2021年に視聴した映画短評(その2)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

ディエゴ・マラドーナ 二つの顔 4.0
正直、ドキュメンタリー映画としてのデキはまあまあ。ナポリ在籍中にフォーカスしたのは良いが、その割には掘り下げが不十分でマラドーナを知らないとどこがピークなのか分からないので盛り上がりに欠ける作品という印象になるだろう

ただ、分かっている人目線だと感動モノで、1980年代後半なので大昔と言うほどではないがオンオフ問わずよくこれだけの映像が残っていたなと。この年代だとまだJリーグも発足していないし、セリエAは勿論ワールドカップも今程簡単に観られる時代ではなかった訳で

普通、こういった伝記映画だと証言する人物へのインタビュー映像が占める割合が高いが、この作品はインタビュー音声が流れている間もマラドーナの映像が出っぱなしなのは凄くいい。マラドーナが観たくてこの映画を鑑賞しているのだから

あと、この時代(というか今もと言うべきか)のイタリアの病巣であるマフィアとの癒着、南北格差については頭に入れておいた方がいい。昔はマフィアの親玉が貴賓席に座っていたこともあったし、作中で出てくる侮蔑的な横断幕(今なら撤去&退場処分だろう)も闇の深さを感じさせる

このような内容なのでライトなサポーターとかではなく、年季の入ったサッカー好きのおじさんおばさんが観るべき作品だろう。去年上映されたフォード vs フェラーリは寧ろF1なんて知らない・興味がない人の方が楽しめる映画だと思うが、本作は逆。サッカーに興味がない人の視聴はお勧めできない

 

・聖なる犯罪者 2.8
テンポは悪くないし話がつまらないということは無いが、詰め込みすぎてぼやっとした作品になってしまっている。主人公に限らず、どんな人物も二面性を持つことを伝えたいのか。そういう描写が多いし。まあ、各自考えて下さい的なエヴァみたいな作品ってことか

主人公のダニエルを演じたバルトシュ・ビィエレニアの眼力の強さが印象的だった

 

・ノンストップ 4.5
プロット自体はベタであるが、味付けは十分にされている。ノンストップのタイトル通り、終盤にかけて怒涛の展開でオチまで一気に駆け抜ける。オチもよく考えられていると思う

ただ、同じアクションコメディであるエクストリーム・ジョブと比べるとこちらはストーリー寄り。上述したようにストーリーは良くできていると思うが、色々と粗があるのも事実。アクションコメディで押しきれればいいが、ストーリーを意識させようとすると粗も目立ってしまう

しかし、北朝鮮のテロリストとかナッツリターンとか攻めてるなあと思いつつ、嫁と姑の不仲とか偉ぶるくせに役に立たない国会議員とかどこぞの国と変わらないなって感じ

上映している映画館が少ないのが難点だが、頭空っぽにして笑えるコメディ作品なのでお勧めしたい。上述したエクストリーム・ジョブといい韓国のアクションコメディの質の高さを感じる

 

・藁にもすがる獣たち 4.0
大金を巡る3人(と言うより3ルート)の群像劇。序盤は退屈だが、大金の出処が分かってからは話が加速して大金の行方も二転三転。時系列をずらして見せること自体は斬新と言うほどのことではないが見事に纏めている。まあ、この先どうなるかは気になるが

章立てにそれ程意味がないが、章のタイトルには意味がある。何気なく流れているニュースもかなり露骨な伏線になっている。細かいことまで気を配っているのが分かる作り

難点を挙げていくと、各ルートの話が浅いことに関しては、あくまで大枠があって各ルートの話にじっくり時間を割くのは無理だし、人物の過去が本題にも関わるので致し方ないか

後は"獣"感に欠けること。やっていることは十分鬼畜だが、ビジュアル的にねえ…。韓国映画なのでエロは無理だろうが暴力シーンもソフトだし。暴力とセックスは正に動物的本能と言えるのでそれが足りないのは物足りなさを感じる。まあ、そういうシーンが苦手な人にはいいだろうが

この映画、原作は曽根圭介だが、これを"韓国ノワール"に仕上げた監督は見事。これが長編デビュー作とは思えない。いつまで経っても駄作ばっかりの五浪とかいうボンボンとはえらい違いだ

 

・ガンズ・アキンボ 3.0
海外では去年公開された映画だが、日本でやっと公開されたダニエル・ラドクリフ主演のアクションコメディ。ストーリーはツッコミ所が多いが、おバカ映画としては許容範囲か

この映画で一番の見所はサマラ・ウィービング演じるニックス。容姿もインパクトがあるが、ハイテンションでぶっ放す様は最高。ただ、設定上ゲーム感覚だし、コメディ色もあって緊迫感に欠けるのも事実

終盤もまさかのお涙頂戴にならなかったのはいいが、盛り上がりに欠けるし意外性もない。二丁拳銃(アキンボ)じゃなくて、まさかの三丁拳銃だったら面白かったけど、アレは普通で並以下のサイズって分かっちゃっているからねえ

個人的に嫌いではないが、映画のデキは正直普通。サービスデーならアリか。それと下ネタが多い、殺し合いをネットで視聴するというあからさまなインモラルなので、おバカ映画でもそういうのは許せない人は止めた方がいい

しかし、ダニエル・ラドクリフは最近はB級映画ばっかりだなあ。ハリー・ポッターで富と名声は得たから好きなことをやるって感じか。世間に媚びるようなアクセス乞食にならずに自分の作りたい動画を貫くYoutuberみたいでかっこいいと言うか羨ましく思える