、好きにやっても良かったと思うけどね。SIDE:Aでは好き勝手やってるのに

反対運動以外にも、厳しいイベント規制で(五輪より後の開催である)鈴鹿GP等も中止になったのに、何故五輪は開催されるのか。別に河瀨直美が五輪賛成だったか反対だったかは興味ないが、河瀨が考える五輪強行の大義名分は何なのかは示して欲しかった。震災、広島、そんなんじゃないでしょ

トータルでは0点。まずSIDE:AとSIDE:Bの区別が不明瞭。SIDE:Aが競技の記録で、SIDE:Bが「場外戦」も含む裏方とかの話だった筈だが、SIDE:Aは選手メインではあるものの政治色が強い内容だし、SIDE:Bは本来SIDE:Aで扱うべき内容を雑に放り込んだ感じ

それにSIDE;Aがオナニー全開でSIDE:Bが大人しいのも違うと思う。逆ならここまで低評価にはならなかったと思うけどね。世界の河瀨直美が監督した映画がこんな惨状で良いのかとか言っていた映画関係者がいたが、寧ろ不入りで良かったんじゃないの。これで納得するのはファンだけだろう

次に選り好みが過ぎる。映画全体のトーンからして河瀨直美がスポーツに興味があるとはとても思えないが、女子バスケに思い入れがあるのかね。SIDE:Bでも尺を割いているからねえ。知り合いでもいるのか

女子バスケより気になるのは森喜朗。SIDE:Bでは勿論のこと、SIDE:Aでもしっかり出てくるからねえ。御存知の通り件の発言で会長を辞任しているので、五輪直前によりフォーカスして然るべきの記録映画なら出番はそんなに多くない筈だが、どうでもいい所でも抜かれるなど存在感が半端ない

本作はジェンダーとか女性の権利の主張が強い。女性監督だしそれ自体は悪いとは思わないが、それなのに女性蔑視の権化のような森喜朗フィーチャーは違和感しかない。小池百合子の扱いはぞんざいなのを考えると将来は自民党から立候補するつもりかね。流石に森喜朗の愛人ではないだろうし

他にも言いたいことはあるがこの位で。「朝が来る」を見て路線変更かと思ったが、単なる気まぐれだった模様。福田雄一だって「普通の」映画を撮ることもあるしね。やっぱり河瀨直美はこの程度かという印象だけが残った

 

・大怪獣のあとしまつ 0.0
噂に違わぬ駄作。三木聡監督は前作「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」もヤバかったので酷評はシン・ゴジラ的なのを期待したヲタクの逆恨みではないと思っていたが、他の駄作同様開始10分で観てしまったことを後悔するレベル

三木も福田雄一同様、深夜ドラマを手掛けていたこともあって悪い意味で似ている。脈絡なく入るギャグらしき何かが話の腰を折る。しかも、その内容が訳の分からない比喩とウンコとかゲロとか小学生レベルの下ネタ。いったい何を笑えばいいのか

本作も前作も着想は悪くないと思う。ただ、脚本に昇華できていない。見境なしにネタを挟むのがコメディではない。だからストーリーは勿論、風刺も伝わらない。観てる側の理解力が足りないのではなく、作り手の力量が足りないだけ。関係者は猛省して欲しい

まあ、福田の新解釈・三國志みたいなノリが好みなら、本作も楽しめるのかも

2022年に視聴した映画短評(その17)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・犬王 3.5
古川日出男の小説「平家物語 犬王の巻」を湯浅政明監督でアニメ化した作品。湯浅監督はかなり大胆なアレンジをするので、当たり外れがハッキリしている印象。果たして、本作は如何に?

