2021年に視聴した映画短評(その12)
*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0
・映画大好きポンポさん 2.1
レビュー評価の高い作品だが個人的には全く刺さらず。客観的レビューなんて不可能だと思うが、レビューを書いている人は映画好きが多い訳で映画作りの楽しさに触れる作品は高評価になりがちなのだろう
テンポは悪くないのでそこそこ楽しめる。褒められる所はそんなところか。寧ろテンポが良すぎてダイジェスト感がある。それから原作は知らないが、この作品の主役はポンポさんじゃないの。これでは「映画大好きジーンくん」だと思うのだが
本作には映画哲学的なものが出てくるが、この作品がその哲学に則ってない矛盾。その顕著な例が銀行絡みの事柄。ただでさえ発散しているのにオリキャラ追加してまで入れるべきことか。こんなんじゃニャカデミー賞は無理でしょ
それと触れなければいけないのが似非声優問題。主役のジーンの声を当てている清水尋也は及第点だと思うが、ナタリー役の大谷凜香は酷い。まあ、新人女優役なのが救いだが。この作品にパンダを使ったからと言って動員が伸びるとも思えんし、何故このキャスティングなのか理解に苦しむ
・竜とそばかすの姫 0.0
"駄作メーカー"細田守の作品。勿論、スルーのつもりであったが何故か視聴する羽目に
相変わらず作画だけは評価できる。高知県いの町がモデルと思われる田舎の風景は美しい。田舎とネット社会という構図は細田監督の旧作「サマーウォーズ」を彷彿とさせる。褒めるのはここで終了
で、肝心のストーリーだが、脚本は三流以下。要素の詰め込み過ぎ、フォーカスが合っていないはありがちだが、それに加えて登場人物が多すぎ、行動原理が理解不能故にストーリー展開も意味不明。作品毎に脚本力が落ちていくのは稀有な才能と言わざるを得ない
細田作品なので当然のように似非声優が大量起用されているが、主役のすず(ベル)を演じた中村佳穂だけでなく全体的に御粗末。まあ、彼女達の演技で台無しではなく、脚本がオワコンだからねえ…
他の人のレビューに「良くも悪くも細田作品」とあったが本当その通り。最近の細田作品に満足している人は本作にも満足するだろうが、失望した人が「本作では…」と思って視聴するのは全くの無駄。更に失望することになるだろう
・サイダーのように言葉が湧き上がる 1.5
絵を見ただけだとハートカクテルのタッチでサマーウォーズをやりたいのかと思った。所謂ボーイミーツガールもので俳句をコンセプトにひと夏の恋を描いている。因みにタイトルも俳句になっている(サイダーは夏の季語)
無口なキャラが想いを文章に認める恋物語を描いたアニメとして川柳少女が思い浮かんだが、川柳少女はラブコメなのに対してこちらはコメディ色は薄い
この作品を一言で言えば内容は無いよう。軽いノリでラストシーンをお楽しみ下さいって所は「きみの声をとどけたい」に近い感じか。きみの声~も言霊がテーマだったと思うが、恋愛要素はないしストーリーは全然違うが
ただ、軽めのストーリーには目を瞑るにしても、前半のテンポが悪すぎるし、こういうベタな結末にするならクライマックス前のストーリーの溜めが必要だと思うのだが。まあ、きみの声~も淡白だったし焦らしは不要って人が多いのかね。前戯のない○○○みたいなものだと思うが
この作品はどの層をターゲットにしているのだろう。ハートカクテル、俳句、レコード等おじさん、おばさんをターゲットにしているとしか思えないが、それならもっとストーリーを作り込まないと。一方。軽い恋愛、パンダ(似非声優)登用は若者を狙っていると思われるし
某青春アニメがヒットしてからあの作品に寄せろと口出しされるそうで今作もそうなのか。中途半端に寄せて幅広い層をターゲットにするって失敗確実だが。某鬼狩りも元々低年齢層をターゲットにしている訳じゃないから残虐シーンもあるしね。幅広い層に受けるのは結果でしかない
まあ、市川染五郎の演技も予告編ほど酷くないし、ハートカクテル風の作画は懐かしさがあるが、舞台が(多分)群馬のショッピングモールなのはなあ…。この作風なら舞台は海沿いが良かった
・アイの歌声を聴かせて 3.8
AIと人間の共生というSF的なテーマであるがSF要素は薄い。ミュージカル風ドタバタ青春群像劇と言ったところか。歌は唐突感もあるが、シオンのキャラに合っていてストーリーにも噛み合っている
シオンの突拍子もない行動は笑えるしテンポよく進んでいくが、終盤は戴けない。大人が絡んでこれはないでしょ。まあ、狙いは理解できるし伏線も回収しているが、要素過多でもあるし会社のゴタゴタは必要なかったと思う
本作で評価できるのは、まず完全無欠のAIを描いていないこと。AIは飽くまでプログラム通り動いているだけ。本作で描かれているようなAIと人間の絡みとなると一見イレギュラーに見えるような行動もしなければいけない。人間は良くも悪くもいい加減だが、それはAIにとっては難しいことだ
それから演技面。この作品も御多分に漏れず似非声優を起用しているが、彼らにもきっちり演技を要求しているのが伝わってくる。個人的にはきちんと演技さえしてくれれば声優には拘らないので、今後の作品はこのレベルをデフォルトにして貰いたい
特に土屋太鳳演じるシオンはAI的な部分と人間的な部分が同居するキャラで難しい演技を要求されたと思うが、作品の魅力を引き出していて、正に土屋太鳳を堪能する作品になっている
この作品が無茶苦茶刺さる人は少ないかなと思うが、SF要素が薄い分間口は広いので是非多くの人に映画館の音響で観てほしい作品
・映画 えんとつ町のプペル 2.0
2020年の作品だが、年末公開なので2021年扱いで
本作の良い所は何と言っても作画、「海獣の子供」等を担当したSTUDIO4℃が制作した画は美しく、絵本の世界観に引き込んでくれる
ストーリーについてだが、言いたいことがきちんと伝わるのはいいと思う。ただ、本作に関しては主張が前面に出過ぎで主張の為のストーリーになっているきらいがある。演説じゃないんだし、ストーリーに主張を乗せる位のバランスじゃないと
他に宜しくない点はまず序盤が浮いている点。本作に限らないが、ストーリーが実質的に始まるまでに時間がかかり過ぎる作品が目立つ。100分の作品にする為に大幅に水増ししたようだが、もう少し上手くやれなかったかねえ
後、この作品は誰をターゲットにしているのか。子供向けなのだろうが、異端審問官とか中央銀行とか子供は分らんでしょ。大人向けの要素を入れるにしても子供にも分かるように咀嚼する必要があると思う
他には中央銀行の件からの結末は正直?と思ったし、プペルの正体はそれとなく仄めかす程度で良かったかも
色々書いてみたが、初監督・脚本と考えれば悪くなく、ぶっちゃけ普通の映画って感じ。新海や細田だって脚本力があるとは思わないし。ただ、新海や細田にも言えることだが、もし次回作を考えているなら脚本は他の人に任せるべきだろう