2020年に映画館で視聴した映画短評(その5)

*今年観た映画なので、去年の作品も含みます。5点満点で最低点は0

 

・TENET テネット 3.7
ノーランらしい作り込まれたシナリオは十分面白いのだが、正直SFとしてはガバガバだし、ノーランの他作品に比べるとあっさりしすぎている感がある。まあ、シナリオの仕組み上しょうがないとは思うけど。インセプションのように作ったら4時間以上の映画になりかねないし

他にはアクションシーンが物足りない。空港のあのシーンなんかは金かけてるなと思うし迫力があるが、敵と戦うシーンが全体的にイマイチ。カメラワークが悪いんだと思うが、もし本気で007シリーズの監督をやりたいのならもっと勉強しないといけないだろう

この作品難解だと言われるが、個人的にはそう思わないけどなあ…。ぼやっとした作品ではないし、寧ろノーランの作品にしてはシンプルだと思うが。普段から観る作品が違うってことなんだろう

 

・宇宙でいちばんあかるい屋根 3.7
桃井かおりのお婆ちゃん役は嵌っていたと思うが、全体的には地味で手堅く纏まった作品という印象。ファンタジー作品なのでもう少し派手な部分があった方が良かった。新聞記者みたいに最後ダラダラ感はないし、ストーリーには集中できるが

地味なのは実写映画ということもあると思うので、この作品をアニメで作ったらかなり違った作品になるかも

 

・ミッドナイトスワン 5.0
この作品に5点をつけなければ5点をつけることはないだろうと思わせる作品。シーンが全体的にぶつ切りで最初は違和感があるが、凪沙や一果の不器用でぶっきらぼうな所を表現していると思うし、間を補完することでより作品に入り込む効果があると思う

難点と言えば、中盤までの展開に対して終盤はいただけない。ラストシーンは良いとして、手術の顛末はどうかと思うし、海のシーンも長すぎる。時間が足りなかったのかもっとブラッシュアップして欲しかった所

それから、凪沙が汚すぎてトランスジェンダーのイメージが悪くなるという意見も散見されるが本当にそうだろうか。世の中、美男美女だけじゃないように、芸能人のようなどう見ても女性にしか見えない人だけがトランスジェンダーではないだろう

悪い部分は徹底的に排除して当たり障りなく作ることが配慮だと勘違いしている人が多すぎる。それは配慮じゃなくて事勿れ主義だ。ただ、今の日本はそんな作品、そんな番組ばっかりなのだが

キャストについてだが、草彅剛の演技は流石。演技力には元々定評があるし、この作品で"勲章”が取れなかったとしても草彅の代表作と言える作品になる筈。服部樹咲についてはこの作品には合っていたと思うが、正直演技はまだまだだと思う。ただ、佇まいは一級品で抜擢されたのは理解できる

個人的に良かったと思うのは一果の同級生、りん役の上野鈴華。一果とは対照的な役どころだが、凛として存在感があった。彼女も服部同様新人のようだが、これからいいキャリアを積んで欲しい

 

・薬の神じゃない! 3.9
率直に言って物足りない所はあるが、中国で国家批判はできないだろうし仕方ないか。ただ、警察内部に製薬会社の人間がいるのは十分とんでもない話だが。前半と後半の落差もいいし、実在の話をベースに上手くエンタメとして仕上げたと思う

でも、タイトルは何とかならなかったか。中文タイトルが我不是薬神なので間違いではないが、この映画を端的に表しているとは言い難い。英文タイトルのDying to Surviveの方を活かすべきだった

この話は中国の話だが、薬の承認プロセスが不明瞭なのは日本も一緒。決して他人事ではないと思わされる

 

・朝が来る 3.3
河瀬監督の作品=マニア向けという印象だが、この作品は広く受け入れられそう。抑えた演技で淡々と進むストーリーは宛らドキュメンタリーのようで問題の深さを浮き彫りにする。これは河瀬監督の良さが出たと思う

反面、もう一つ引き込まれない作品なのも事実。その大きな原因は両側から描こうとするからで、夫婦側の描写は減らした方が良かった。特に冒頭の事件とかストーリーに全然関係ないし。サスペンス作品としては必要なのだろうが、この作品はサスペンス色は薄く主題がぼやけるだけの逆効果になっている

それから、ひかり役の蒔田彩珠が良かった。是枝作品や志乃ちゃん〜等に出演していて順調にキャリアを積んでいる印象。是枝監督や河瀬監督のような有名監督に起用されるのは演技力や存在感を評価されてだろう。今後の活躍にも期待したい