解説を見るとミュージカルアニメと書いてあるが、ミュージカルと言うよりはアニメ版「ボヘミアン・ラプソディ」って感じ。ロック調の曲も多く、クイーンのあの曲を思い出させるものもアリ。犬王が体の一部を取り戻していくのは、「どろろ」の百鬼丸にオーバーラップする

序盤こそストーリーを追っていくが、ぶっちゃけ中盤以降はライブアニメ。友魚が奏でる琵琶と犬王が舞う能はまるで対バンバトルのよう。ただ、ロックの割にテンポが遅いのでノリ切れない感がある。テンポを上げると歌詞が聞き取りにくくなるからなんだろうけど

犬王は実在した人物だが、友魚はオリジナルキャラ。今年、フジテレビ系列で放映された「平家物語」でも「びわ」というオリジナルキャラを使っていたが、語り部となる琵琶法師を登場させた方が脚本が書きやすいのかね。「平家物語」も本作と同じサイエンスSARU制作だし接点があるのかね

声優は似非声優多数だが正直微妙。威厳が感じられなかったりしてイメージに合わない。主役のアヴちゃんと森山未來もうーんって感じだが、歌に期待しての起用なんだろうな。アヴちゃんは本業だが、森山未來はミュージカルにも出演しているだけのことはある

原作が短めな上に犬王の呪いについての詳しい話はカットしたようで、所謂「感じる」タイプの作品だろう。ロック等今風のアレンジを斬新と取るか陳腐と取るか、作画も癖があるし残虐シーンもあるので評価がかなり割れているのも納得。刺さる人には無茶苦茶刺さる作品だと思う

 

・映画 ゆるキャン△ 2.7
既にアニメ2期、ドラマ2期が放送されているあfろの人気作品。原作ではなでしこ達は高校生だが、本作では高校を卒業して社会人になってのエピソードを描いている

社会人になった姿なんて見たくないという声もあるが、個人的には寧ろ社会人になっての話にしたのは大正解だと思う。某鬼滅みたいに原作の一部を映画にして、それをTVシリーズ用に再編集よりは遥かにマシ。映画は映画の方がいいと思うけどね

それと内容がないという指摘もあるが、ゆるキャン△はそういう系統の作品じゃないでしょ。プロットは極めてシンプルだが、ちゃんとストーリー的にタメがあるし脚本はそこまでダメってことはないと思う

ただ、タメが長すぎると言うか中途半端と言うか。社会人になったことを意識しすぎな気がする。映画の尺じゃ緻密な話は描けないし、本作に求められているのは大人の事情を描くことではないだろう。そもそも仕事をしていて山梨との往復で片付くような規模の話ではないし

遺跡発掘云々はタメを作るためのエッセンス程度にしておいて、もっとシンプルに社会人になって疎遠になっていたなでしこ達が力を合わせて頑張る姿をメインに描いた方がゆるキャン△らしくて良かったと思う。まあ、2期を見る限り、原作でもキャンプ要素は薄くなっているんだろうけど

原作、アニメ、ドラマ、全て見ていない人のレビューもあったが、未視聴組が見ても面白くないと思う。昔の話にオーバーラップさせるシーンが多いので、まずはどれか1つに接触して興味が持てたら本作を見ることをオススメする

 

ハケンアニメ! 1.2
SNSで話題になった作品だけど、なんか嫌な予感がして劇場での視聴は見送ったが正解だった。ゴミとまでは言わないが、「これだから邦画は…」と言いたくなるような作品

何を伝えたいのか伝わらない作品。(一部の)ツールは令和、中身は昭和で違和感がありすぎる。舞台は日本だし、未だに根性論とか浪花節が罷り通るのは事実だが、そこを強調するとアニメ業界じゃなくても通じる話。それとアニメのデジタル化についていけてない。今時、手書きの絵コンテ連発するかね

また覇権に対してまともに向き合っていないように感じる。内容より数字(視聴率)と言っておきながら、(数字より)後世に残る作品をと言ってみたり。理想と現実のせめぎ合いはアニメに限った話ではないしそれを描きたいのは理解できるが、何か中途半端なんだよなあ

もっと分かりやすい構図にすればいいのに。徹底的に拘る天才vs周りに担がれる凡才。作中では起用されたアイドルが努力している姿が描かれているが、「どうせ客寄せパンダなんだし」とヘラヘラしてたら面白いのに

映像には拘るが、内容は無いよう。「来来来世」とかノリのいい音楽を流しておけばヒット間違いなし。それが拘りに負ければ伝わる作品になると思うが、○○や○○○を揶揄していると思われるのは確実だから、そんな作品を作る勇気はないだろうけどね

正直、原作をリスペクトし過ぎ。原作が群像劇だから仕方ないところもあるが、もっと取捨選択しないと。登場人物の過去の仕事ぶりとかがカットされているのも話に入れない要因になっている。更に肝心なことが描けてない割に本題に入るのが遅いから、テンポが悪く感じる

劇中アニメは劇中アニメとは思えないほどのクオリティなので、もっと見たかった。視聴者の反応にも触れられているが、この短時間じゃ説得力が。ただでさえ詰め込みすぎてダイジェスト感が強いのに、これ以上アニメに尺を割けないってことだろうけど

キャストは悪くないし、松岡修造ノリが好きな人には受けるのかも知れないが、そもそも多様化の時代に覇権とか時代錯誤だし、このタイミングで制作するのならもっと時代に合わせるか、視聴率争いが現実だった昭和設定にするかだったと思う

 

・余命10年 1.3
薄命のヒロインもの且つ年数カウントダウンもの。前者は泣かせることに神経が行き過ぎて陳腐な印象になりがちだし、後者は年数を追うとメリハリがつけにくくなり散漫になりがち。普段なら絶対見ないが、藤井道人監督作品だしアマプラで無料ならいいかなと

ヒロインの小松菜奈を含め演技は悪くないと思うし、泣かせる仕掛けが上手く取り込まれていて「泣かせる映画」としては良く出来ているのだろうな。なんちゃらガーデンで号泣って人ならブラボーって感じなんだろうけど、ひねくれたおっさんはこんなんじゃ泣けん

泣ける泣けないはともかく、まず中途半端。闘病生活なのか恋愛なのか、どちらに重きをおいているのか。次にテンポが悪い。闘病生活メインにしても恋愛は描くことになると思うが、付き合うまで遅すぎるでしょ。あと、この内容なら90-100分程度で纏めて欲しかった

一番ダメだと思ったのは、二人が恋に落ちるとはとても思えないこと。同窓会が契機はありがちな話だし、和人が学生時代から茉莉に好意を寄せていたのは分かるのだが、明らかに目立たないタイプで積極的とは言えないのは今も同じ

茉莉もかなりクールな印象で、とてもダメンズ好きとは思えないしね。増しては、恋愛なんてしないって決めてるんだし。そんな二人が深い仲になるにはトリガーが必要だと思うが、何がトリガーなのか全く想像できない

まあ、闘病生活がメインならいいと思うが、肝心の闘病生活についても病名こそわかっているものの、病気について掘り下げることはないし、長期に渡ったであろう入院生活も殆どカットだしね

藤井道人という看板があっても好きにはできないんだろう。興行収入的には大成功なんだろうけど、世の中には「邦画なんてつまらないから見ない」って人も多い訳で、その人達が本作を見て良い映画だと評価するとはとても思えない。量産型の集大成みたいな作品じゃなくて、もっと攻めた作品を観たかった

 

・ちょっと思い出しただけ 3.2
6年間のある日を追う定点観測☓ラブストーリー。恋愛モノはあまり好きではないが、監督が松居大悟だしアマプラで見られるので視聴

ぶっちゃけ、ストーリーは普通。池松壮亮伊藤沙莉も誰もが羨む美男美女カップルではなく、其処いらにいそうなバカップルって感じだし

本作の肝は定点観測のやり方で、「メメント」のように時を遡っていく。これによって、ストーリーに伏線回収の楽しさが加わっている。ただ、中盤までが少し長く感じた。十分な伏線を張ると共に、仕掛けに気付いて貰うためだろうけど

しかし、下手すると時を遡っているのに気付かない人もいるかも。日付と曜日は映るけど、年は映らないからねえ。同じ日付なのに曜日が違う(365=52x7+1なので、閏年以外は1日ずれる)のに気付けるかどうか。マスクもコロナ禍を絡めたいんじゃなくて、時を遡っていることを示唆する演出だろう

ラブラブシーンはそれほど多くなく、タイトル通りあっさり風味。仕掛けを楽しむ作品で恋愛映画が好きな人には物足りないかも。逆に美男美女の現実離れした恋愛なんて見たくないって人には楽しめる作品だと思う

2022年に視聴した映画短評(その16)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・ブラックアダム 1.8
最後位メジャーどころの作品で締めようと思ったが、上位3つはイマイチ気乗りしないのでこれを選択。アメリカンヒーロー物はそんなに好きじゃないしスパイダーマンはやられたって感じだが、逆に評判があまり良くない作品の方が当たりかも知れないと思ったのだが…

なんか全体的に「小粒」なんだよなあ。ブラックアダム以外全く印象に残らないし。そのブラックアダムもねえ…。ダークヒーローなんだからもっと暴れてくれ。マ・ドンソクの警察官の方が大暴れしてたぞ。ぶっちゃけ、本作はドウェイン・ジョンソンのアクション以外に見所はないんだし

ストーリーはまあこんなもんでしょって感じ。スパイダーマンもそうだったが、内容が薄い割に設定はガッチリしているので、設定を説明するのに尺を割く感じでテンポが悪い。まあ、設定がしっかりしてないと、得意のスピンオフ商法は難しいだろう

映像は悪くはないが、CGに逃げたって印象が強い。ハリウッドもコロナ禍で厳しいだろうし、潤沢な予算という訳にはいかないのだろう。邦画に比べれば雲泥の差だが、映像美を売りにできる程ではない

続編製作が中止になったようだが正解だろう。マルチバース示唆とか悪い意味でマーベルと変わらない印象だし、もっと強烈な個性が欲しい

 

・3022 0.0
稀代の迷作アンチ・ライフのジョン・スーツ監督作品。アンチ・ライフより前に制作されたようだが、日本では劇場未公開。なのに吹替版がある不思議。本作、最大の謎かも知れない

ぶっちゃけ褒めるところがない。アンチ・ライフ同様、90分程度で短めな作品だが、盛り上がりに欠けるため凄く長く感じる。宇宙ステーションは模型感1000%。全体的に画面が暗く、ワールドカップ視聴で寝不足だと寝落ち確実だろう

とにかく全てが中途半端。SF的なストーリーを考えるのが面倒臭くなって人物描写に逃げたとしか思えん。ただ、人物描写にしても、現在の状況が分からないと行動に説得力を持たない。訳の分からないストーリーと行動原理で最後まで突き進む感じ

SF好きにはとてもじゃないがオススメできない。監督のファン、B級映画マニア、出ている俳優はブルース・ウィリス程の有名人ではないが、海外ドラマに出ている人たちなので海外ドラマ好きなら楽しめるのかも

 

ピノキオ 2.0
最近ピノキオのリメイクブームで、現在ギレルモ・デル・トロ監督によるストップモーションアニメが公開されているが、本作は少し前からDisney+で配信された実写版。監督にロバート・ゼメキス、ゼペットじいさん役にトム・ハンクスと豪華な布陣

本作の原作は原作小説も含むらしいが、実質的にはアニメ版だろう。アニメ版のピノキオはかなり原作改変が行われているが、ピノキオと言えばアニメ版な人は多いだろう。劇中で歌われる「星に願いを」はストーリーを知らない人でも知っているのでは

映像は素直に素晴らしい。全てが実写ではないが、実写との合成も違和感がない。アニメは1940年(日本では1952年)に公開されたが、その頃の世界観を映像的には表現できていると思う

最近のディズニー映画はポリコレの話題とセットになっている感があるが、本作も例外ではない。ブルー・フェアリーは黒人(しかも坊主頭)に、ファビアナは脚が良くない設定に。ファビアナはともかく、ブルー・フェアリーはアニメ版だと金髪の白人なので違和感があるのは確か

ただ、黒人である必要性を感じないのと同時に白人である必要性も感じないのも事実。原作小説をアニメ版でそう解釈しただけの話。感想なんて「それってあなたの~」で構わないと思うが、歴史上の人物の改変とかならともかく、行き過ぎたポリコレアレルギーは単なる老害としか思えない

ストーリーは基本的にはアニメ版を踏襲している筈。見たことある筈だが、細かいことは覚えていないし。ただ、ブルー・フェアリーに導かれるというよりは(良心に従って)己の道は己で切り拓く冒険活劇の要素が強くなった感じか

良くないと思った点は、まずピノキオの性格。あまりに良い子過ぎるでしょ。アニメ版は原作よりだいぶ素直になっているが、それより素直になっちゃうとねえ。何も知らない筈なのに、こんなに物わかりがいい訳ないと思うが。最近はフィクションでも素行の悪い人物が炎上する時代だからかねえ

次にメタネタが寒い。インフルエンサーとか同調圧力とか、この時代にSNSなんてある訳ないでしょ。今風のネタを織り込みたいんだったらストーリーも大きく改変すべきだったと思うが

ラストについては賛否分かれるだろうが、個人的には良かったと思う。全て同じならリメイクする必要なんてないと思うし。しかし、ただでさえ影が薄くなったブルー・フェアリーの見せ場が無くなって不満な人も多いだろう

評価サイトでも上から下まで評価はまちまち。人によって評価が割れる作品なのは間違いない。(アニメ版の)ピノキオファンでも評価は割れると思うので、評価は自分で見て決めて欲しい

 

・ナワリヌイ 4.2
ロシアの反体制運動家、アレクセイ・ナワリヌイを追ったドキュメンタリー。政府がここまでやるかって感じで当に恐ロシアなのだが、独裁体制を築くってこういうことなのだろう。中国や北朝鮮も色々とヤバイのだろうな

ナワリヌイというタイトル通りナワリヌイにフォーカスした作品ではあるが、ナワリヌイのこれまでの生き様を追っていく感じではなく、毒殺未遂事件を中心にここ数年のナワリヌイを追った映画なので、彼が語る政治理念がどのように構築されていったのか等、人物を深く掘り下げるような内容ではない

本作はあくまで映画なのでフォーカスするのは悪くないが、上手く切り取り過ぎていて恰もこういう設定のゲームをプレーしているように感じるのも事実。それを上手く映画化しているとは受け取らず、胡散臭さを感じる人もいると思う

特にモスクワ4からの話はホンマかいなって感じだが、ぶっちゃけ日本も大差ないんじゃないの。永遠の与党の国だから皆そちらを向いていて、外部を全く意識していない。政府機関に限らず、外に意識が向かない会社も"脆弱性"は変わらないと思う

CNNは最近は鳴かず飛ばずの印象だが、ジャーナリズムの気骨を見た気がする。独裁体制だと適当な言い訳で許されるから、こういう"茶番"が平然と行える。安易にあの発言はなかったとか言い出す政治家ばかりの国も他人事ではないと思った方がいい

 

・ボイリング・ポイント/沸騰 2.8
クリスマス前のロンドンの高級レストランの一夜をワンカットで描いた作品。ワンカットと言えば最近だと「1917 命をかけた伝令」が思い出されるが、あれは疑似ワンカットなのに対して、こちらは本当にワンカットらしい

次から次に起こるトラブルはクリスマス前のレストランっぽいし、ワンカット向きの脚本だと思う。ただ、オチは寒い。このオチにするならもっと人物を掘り下げる必要があると思うが、テンポを優先したのだろう。ワンカットなら楽しめるが、多分普通の撮影だと面白くないだろう

映像的にはてんてこ舞いな様子は伝わってくるが、如何せん画面が暗い。西洋では間接照明が主流だし高級レストランなら尚更だが、暗い画面で動くのを追うのは目が疲れるし、料理もあまり美味しそうには見えないし。まあ、イギリス料理…

上映時間は短めでテンポがいいので気楽に見る分には悪くないかな。ただ、人物も出来事も胸糞のオンパレードだし、上述通りストーリー自体はあまり面白くないのでワンカット撮影を楽しむ作品だろう

2022年に視聴した映画短評(その15)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・グリーン・ナイト 0.5
指輪物語で有名なJ・R・R・トールキンが現代英語訳したことで知られるサー・ガウェインと緑の騎士をベースにしたダークファンタジー。圧倒的映像美?暗くてよく分からんのだが

全体的に画面が暗い、テンポが悪く抑揚に乏しいストーリー。まあ、こういう世界観なんだろうな。良くも悪くも中世ヨーロッパの話って感じ。ワールドカップ視聴による寝不足を解消するにはいいかも。最近、倍速再生の是非が話題になるけど、2倍速でお願いしますって言いたくなる

一応、サー・ガウェインと緑の騎士のあらすじはチェックしてから視聴したので、何しているのか分からんってことはなかったが、そのレベルの人が視聴するような作品ではないのだろう。原作や中世ヨーロッパの話が好きな人、静かに進行する作品が好きじゃないとついていけないだろう

 

ギレルモ・デル・トロピノッキオ 3.9
去年から続くピノキオリメイク3部作(?)の最後の作品。タイトル通り、ギレルモ・デル・トロ監督のストップモーションアニメ。ユアン・マクレガー、デビッド・ブラッドリー等、声優は豪華キャスト

本作はネトフリで配信しているようにディズニー制作ではないが、あらすじは1940年のアニメ版に準拠している感じ。ミュージカル仕立てだしリスペクトを感じる。但し、使用されるのは星に願いを等のアニメ版の曲ではなくオリジナル楽曲

舞台はアニメ版とは異なり、第一次世界大戦下のイタリア。それに伴い改変も多いが、特にカルロを失くして失意の底にあるゼペットを描いているのはいい。ピノキオはかなり有名な話だし見所を中心に描けばいいという考えもあろうが、ストーリーの説得力は違ってくると思う

最近公開されたディズニーの実写版は冒険譚メインで"軽い"のに対して、こちらは人間ドラマをしっかりと描く感じで重厚感がある。ピノキオは元々児童文学の割に風刺色が強いが、本作はディズニー版よりその傾向が強い

特にムッソリーニをコケにする所は中々強烈で子供も見る作品でどうなのと思うが、中身が空っぽで偉ぶっているだけの権力者に抗う姿勢は全編に見られギレルモらしいと思う。ブラック上等、権力者に阿るのが当たり前と思っている連中に支配されている国には馴染まないと思うけど

ストーリー以上に素晴らしいと思うのが映像。本作にはマーク・グスタフソンが共同監督で関わっているが、いい意味でストップモーションアニメとは思えず実はCGなんじゃないのと思ってしまう。顔の表面はシリコン製らしく、質感が本物の顔に近くて表情豊かに感じる

正直もっと毒があっても良かったが、子供も見る作品であることを考慮した結果だろう。独り善がりのオナニー大作よりは遥かにマシ。ギレルモはナイトメア・アリーがゴミだったので期待していなかったが、失地回復って感じ。リメイクの域を超えていると思うし、是非ご覧あれ

 

・ケイコ 目を澄ませて 3.4
今をときめく岸井ゆきのの主演作。実際にプロボクサーだった小笠原恵子の自伝「負けないで!」をベースにした作品で、岸井は耳が聞こえないボクサー、小河ケイコ役を演じる

レビューの前に基礎知識だが、障碍者の大会というとパラリンピックが思い浮かぶが、聴覚障害者の大会はデフリンピックデフリンピックの種目に柔道、空手、テコンドー、レスリングはあるが、ボクシングはないのでデフリンピックを目指すという選択肢はない

次にボクシングの階級について。他の格闘技とは異なり、ボクシングの階級はほぼ男女共通。女子にはミニマム級(女子ではミニフライ級)の下にアトム級が存在する代わりにクルーザー級が存在せず、ライトヘビー級の次はヘビー級になる

ミニマム級の制限体重が105ポンド(47.62kg)以下なのに対して、アトム級は102ポンド(46.26kg)以下。ボクサーと言えば過酷なダイエットのイメージがあるが、岸井ゆきののサイズならダイエットは必要ないだろう

本作の全体的な印象だが、とても斬新に思えた。まるでサイレントムービーを観ているかのよう。ケイコは喋らないし、余計な劇伴はないし。淡々と進む作品なのでメリハリを付けるために「○○○世」とかやりたくなるが、それをやらないのがいい

淡々と進むと書いたようにストーリーに大きな山場がある訳では無い。ケイコの心の葛藤をどう表現するかに全振りした作品と言える。字幕や(他人の)台詞に頼らないのは勿論、日記にもできるだけ触れずに表現したいと考えた結果だろう。まあ、最後は読むんだが、朗読を仙道敦子にやらせたのは良かった

ケイコを演じた岸井ゆきのは勿論良かったが、会長役の三浦友和が印象に残った。老いてもボクシングが好きなのが伝わってくる。会長だけでなくジムもかなり年季が入っているが、こういうジムの方が多いわな。大橋ジムみたいに立派なジムは少ないだろう

難点はボクシングのシーンが少ない。ケイコの心情を表現するのに重きをおいた結果ではあるけど、ボクシング映画としては物足りない。あと、ケイコの心境が分かりにくくモヤモヤ感がある。ラストシーンは吹っ切れたんだと思うが、日記を読むなり字幕で出すなりして決意を表した方がスッキリしたと思う

観客はおっさん多数だったが、寧ろボクシングに入れ込んでない女性の方が心に残る作品になると思う

 

・マッドゴッド 0.8
スター・ウォーズロボコップ等の特殊効果を手掛けてきたフィル・ティペットが監督を務めたダークファンタジーらしいが…。ロボコップ2(1990)の撮影後にアイデアを思い出し制作を開始したものの、プロジェクトの長期中断を挟んで完成は30年後の2021年になった

30年もかけたんだから、さぞかしと思いきや…。ストーリーは意味不明。いくつかのイメージを具現化するのが目的でストーリーなんて考えてなかったのだろう。冒頭で聖書の一節に触れる程度で一切の説明無し。解説を見ないと、キャラや舞台の設定が理解できない

肝心の映像だが、見所なしではないものの…って感じ。明らかに合成で、ストップモーションアニメを極めたとは言い難い上に無駄にグロいシーンが多い。ホラーが苦手な人にはきついかも

ディストピアストップモーションアニメ、…。昨年公開されたJUNK HEADを思い出すが、ぶっちゃけ足下にも及ばない作品。この手の作品にストーリーなんていらんだろって人ならいいかも知れないが、本作を見る位ならJUNK HEADを視聴することをお勧めする

 

・MEN 同じ顔の男たち 1.5
解説によると「エクス・マキナ」のアレックス・ガーランドが監督・脚本を手がけ、「ロスト・ドーター」のジェシー・バックリー主演で描くサスペンススリラーらしい

らしいと書いたのは、駄作あるあるとも言えるジャンル不明作品だから。前半はサスペンス、後半はホラーって感じか。中途半端と言うか、ホラーに逃げたと言うべきなのか

ただ、サスペンスとしてよりはホラーとしての方がまだ評価できる。R15+なだけあって結構グロいし、来る~って恐怖があるからね。全てをぶん投げて終わる作品なのでサスペンスとしては1mmも評価できないが、ホラーであっても少しは真相に迫って欲しいものだが

初っ端から林檎を禁断の果実と言ってみたり、かなりキリスト教をサジェストしている。それとアニミズム的な古い価値観が合わさったものが根底にある感じなのかね。面白いと思った作品なら考察する気にもなるが、この程度の作品じゃねえ…

「ミッドサマー」が当たったから、それっぽく作れば当たるんじゃねって感じで作ったんだろうな。「ミッドサマー」よりいいって意見も散見されるが、お勧めはしかねる作品